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【コラム】その素敵な器に「汚物」が入っていたとしたら? ー中国

Global News Asia / 2022年3月30日 6時0分

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 2022年春。近年、欧米で、中国などの通販や、SNSを通してのオークションで大人気を誇るホーロー製の器がある。新品ではなく、アンティークであればあるほど、欲しがる人が増える。見た目がいい。柄がキレイ。おしゃれ。小さなサイズは、スパイスの保存にいいだろうし、大きいものは果物などを入れてテーブルに置くと、バエる。この器のもともとの使用法はなんだったのだろうか。それを知っても、欧米人は使えるのだろうか。

 昭和60年に、日本の理容師法の改正があった。それまでは、理容室(床屋)に常設必須だった「痰ツボ」を置かなくてもいいことになった。同じころか平成初期に、駅構内の灰皿の横や、柱の下あたりに置かれていた「痰ツボ」も見かけなくなった。

 今はエチケットをわきまえているシニアが多いが、中年のオヤジが「ガー」と喉から音を出し、ペッと唾(痰)を道に吐き出す光景にぶち当たったことはないだろうか。筆者は学生の頃、八百屋のおじいさんの自転車の少し後ろを伴走していて、顔に痰が命中したことがある。突然のことに、それを拭うこともできず、涙が流れてきたことをはっきり覚えている。

 さて。なぜ「痰ツボ」が世の中で必要とされていたのか。それは、不治の病と言われた結核菌を含め痰や唾を媒介してあらゆるばい菌やウイルスが飛び散らないようにするためだ。床屋にあった小さめの痰ツボは、個別の客対応のため。駅にある大き目の痰ツボは不特定多数の利用客のため。理容師も駅員も、毎日(あるいは、その日に何度も)、痰ツボから汚物を処理し、消毒して設置した。その処理の段階でうつることもあるので、結核検診は保健所で行うことが決まっていた。日本の痰ツボは、中国と同じホーロー製だが、衛生的観点から、白い、病院にあってもおかしくない器だった。

 中国人は、昔から、あちらこちらおかまいなく、痰を吐く。乾燥している空気と大気汚染のためだとも言われる。中華料理が脂っぽいので常時呼吸器に粘液がたまり、痰ができやすいからとも言う。

 中国人だって、痰ツボの必要性は感じていた。そして、近年では国際人としての意識が強くなり、2007年の北京夏季オリンピックを境に、公共の場で痰を吐いた場合日本円にして900円の罰金がとられることになった。しかし、900円払えばいいんだろうしかり、見えないところなら大丈夫な、国だ。

 昔とはどれくらい昔かというと、紀元前から。さすが中国4000年。ホーローだけでなく、青銅や宝石の原石、水晶や漆塗り、陶磁器、様々な材質の「痰ツボ」が作られた。つまり、21世紀に輸出するだけのモノは揃っているし、そのデザイン性の高さは、やはり中国4000年なのだ。

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