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世界で増加する国防費…ロシアが変えた「ESG」の常識

幻冬舎ゴールドオンライン / 2022年7月6日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素に配慮した企業を重視するESG投資において、資源エネルギーや防衛は、投資が敬遠されていた産業です。ところが、ロシアのウクライナ侵攻によってがらりと変わり、いまや注目の的になっています。これからのESG投資で、この2つの産業をどのように捉えるべきなのでしょうか? アライアンス・バーンスタインの責任投資推進室長、臼井はるな氏が考察します。 

株価上昇が目立つエネルギーや防衛

世界の株式市場で不安定な値動きが続くなか、勢いづいているのが「資源エネルギー」と「防衛」の2つの業界です。実際、2022年の年初から3月25日までに米国のS&P500指数を構成するエネルギー・セクターは42.3%、航空宇宙・防衛セクターは13.5%、それぞれ上昇しています。

サステナビリティや環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点でこれまで投資家が敬遠してきた2つの業界は、いまや世界の新たな現実に対処するための重要なプレーヤーだと考えられるようになってきたのです。

そこで今回、それぞれの業界について注目点を整理します。

エネルギー業界が注目されている背景

エネルギー業界が注目されている背景として、エネルギーが安全保障にとって重要性を増していることがあげられます。

米国ではガソリン価格が急騰し、ロシアからの供給に頼っていた欧州の天然ガス価格も跳ね上がりました。それぞれの国や地域がグリーンエネルギーへの移行を進めるなかでも、石油やガスといった従来型のエネルギー源への十分なアクセスが必要であることが痛みを伴って明らかになったわけです。

また、脱炭素化の流れが化石燃料生産への投資を抑制し、エネルギー価格を押し上げる要因になったともいわれています。

そもそもロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切ったのは、それ以前に石油やガスの価格が高騰していたことで、ロシアが経済的に西側諸国よりも優位な立場にあったことが一因だと指摘する政治評論家もいます。

国防予算を倍増させるドイツ

防衛産業がこれまで悪者扱いされた理由は容易に理解できます。端的にいえば、人間を殺す製品を作っていて、それが悪者に売られることが多いからです。

国防支出は世界的にも低下傾向が続いてきました。世界銀行によると、各国の国防支出の対国内総生産(GDP)比率は過去40年間で最低に近い水準にあり、米国では3.7%、世界全体では2.4%です。

それが、ロシアのプーチン大統領によって、平和が当たり前ではない時代に逆戻りさせられたのです。多くの政府は、ソフトパワーには限界があり、私たちの価値観や社会を守るためには軍事力が必要だという思いを強めています。

象徴的な動きがドイツです。最近、ドイツはロッキード・マーチンにF-35戦闘機35機を発注しましたが、これはほんの始まりに過ぎません。

第二次世界大戦後、国防支出を厳しく制限してきたドイツにとって、2022年の国防予算を1,000億ユーロに倍増させることは極めて大きな変化です。防衛産業に対する世論がいかに変化しているかを示しています。

これまでの話から、お伝えしたいESG投資のポイントは3つあります。

1.ESGの課題は絶えず変化する

私たちが生きる世界の変化に応じて、ESGの重要課題もまた変容します。複雑で微妙なESGの特性を投資に反映するためにも、環境の変化に応じて評価手法を見直していくことが重要です。

2.「S」を忘れてはいけない

ESGでは「E」の環境問題が重視されがちですが、「S」の社会的な問題も重要であることを再認識すべきでしょう。エネルギー価格の高騰は消費者にとっては増税のようなもので、特に低所得世帯に大きな打撃を与えかねません。民主主義を守ることは、自由を尊ぶすべての社会にとって不可欠です。

3.特定業種の排除には欠点がある

特定の業種や産業を投資対象から排除すると、投資家と企業との対話の機会が減り、責任あるビジネス慣行の促進が阻害されかねません。投資家はレッテルを貼って単純化しすぎないよう注意する必要があります。

責任ある投資行動こそが要諦に

こうした視点に立った際、2つの産業へのESG投資をどのように捉えるべきなのでしょうか。

多くのエネルギー企業がすでに、ESGの観点で持続ある成長を遂げようとしています。長期的な視点に立ってエネルギー業界に投資するのであれば、強力なビジネスを持ち、社会課題の解決を目指すエネルギー企業を選ぶべきでしょう。

たとえば、再生可能エネルギーに投資しているエネルギー会社や電力会社は、石油やガスの短期的な需要に加え、脱炭素社会への移行期にも需要拡大が見込めます。仮にいまの危機が収束して原油価格が下落した場合にも好業績を維持することができるような、利益率の高い企業がその候補となります。

また、防衛に関連する企業は景気循環の影響を受けにくい国防支出の性格から、景気後退期にも底堅い業績となりやすく、そのため株価は市場全体が下降する局面でも比較的持ちこたえる傾向があります。

もちろん投資家は、企業がクラスター爆弾や化学・生物兵器といった論議を呼ぶ兵器を製造していないことを確認する必要があります。歴史的に汚職や贈賄が行われてきた業界であるため、企業倫理にも焦点を当てて評価すべきです。

ロシアによるウクライナ侵略がもたらす変化に世界が適応していく過程で、エネルギーと防衛に関連した企業の勢いは持続する可能性があります。投資家の責任ある投資行動こそ、ESG投資を形骸化させない要諦だといえます。

臼井 はるな

アライアンス・バーンスタイン株式会社

運用戦略部

シニア・インベストメント・ストラテジスト 兼 責任投資推進室長

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