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<ふるさと納税>「改悪された」といわれるが…それでも行う「メリット」はあるのか【税理士に聞く】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2023年12月2日 13時15分

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(※画像はイメージです/PIXTA)

物価上昇が続くなか、「節税」等、実質的な手取りをできるだけ多くする方法はきわめて重要です。そういった方法としてよく挙げられるものの一つに「ふるさと納税」があります。しかし、他方で10月から制度が「改悪」されたともいわれます。ふるさと納税とはどんなしくみなのか、これから行うとしたらどんなメリットがあるのか。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

ふるさと納税のしくみとメリット

まず、ふるさと納税のしくみと、どんなメリットがあるのかについて解説します。

ふるさと納税は、任意の自治体に「寄付」を行ったら、税金から「寄付額-2,000円」の額が差し引かれて戻ってくるしくみです。よく「節税」と誤解されていますが、厳密にいえば節税ではありません。

寄付額を支払い、税金も支払ったうえで、「寄付額-2,000円」が戻ってくるだけなので、これだけみると、収支としては「-2,000円」ということになります。

ふるさと納税のメリットを正確に表現すると、税金が戻ってくること自体ではなく、寄付先の自治体から「返礼品」を受け取れることです。

実質的にみると「2,000円」と引き換えに「返礼品」をもらえることになります。したがって、返礼品の市場価値が2,000円よりも高ければ、その差額分だけ得をするということです。たとえば、4万円を寄付し、返礼品として1万円相当の「フグ鍋セット」を受け取った場合、寄付額のうち3万8,000円が税金から返ってきます。そして、自己負担2,000円と引き換えに1万円相当の物を獲得したことになるので、差額8,000円分だけ得をするということです([図表]参照)。

納税者からみると、返礼品の市場価格が大きいほど「得をする」ということになります。このメリットを目当てに、ふるさと納税の制度を利用する人が年々増加してきています。

寄付後に税金の還付等を受けるための手続き

ふるさと納税を行ったあと、「寄付額-2,000円」を受け取るための手続きは2通りあります。「確定申告」と「ワンストップ特例」です。

このうち「ワンストップ特例」は、寄付先の自治体から送られてくる「申請書」を郵送するだけで済む簡易な方法です。ただし、利用するには以下の条件があります。

【ワンストップ特例を利用できる条件】

・ふるさと納税以外に確定申告または住民税の申告を行う必要がない

・1年間に寄付を行った先が5自治体以内

寄付先の自治体が居住自治体へ連絡し、翌年度分の住民税からの税額控除が行われます。申請書の郵送料や関連事務のコストは寄付先の自治体が負担します。

「確定申告」と「ワンストップ特例」とでは、返ってくる「税金」の額は全く同じですが、どの税金がどう返ってくるのかが異なります。違いは以下の通りです。

【確定申告】

・所得税:「(寄付額-2,000円)×所得税率」の額が返ってくる(還付)

・住民税:翌年支払う居住自治体の住民税の額から「寄付額-2,000円-所得税の還付額(上記の通り)」が控除される(税額控除)

【ワンストップ特例】

・所得税:(控除なし)

・住民税:翌年の住民税の額から「寄付額-2,000円」が差し引かれる(税額控除)

ふるさと納税の制度が10月から「改悪」…メリットはどうなった?

ただし、2023年10月からふるさと納税の制度が「改悪」されたといわれることがあります。どういうことなのか、それによって前述の「メリット」にどのような影響が生じたのか、説明しておきます。

新ルールの骨子は、以下の通り、「経費に算入すべき費目の拡大」と「返礼品の要件の厳格化」です。

【2023年10月からの「新ルール」の内容】

・経費に算入する費目の拡大:募集に要する費用について、ワンストップ特例事務や寄附金受領証の発行などの付随費用も含めて「寄附金額の5割以下」とする

・返礼品の要件の厳格化:「熟成肉」と「精米」は、原材料がその自治体と同一の都道府県内産のものでなければならない

◆経費に算入する費目の拡大

まず、寄付先の自治体が経費に算入しなければならない費目が拡大されました。

ふるさと納税の業務にかかる経費には以下のルールがあります。

・返礼品の価格は寄付額の30%以内(30%ルール)

