【フィリピン】飢餓ゼロプロジェクトについての考察3・ベーシックインカムとの違い
Global News Asia / 2023年7月3日 7時0分
マルコス大統領が就任2年目に推し進める飢餓ゼロプロジェクトは、段階的に適応範囲を拡大して2027年までに運用システム構築を完成させるというものだ。最終的には貧困層を大幅に減らすことを目標としている。世界中で格差問題に対して、ベーシックインカム制度が議論されているが、今回はその違いについて考察してみる。
近年日本でも格差問題や貧困対策として、ベーシックインカム制度についての議論が盛んに取り上げられている。今回の飢餓ゼロプロジェクトとは何が違うのだろうか。ベーシックインカム制度は、広く全国民に対して一律に一定額を支給するというものだ。基本的に、そこでは職種や学歴などは一切考慮されていないし、毎月一定金額が国から支給される。その使い道に制限はない。そのため、まずはこれを生活費のベースとして、仕事で得られる収入が加わることで、最終的には経済が回るだろうというものだ。
あくまでも全体を均一に動かすためのシステムといったベーシックインカムに対して、飢餓ゼロプロジェクトでは、まず現金ではなく、デジタルクーポンであり、その用途も食糧や生活必需品に限定される。こうすることで各家庭や個人の教育レベルによって起こる問題を切り離すことができる。
この飢餓ゼロプロジェクトで行われるデジテルクーポンなどは特に目新しい物ではない。今やフィリピンでも、わたしの住むタイの田舎町でも、キャッシュレス決済は小さな雑貨屋でさえも利用できる当たり前のことになっている。そして、データ集積により家庭ごとにアドバイスしていく。これもこのプロジェクトの大きな特徴であり、最も大切なことだ。与えるだけ、配るだけの対策は、全世界で昔から行われて来たが、いずれも問題解決どころか、一時しのぎにもなっていないのが現実。技術革新や人材の確保、インフラ整備などの環境が揃ったからこそ、双方向で市民自らも参加する形で行われることに成功への大きな期待が寄せられる。
また、最後はコンサルティングという、やはり人の繋がりを用いて貧困脱却という最終目標に向けて進んでいく段階が取られている。この人との繋がりという部分において、フィリピンはまだまだ深く太いと繋がりを残している。家族、兄弟姉妹、親類縁者と周りの人々。そこには悪い面もあるが、いい面もあるはずだ。残念ながら日本では、悪い面ばかりに目を取られて、人との繋がりが非常に希薄になってしまっている今の日本で同じことをやろうとしたら、この繋がりを再構築するという厄介なことをかなりの時間をかけて取り組まなくてはいけないだろう。
こう言った意味では、フィリピンがこのプロジェクトに至るまでに、相応の下準備とも言える様々ん政策事業を進めて来たことも見逃してはいけない。次回は、その点について考察してみる。
【執筆 : そむちゃい吉田】
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