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米Apple社は日本企業に「年間1億円の使用料」を支払ったが…「商標ライセンスで一攫千金」は“アリ”なのか?【一級知的財産管理技能士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年2月7日 12時0分

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(※写真はイメージです/Pixabay)

商標制度の利用者の中には、本制度が掲げる“本来の目的”から外れ、金銭の収受を目的に「誰かが使いたがりそうな商標」を片っ端から出願したり、「他人の商標」を先取りするような出願をしたりする人々がいます。こうしたケースについて特許庁は注意喚起や法制度で対応していますが、そもそも「商標ライセンスで一攫千金」は現実的に可能なのでしょうか? 一級知的財産管理技能士・友利昴氏の著書『エセ商標権事件簿』(パブリブ)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

大前提として「カネ目的の商標登録」は無効

他人が使いたがりそうなネーミングを先に商標登録して、売りつけようと考えるエセ商標権者がときどき現れるが、ことごとく失敗しているのは本書『エセ商標権事件簿』で紹介している通りである。

例えば、企業が新商品のネーミングを発表したり、海外ブランドの日本進出のニュースを見て、それらがまだ商標登録されていないことに気が付いて、自分が先に商標登録して「年100万円でどうでしょう?」などと持ちかければ、もうアウト。その時点で無効なエセ商標権だ。本来他人に帰属すべき商標を先取りして売りつけようとするなど、出願経緯が不当で取引秩序を害すると評価される商標は、公序良俗違反(商標法4条1項7号)となり、権利は取り消しとなる。または権利行使しようとしても、権利の濫用などを理由に認められない。

では、「タナボタで使用料収入」は可能か?

その一方、自ら欲張って売り込みにいかなくとも、保有している商標権について、その使用を希望する企業から「売ってくれ」と頼まれることは現実にある。例えば、アップルの「iPhone」の商標は、日本では、インターホン大手のアイホン社が、類似する商標「アイホン」を先に登録していたため、アップルは同社からライセンスを受けて使用することになったのは知られた話だ。その使用料は、最盛期で年間1億円だったといわれている。

我が身に置きかえて想像してほしい。ある日突然、米国の大企業から「アナタノ持ッテイル商標権ヲ、年間1億円デ使ワセテ下サーイ」などと言われたら、これ以上のアメリカンドリームはない。ただ商標権を持っているだけで、iPhoneが日本で販売されている限り、年間1億円もの不労所得を得ることができるのだ。超特大のタナボタである。

使用されていない「ストック商標」は取り消されるのがオチ

だがこれは、100年に一度レベルの奇跡と考えるべきである。多くの事業者は、計画している商品名の案が誰かの商標登録と被っていることに気が付けば、おとなしく違うネーミングを考えるだろう。

一方、iPhoneのように、輸入品で日本でだけネーミングを変えるわけにはいかないといったシチュエーションもあるだろう。その場合、商標を使いたい事業者がまず考えるのは、障害となる商標権の取り消しである。日本では、過去3年以内に使用実績のない商標権は、請求により取り消すことができる。

「誰かが買ってくれないかな~」と指をくわえて3年間ストックしてあるだけの商標権など、取り消される運命なのだ。世の中には、商標登録したはよいものの、商品の販売終了などにより稼働していない「休眠商標」が大量にある。そのため、商標取消審判請求の成功率は、統計上、実に8割前後にものぼる(※注)。誰もが使いたがるようなウマいネーミングを商標登録していても、商標権が取り消されては結局1円にもならず、それまでにかかった登録・維持費用がムダになるだけである。

(※注)『特許行政年次報告書2023年版』(特許庁)p.75

「商標ライセンスで一攫千金」は夢のまた夢

使用希望者が、事情により自身の商標を変更することができず、一方、商標権者側も自己の商標を正当に使用していて取消事由もない、という条件が揃ったときに、初めて買い取りやライセンスの打診に至ることはある。それでも「たまたま使いたいネーミングが被ってしまったので使わせてほしい」というシチュエーションで動く金額は、たかが知れている。

筆者の経験上、ライセンスであれば年間10~30万円、権利譲渡であれば30~50万円が相場である。ある大企業から商標権のライセンスの相談があったとき、「もしかして、この会社なら期待できるのでは?」と思って、思い切って年間100万円を提示したところ、ピタリと連絡が途絶えたこともあった。1億円なんて、夢のまた夢である。

友利 昴

作家・一級知的財産管理技能士

企業で法務・知財業務に長く携わる傍ら、主に知的財産に関する著述活動を行う。自らの著作やセミナー講師の他、多くの企業知財人材の取材記事を担当しており、企業の知財活動に明るい。主な著書に『エセ著作権事件簿』(パブリブ)、『職場の著作権対応100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)、『知財部という仕事』(発明推進協会)、『オリンピックVS便乗商法』(作品社)など多数。

講師としては、日本弁理士会、日本商標協会、発明推進協会、東京医薬品工業協会、全日本文具協会など多くの公的機関や業界団体で登壇している。一級知的財産管理技能士として2020年に知的財産管理技能士会表彰奨励賞を受賞。

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