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不動産投資市場動向(2023年第3四半期)…国内不動産市場は安定、存在増すアジア太平洋地域の投資家

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2023年12月7日 7時0分

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(写真はイメージです/PIXTA)

国内不動産市場の2023年第3四半期の不動産取引総額は前年同期比でプラスに転じた。また外国資本による購入額は前年同期比でプラスとなった。世界全体の不動産取引額は前年の半分程度にまで落ち込む一方、アジア太平洋では相対的に減速が緩やかな状態が続き、日本の不動産投資市場は、低金利が継続している安定した金融市場を背景に、世界で最も活発な市場となっている。しかし従来相対的に投資額が大きかったアメリカの投資家が、日本の不動産に対して今後も投資を控えることを続ければ、国内不動産市場も悪影響をもたらす可能性はある。また今後さらに円安が進むことになれば、外国資本による日本国内不動産投資が減少するリスクが生じる。本記事では、不動産投資市場動向(2023年第3四半期)と今後の不動産市場見込みについてニッセイ基礎研究所の渡邊 布味子氏が詳しく解説します。

要旨

国内不動産市場の2023年第3四半期の不動産取引総額は前年同期比でプラスに転じた。第1四半期から第3四半期までの不動産取引額総額は前年同期比で改善した。低金利が継続している安定した金融市場を背景に、日本の不動産投資市場は世界で最も活発な市場となっている。

また外国資本による購入額は前年同期比でプラスとなった。2023年第1四半期から第3四半期までの外国資本による国内不動産の購入額は改善した。オフィスへの投資が避けられているほか、コロナ禍後に活況となった外国資本による賃貸マンションの取得は一段落したとみられる。

世界全体の不動産取引額は前年の半分程度にまで落ち込んでいる。一方、アジア太平洋では相対的に減速が緩やかな状態が続いている。欧米資本の国外不動産への投資額が減少する一方、アジア太平洋地域内の投資家の存在感が増している。

シンガポール資本、香港資本などの積極投資が目立つほか、日本資本もオフィス、物流施設、賃貸マンション、開発用地、ショッピングモール、ホテルと多岐にわたる投資を行っている。

世界的なマクロ経済環境は悪化しており、今後の行方も不透明である。特にアメリカ資本の対外投資の減少と、アメリカ国内で不良債権残高の増加には注意が必要である。従来は相対的に投資額が大きかったアメリカの投資家が、日本の不動産に対して今後も投資を控えることを続ければ、国内不動産市場も悪影響をもたらす可能性はある。

また外国資本にとっては国内不動産価格が円安の進行により外貨換算した価値が下落していることになる。今後さらに円安が進むことになれば、既存投資の外貨換算での投資が毀損し、外国資本による日本国内不動産投資が減少するリスクが生じる。

今期は国内資本の海外不動産への投資が大きく伸びた。従来は国内を中心に不動産投資を行っていた投資家も、リスク分散のために海外の不動産への投資を開始・拡大したという面もある。円安や日本の人口減少や経済の低成長が続くとすれば、国内不動産の今後の収益性に大きな期待を持てない国内投資家を中心に、今後も海外不動産への投資が拡大してく傾向は続くと考えられる。

目次

・国内全体の不動産取引の動向(2023年第3四半期) ・外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第3四半期) ・世界とアジア太平洋地域の売買動向 ・アジア太平洋地域内の投資家の存在感が増している ・米国で懸念される不良債権処理の長期化、ドル円や地政学リスクにも留意

国内全体の不動産取引の動向(2023年第3四半期)

米国の不動産市場調査会社であるMSCIリアル・キャピタル・アナリティクス(以下、売買データは同社が2023年11月16日時点で把握しているもの)によると、国内不動産市場の2023年第3四半期の不動産取引総額は約1兆2,970億円、前年同期比は+12.0%とプラスに転じた(図表1)。

2023年第1四半期から第3四半期までの不動産取引額総額は前年同期比で▲3.3%となり、上半期の前年同期比(▲18.9%)から改善した1。低金利が継続している安定した金融市場を背景に、日本の不動産投資市場は世界で最も活発な市場となっている。

