「シャープ」は世界に誇る技術をもちながら、なぜ台湾企業に売られることになったか【プロの投資家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月17日 8時15分
![「シャープ」は世界に誇る技術をもちながら、なぜ台湾企業に売られることになったか【プロの投資家が解説】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_53888_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
長期投資家の澤上篤人氏と、「四季報読破」の達人・渡部清二氏。プロの投資家として活躍する両者が対談形式で、日本企業と金融市場のパワーバランスについて解説します。
長年赤字も…「株主のハート」を“がっちり”掴んでいる石井食品
![](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/f/a/800m/img_fa5d11c27510b5d656f3054c0643687393793.jpg)
渡部 石井食品の株主総会がすごく面白かったんですよ。石井食品は長年赤字なんですよ。株価もずっと200円前後で上がらないんですよ。
ただ、株主総会に行ってみると、この会社はすごいなと感じました。株主総会は、船橋の市民ホールみたいなところで行われていまして、出席者が200人以上で、会場が縁日みたいになっているんです。つまり、自社の商品をズラリと並べて、売っていて、それを株主が買っているんです。
赤字なんですが、株主はそれに対して不満は少しも言わない。それよりも、自分の好きな商品が棚から消えているから、もう少し営業のほうに人を回して欲しいとか、そういう要望が質疑応答の際にされるんですよ。
これはどういうことかというと、「株主=石井食品の消費者」なんですよ。こういうことって最近の企業ではほとんどなくて、むしろ、会社は株主総会を敵視しているケースばかり。ところが石井食品は、「株主=消費者」で、すごく一体感があるんですよ。
総会の最後に、創業家の石井会長が「うちは安心安全な製品を売っている。だから国産にこだわっている。ところがおせちをつくったら、栗きんとんに雑菌が入っていた。これは実は海外から仕入れていて、日本で加工をしようと考えていた。そのため、急きょ、この栗きんとんを国産に切り替えたら赤字になってしまった」と、赤字になった理由を説明したんですよ。
その発言のあと、株主から赤字に対して文句が出るのではなく、むしろ、「やっぱり石井食品は素晴らしい」と大絶賛になった。驚きました。真に、「株主=消費者」で、株主が会社を応援しているんですね。
シャープは金融市場に殺された
渡部 なぜシャープが結局、台湾に売られることになったかというと、金融マーケットからある意味、嫌われたわけですよ。シャープは、悪いことは何もしていない。
野村證券の企業金融、つまり、インベストメント・バンキングの担当者に、「どうしてシャープのようないい会社を助けようとしないんだ」と私は言ったんです。野村もリスクを取って、公募とか、公募でなくともシャープを助けるためのいろいろな方法があった。
ところが担当者は、「だって儲からないじゃないですか」と答えたんです。今でも、その言葉はよく覚えています。「シャープは、プラズマクラスターとか、液晶とか、まさにメイドインジャパンの素晴らしい製品をつくっているのに、そんなすごい会社をお前の『儲からない』の一言で潰してしまうのか!」と思ったんですよ。
その結果、短期で儲からないからと金融市場に殺されてしまった。社会的に悪いことは何もしていないのに。あの時は、すごく嫌な気分になりました。
血の通った“優良企業”だった三洋電機
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澤上 三洋電機も同じだった。太陽光発電だけでなく、スーパーの売場にある冷凍のショーケースでも8割もマーケットを持っていたわけ。温情経営で、優しい、いい会社だったの。いろいろなことをやっていた。だけど、太陽電池もこれからという時に経営が苦しくなり、総額約3,000億円の優先株増資を実施。大和証券SMBC、ゴールドマン・サックス証券、三井住友銀行が引き受けた。
実は「さわかみ投信」(澤上氏が設立した独立系投資信託会社)も三洋電機を応援していた。だけど、ウチでの運用資産は2,400億円ほどしかなかった。あれほどのいい会社だし、「長期投資家が応援すればいいだろう。ウチなんかが応援しなきゃ」と思っていたが、力不足もあって、できなかった。ウチに運用資産が6,000億円、いや、1兆円あれば、いろいろお手伝いできた。
三洋電機はパナソニックの子会社になり、太陽電池事業が低迷
三洋電機の従業員は頑張っていた。面白い会社なんだよ。洗濯機は強いしね。その後、三洋電機を吸収したパナソニックはやり方が下手だから、太陽電池事業はジリ貧になってしまっている。俺はもともと松下にいたから、よけいに頭に来ているよ。
渡部 そういう意味では、エルピーダメモリだとかも、すごくもったいないと思っています。そういうもったいない会社が日本にはいっぱいありますね。
澤上 篤人
公益財団法人 お金をまわそう基金
代表理事
渡部 清二
複眼経済塾
代表取締役塾長
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