遺産相続をしたが…自分に「相続税」はかかるのか、かからないのか?分かりやすい“見極め方”【司法書士監修】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月9日 11時30分
画像:PIXTA
相続税を納める機会は人生でもそう頻繁にあることではなく、詳しくない方が大半です。中には「遺産相続したら、相続税を納めなければならない」と思っている人もいるかもしれません…。相続税を納める必要があるのかを判断するには、一体どうすればいいのでしょうか? 税理士法人ブライト相続・所属の天満亮司法書士監修のもと解説します。
相続税がかかるかどうかの分岐点
相続税が発生するかを見極めるには、課税対象となる遺産の額と「基礎控除」を考える必要があります。
課税対象
相続税は被相続人の財産が多い場合に発生し、被相続人にそれほど財産がない場合、相続税はかかりません。
ここで言う「被相続人の財産」とは、亡くなった人の名義になっている財産のほぼ全てです。また、名義が別人のものであっても、実質的に被相続人の財産として扱われていたのであれば、相続税の課税対象に含まれます。
財産が多いかどうかの基準となるのは、被相続人の財産の評価額が「3,600万円」を超えるときです。「3,600万円」が1つの目安である理由は、次の通りです。
基礎控除の計算方法
相続税には「基礎控除」というものがあります。
基礎控除によって、相続する財産から「3,000万円」が控除されるため、3,000万円以下の財産を相続した場合に相続税はかかりません。さらに、法定相続人1人あたり「600万円」が追加で控除されます。先述した「3,600万円」が1つの分岐点となる理由がこれで、3,000万円+600万円というわけです。
法定相続人の数が増えれば600万円ずつ控除額が上がっていくため、法定相続人が2人なら「4,200万円」の控除、3人なら「4,800万円」の控除を受けられます。そして、被相続人の財産が控除額以下であれば、相続税はかかりません。
なお養子については、実子がいない場合には養子2人まで、実子がいる場合は養子1人までしか法定相続人に含めることができません。ただし、配偶者の連れ子を養子にした場合や、代襲相続で相続人になった養子、特別養子縁組による養子などは実子と同じ扱いとなり、人数の制限がありません。
債務を相続した場合(相続財産から減算)
たとえ控除額を超えて相続したとしても、それだけで相続税が発生するとは限りません。被相続人に借金(債務)があれば、相続財産から債務額を引いて計算することができます。
例えば、被相続人の財産が4,000万円として、法定相続人が1人だとしましょう。控除額は3,600万円なので、相続税がかかってしまいます。
しかし、被相続人が500万円の借金を抱えていた場合、4,000万円から500万円を引いた3,500万円が相続税課税対象の財産となります。控除額の3,600万円を下回っているため、相続税はかからないことがわかります。
各種控除の制度とは
相続税は控除額を超えた遺産総額に対して課税され、相続人が受け取った財産の割合に応じて各相続人の負担額が決まります。
そして負担額が決まった後、さらに各種の控除制度が適用され、最終的な納税額がゼロになることもあります。ここでは、代表的な控除の制度をご紹介します。
配偶者控除
配偶者は、財産評価額が1億6,000万円もしくは、法定相続分までは非課税になります。この制度があるため、被相続人の配偶者は相続税を払わなくて済むことが多いです。ただし配偶者控除を使うには、相続税の申告期限までに遺産分割を確定させ、税務署に申告書を提出しなければなりません。
生命保険控除
生命保険をかけていた人が亡くなると、生前に指定されていた受取人に保険会社から死亡保険金が支払われます。
死亡保険金は相続税の課税対象ですが、残された家族の生活に必要なお金でもあります。そのため死亡保険金については、相続人1人あたり500万円の非課税枠が設定されています。
小規模宅地の特例
一定の条件を満たした土地を相続した場合、一定の面積まで評価額を50%または80%減額できる特例です。「相続税そのもの」が50%または80%減額できるのではなく、あくまで「土地の評価額」が減額されることに注意してください。
相続税がかかるかわかりづらい理由
「相続税がかかる? かからない?」と多くの人が悩む理由は、主に以下の3つです。
1.財産の把握が難しいから
被相続人の財産を把握するのは、意外と難しいものです。遺族に秘密にしていた口座や投資商品があるなど、様々な事情があります。
また、相続税の課税対象にならない例外的な財産があり、これも事態を難しくします。
例えば、お墓や仏壇など礼拝に使うものは、相続税の課税対象から外れます。しかし高価な仏像類は、投機対象などとして課税対象となることがあるので、判断が難しいです。
2.評価額がわかりづらいから
現金や口座残高などは数字で把握できるのでわかりやすいですが、不動産、有価証券、美術品などの評価額はわかりにくいです。
例えば、昔はあまり価値のなかった土地の価格が、時代とともに値上がりし、相続税の控除額をオーバーしてしまうケースも考えられます。「自分が相続したものについては、相続税が課税されない」と考えていても、時代の変化などで思わぬ事態が発生し、課税される可能性があるのです。
3.各種控除があるから
相続税には、本記事で触れたもの以外にも様々な控除制度があります。控除があるため納税額が減る、またはゼロになるケースも多いのですが、それを知らないと相続税が気になってしまうかもしれません。
専門家へ相談を
被相続人の財産額が控除額の3,600万円を下回っていれば、相続税はかかりません。仮に控除額を上回っていても、各種制度を使えば相続税を払わずに済むことも多いです。反対に、財産額が想定より多いなどの事情で課税されることもあり得ます。あるいは控除を受けるために必要な書類などが整わず、控除を受けられないこともあるかもしれません。
相続には様々な事情が潜んでいるため、似た事例であっても自分の相続には当てはまらないことがあります。正確なことを知りたい、適切に手続きを行いたい場合は、迷わず専門家に相談してください。
天満 亮
税理士法人ブライト相続
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