用途別取引額(2023年第1四半期から第3四半期の累計)の割合は、物流施設が19.2%(前年同期比+10.9%)、商業施設が15.1%(+2.9%)、ホテルが10.9%(+3.1%)と増加し、オフィスが25.6%(▲8.3%)、開発用地が13.0%(▲5.5%)、賃貸マンションが14.9%(▲4.8%)と減少した。

個別の大型取引では、三井不動産が帝国ホテル東京タワー館の敷地の一部と、東京都日野市にある日野自動車の工場の一部を取得した。


1渡邊布味子『不動産投資市場動向(2023年第2四半期)~物流施設とホテルへの投資が増加、投資戦略は賃収増に変化』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2023年08月21日)

外国資本の国内不動産購入の動向(2023年第3四半期)

2023年第3四半期の外国資本による購入額は約5,025億円で、前年同期比+11.0%となった(図表2)。2023年第1四半期から第3四半期までの外国資本による国内不動産の購入額は▲4.3%と、上半期の前年同期比(▲16.2%)から改善した。

用途別購入額(2023年第1四半期から第3四半期の累計)の割合は、物流施設が22.7%(前年同期比+18.0%)、ホテルが25.2%(+13.0%)、商業施設が17.7%(+6.4%)と増加し、オフィスが4.9%(▲32.8%)、賃貸マンションが17.2%(▲13.4%)、開発用地が11.2%(▲7.2%)と減少した。オフィスへの投資が避けられているほか、コロナ禍後に活況となった外国資本による賃貸マンションの取得は一段落したとみられる。

個別の大型取引では、シンガポールのREITメイプルツリー・インダストリアルらがSUMAデータセンターを、シンガポールの投資会社SCキャピタル・パートナーズ、アブダビ投資庁、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントが27軒の国内リゾートホテルポートフォリオ2を取得した。


2ポートフォリオを構成する物件は、ホテル&リゾーツ和歌山串本、ロイヤルホテル大山、アクティブリゾーツ霧島、ロイヤルホテル沖縄残波岬、ロイトン札幌、アクティブリゾーツ裏磐梯、ホテル&リゾーツ南房総、ロイヤルホテル能登、ホテル&リゾーツ京都宮津、ホテル&リゾーツ別府湾、ロイヤルホテル那須、ロイヤルホテル富山砺波、ホテル&リゾーツ伊勢志摩、ホテル&リゾーツ長浜、ホテル&リゾーツ南淡路、アクティブリゾーツ宮城蔵王、ロイヤルホテル八ヶ岳、ロイヤルホテル長野、TheHamanako(ザ浜名湖)、TheKashihara(ザ橿原)、ホテル&リゾーツ和歌山南部、ロイヤルホテル宗像、ホテル&リゾーツ佐賀唐津、SCCPダイワリゾートホテルズ(3棟)である。

世界とアジア太平洋地域の売買動向

2023年第3四半期の世界の不動産取引額は約2,594億ドル(約38兆7,438億円3、前年同期比▲43.8%)と大幅に減少し停滞が続いている。エリア別ではアジア太平洋が約1,445億ドル(約21兆5,849億円、▲33.6%)、南北アメリカが約801億ドル(約11兆9,647億円3、▲52.6%)、欧州・中東・アフリカが約348億ドル(約5兆1,942億円3、▲53.4%)と各エリアとも大幅減少となった(図表3)。

欧米で在宅勤務の普及等でオフィス市況の悪化が続いていることに加え、金利が上昇している国では不動産価格が下落傾向となっており、世界全体の不動産取引額は前年の半分程度にまで落ち込んでいる。一方、アジア太平洋では相対的に減速が緩やかな状態が続いている。


32023年第3四半期末の為替レートをもとに換算した。

アジア太平洋地域内の投資家の存在感が増している

世界では各国市場における自国国内の投資家による投資とアジア太平洋地域以外の投資家からの投資が10年来の最低水準に近づいている。一方、アジア太平洋地域からの投資は10年間の平均値をやや上回って推移している。

