遠方に住む子供とは疎遠だし…「相続問題」を考えた投資家の苦悩【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月11日 16時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
アパートオーナーのなかには、「相続問題」に頭を悩ませている人が少なくありません。特に、子供が遠方に住んでおり、もう何年も会っていない……そのような状況で自身にもしものことがあったとき、トラブルは必至です。そこで、自身も不動産投資家としての顔を持つ山村暢彦弁護士が、アパートオーナーの「出口戦略」について解説します。
子どもが遠方へ…コミュニケーション不足が「相続トラブル」に
お子さんが進学を機に実家から離れ、そのまま就職・結婚……。このようなご家庭は非常に多くいらっしゃるでしょう。
こういった場合、どうしても実家の親御さんやご兄弟とのコミュニケーションが不足してしまい、相続が発生した際にトラブルに発展するケースは少なくありません。
お子さんの立場からすると「親がなにをやっていたかわからない」・「親の財産をどう扱っていいかわからない」という不安を、親御さんの立場からすると「先祖代々の土地は残したいが、それらをどのように分けていけば子どもたちが喜ぶのか・納得するのかわからない」といった不安を双方抱え、それが解消されないまま親が亡くなった場合、トラブルが生じてしまうのです。
では、筆者が実際に相談を受けたさまざまな事例から、相続トラブル解消の方法について考えていきましょう。
兄弟のうち「1人が遠方・1人が実家」でトラブル多発
遠方に住んでいる実家の相続では、さまざまなタイプのトラブルがあります。
1番多いご相談は、ご兄弟などがおり、「お子さんのうちの1人が実家の近くに住んでいるが、他のお子さんが遠方に住んでいる」というパターンです。
このパターンですと、「近くに住んでいるお子さんが、親御さんのお金を使い込んだ」というものや、「遠方に住んでいるお子さんが一切介護をしておらず、近隣に住んでいる兄弟から不公平だと思われている」といったトラブルがみられます。
どちらの立場からも、相手の立場のほうが「おかしい」という疑いをもってしまいトラブルに発展してしまうことが多いです。
親御さんのお金の使い込みに関する紛争は非常に多く、なかでも親御さんが認知症になるなどして「介護費用名目」で使い込んでしまうケースがよくみられます。使い込みが相続発生後に発覚し、加えてその大部分が時効消滅していたなどという大変な案件もありました。
他方で、介護に関する「不公平感」による争いも多くみられます。介護問題は無視できない大きな問題であり、仕事を辞めてまで介護していたり、介護疲れでお子さんのほうが精神疾患になってしまったりというようなケースもありました。
もっとも、こちらも法的には「寄与分」という制度の調整しかなく、ほとんど「介護の苦労」が金銭に反映されないというのが、現状の法律です。
また、2世帯住居などで「近くに住んでいる兄弟が親と一緒に暮らしているので安心だ」と考えていたら、親御さんとそのお子さん夫婦の仲が悪く、親御さんが虐待一歩手前のような扱いを受けているというケースも、稀にですがあります。
このような場合、ひどい扱いを受けていた親御さんとしては、遠方に住んでいるお子さんのほうに「全財産を譲る」と遺言書をのこすのですが、2世帯住居には親御さんと仲が悪かったお子さんが住み着いているため、その相続財産の清算に混迷を極めることも少なくありません。
また、「相続財産の内容がまったくわからない」という事例もありました。
親御さんが1人で住んでいたので、実家の土地建物があるのはわかっていたものの、通帳などの金融資産の所在がわからず。したがって、部屋に残っている資料から、預貯金を探していくしかありませんでした。
この事案で非常に厄介だったのは、親御さんが個人事業を営んでいたため、借金があるかもしれないという懸念点があったことです。さらに、お子さんが遠方に住んでおり、親御さんの経済状況がまったくわかりませんでした。
「海外居住」による相続トラブルも増えている
そのほか、近年は海外を生活の本拠としている方も多くなってきました。「海外居住なのに、日本の不動産の管理をしなければならない」といったトラブルや、「相続手続きのために帰国して、それがいつ終わるかわからないためにマンスリーマンションを借りなければならない」といった事案もありました。
このように、親御さんと遠方居住のお子さんとの相続にはさまざまな問題が生じてしまいます。
相続トラブル予防のカギは「遺言書」
トラブルを予防するためには、親御さん(被相続人)側で動いておく必要があります。トラブルが起こりづらい分割方法を想定し、「遺言書をのこしておくこと」が1番の対策といえます。
ただ、形式的な遺言書だけではトラブル防止にはつながらないこともあるため、最近は動画などで遺言書を作成した「想い」自体を残すなどという対策もあり、実際に行われています。
お子さん(相続人)側としては、せめてお盆や年末年始などは実家に戻って親御さんと話すなど、コミュニケーションを密にしておくことが大切でしょう。
法的には、お子さん側から相続に対して生前なにか対処しておけるような制度は現状ありません。そのため、遠方に住んでいる状況を踏まえ、コミュニケーションをしっかりと取り、負担になりづらい相続対策を親御さんと一緒に考えておくことが重要です。
それでもトラブルが生じてしまった場合には、早々に専門の弁護士へ相談に行かれることをおすすめします。
相続トラブルは「ゼロか100か」を争うようなものではなく、相続人間の財産分配の「グレーな部分」でもめてしまうことが多いです。そのため、自分の想いをあるがままぶつければ、双方の関係性は悪化してしまう一方です。
ですから、専門家である弁護士に相談のうえ、法的な財産の分配方法や、双方の立場に即した解決案を一緒に考えていくことが非常に重要といえます。
監修
山村 暢彦
山村法律事務所
代表弁護士
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