・トータルの経費が寄付額の50%以内(50%ルール)

このうち、返礼品に関する「30%ルール」の目的は、自治体の間で過度の「返礼品競争」が起きることを防ぐことにあります。他の自治体よりも多くの寄付を集めようとすれば、より魅力的な返礼品を準備するために、仕入れ価格の寄付額に占める割合が高くなりがちです。それを防がなければならないということです。

また、トータルの経費に関する「50%ルール」は、経費が寄付額の半分を超えてしまっては、制度として本末転倒になってしまうという考慮によるものです。

しかし、このうち「50%ルール」に関しては、これまで、経費に計上されていない「隠れ経費」があることが指摘されていました。以下のようなものです。

【「隠れ経費」とされたもの】

・仲介サイトの事業者に支払う手数料

・寄付者が「確定申告」をする際に必要な「寄附金受領証明書」の発行事務にかかる経費

・寄付者が「ワンストップ特例」を利用する際の事務にかかる経費

これらの「隠れ経費」まで捕捉しないと、「50%ルール」は意味がなくなってしまうということで、経費に算入しなければならないことになりました。

その反面、今後、これらの「隠れ経費」を計上することになると、自治体によっては、経費率を50%以内に収めるために返礼品のグレードを下げざるを得なくなるケースが考えられます。つまり、寄付する側からしてみれば、これまでより「お得」の度合いが下がることになります。

◆返礼品の条件の厳格化(熟成肉、精米)

次に、加工品のうち「熟成肉」と「精米」の2品目について「地場産品基準」というルールの適用を厳格にしたことです。

「地場産品基準」とは、簡単にいうと、返礼品が「地元の名物」であることを求めるものです。加工品については、以下の基準が設けられています。

「当該地方団体の区域内において返礼品等の製造、加工その他の工程のうち主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているものであること」

加工品の原料をよそから調達する場合は、原料が加工品になることによって「その自治体ならではのもの」という付加価値が生まれなければならならないということです。

たとえば、岩手県遠野市のふるさと納税の返礼品に「ジンギスカンのラム肉とタレのセット」があります。ラム肉自体はオーストラリア産やニュージーランド産ですが、ジンギスカンは遠野市の「ご当地グルメ」です。遠野市内で精肉等の主要な加工のプロセスが行われ、地元の事業者が扱うことによって「遠野ジンギスカン」という付加価値がつきます。ラム肉の産地がどこなのかよりも、「遠野ジンギスカン」のブランドのほうが重視されるようになるのです。したがって、遠野市の「地場産品」として扱ってよいということです。

この「地場産品基準」に関し、10月からは「熟成肉」と「精米」の2品目については、原料が同じ都道府県内で生産されたものに限られるということが明記されました。

「熟成肉」は、ホルスタイン等の比較的安価な国産牛肉を、熟成させることにより付加価値をつけるものです。しかし、現時点では、加工地の自治体のブランドよりも、国産牛の熟成肉だという点や、熟成を担当する業者の技術のほうが重要だとみられたのかもしれません。

ただし、「これから市を挙げて熟成肉のステーキをご当地グルメにしていこう」というような場合まで一律NGとしてしまうのは、やりすぎかもしれません。

「精米」は、精米された自治体がどこなのかということよりも、米の品種や原産地が重視されます(「新潟県南魚沼産コシヒカリ」等)。

以上、まとめると、ふるさと納税を利用する立場からは、以下の2つの点でメリットが多少損なわれたことになります。

・返礼品の原価がこれまでよりも抑えられるケースがある

・「熟成肉」「精米」の選択肢が狭まる

しかし、利用者にとっては、2,000円と引き換えに好きな「返戻金」を受け取れるという経済的メリットは、今なお存在するといえます。

他方で、ふるさと納税の制度は、本文中で紹介したように様々な課題を抱えているのも確かです。また、東京23区など、ふるさと納税によって多額の財源が他の自治体へ流出し、行政サービスが十分に提供できなくなる可能性に危機感を表明している自治体もあります。

ふるさと納税のもともとの制度趣旨は、自治体ごとの税収の不均衡を是正し、地方の活性化につなげるというものです。その趣旨に沿った形で、適正に運用されるようになることが望まれます。

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ 共同代表

公認会計士

税理士

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