各国の海外への不動産投資の2023年第1四半期から3四半期の累計額は、アメリカ資本が前年同期比▲57.0%、イギリス資本が▲73.0%、ドイツ資本が▲69.0%と減少した。一方、シンガポール資本は+31.4%、日本資本は+187.8%と増加した。またアラブ首長国連邦は+597.1%と国外不動産への投資額を大幅に引き上げた。

アジア太平洋地域での不動産購入額(2022年第4四半期から2023年第3四半期の4四半期累計)を域内外の資本別にみると、アジア太平洋地域の外からの外国資本の購入額は約127億ドル(約1兆9,039億円、前年同期比▲61.6%)であったが、各国における国内資本の購入額が約1,009億ドル(約15兆673億円、▲36.9%)、アジア太平洋地域内からの外国資本の購入額が約246億ドル(約3兆6,692億円、▲17.2%)となり、アジア太平洋地域内の投資家の存在感が増している。

また、アジア太平洋地域内の各国・地域別市場の外国資本の購入総額に各外国資本が占める割合(2023年第1四半期から第3四半期累計)は、シンガポール資本が韓国市場の72.0%(2021年と2022年平均は36.4%)、インド市場の62.1%(44.7%)、日本市場の44.4%(22.6%)を占めた。また香港資本は、中国市場の68.1%(44.2%)、シンガポール市場の47.1%(17.0%)を占めた。

日本資本もオーストラリア市場の32.6%(0.0%)、その他アジア太平洋地域内の27.5%(20.2%)、インド市場の8.1%(4.8%)を占め(図表4)、投資した用途はオフィス、物流施設、賃貸マンション、開発用地、ショッピングモール、ホテルと多岐にわたる。

米国で懸念される不良債権処理の長期化、ドル円や地政学リスクにも留意

世界的なマクロ経済環境は、インフレの進行と金利上昇の可能性、中国の不動産危機、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルとガザにおける軍事衝突とその拡大による地政学リスクなど、状況は悪化しており、今後の行方も不透明である。

同様に世界の不動産市況も全体的には停滞しているが、アジア太平洋地域の不動産市況は相対的に悪くない。日本の不動産市況は安定した状態が続いており、価格も横ばいかむしろ上昇傾向との強気の声もある。またアジア太平洋地域の投資家は海外投資にも積極的である。

一方で、国外への投資を控えている国・地域もある。特にアメリカ資本の対外投資の減少と、アメリカ国内で不良債権残高の増加には注意が必要である。

MSCIリアル・キャピタル・アナリティクスによると、顕在化しかつ未処理の不良債権の残高は、2023年第1四半期から第3四半期までに約789億ドル、潜在的な不良債権が約2,157億ドルあると試算されている。現在の不良債権残高が世界金融危機時の半分程度であることは安心材料ではある。

しかし、従来は相対的に投資額が大きかったアメリカの投資家が、日本の不動産に対して今後も投資を控えることを続ければ、国内不動産市場も悪影響をもたらす可能性はある。

さらに、今のところ安定している国内不動産価格も、外国資本にとっては円安の進行により外貨換算した価値が下落していることになる。外国資本にとっては安く買えるという側面もあるが、今後さらに円安が進むことになれば、既存投資の外貨換算での投資が毀損することとなり、外国資本による日本国内不動産投資が減少するリスクが生じ、その際には国内不動産投資市場は大きな悪影響を受けることとなる。

また、今期は国内資本の海外不動産への投資が大きく伸びた。従来は国内を中心に不動産投資を行っていた投資家も、リスク分散のために海外の不動産への投資を開始・拡大したという面もある。円安や日本の人口減少や経済の低成長が続くとすれば、国内不動産の今後の収益性に大きな期待を持てない国内投資家を中心に、今後も海外不動産への投資が拡大してく傾向は続くと考えられる。

日本の金利が長期的に上昇することが予想される中、これまで安定的に成長してきた日本の不動産投資市場および不動産取引価格が今後どうなるのか、その動向を注目していきたい。

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