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定年早々、退職金を使い果たした〈貯金0円〉の60歳男性…“老後破産”を回避するために選ぶべき「年金の受給方法」は〈繰上げ〉か〈繰下げ〉か【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年2月21日 17時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

中堅電機メーカーの開発部長だった野口さん(仮名)は、退職金で住宅ローンを完済したところ貯蓄がゼロになってしまいました。年金の受給方法には「繰上げ受給」「繰下げ受給」の2パターンがありますが、野口さんが老後破産を避けるためには、どちらを選ぶのが正解なのでしょうか。ファイナンシャルプランナーである長尾義弘氏の著書『運用はいっさい無し! 60歳貯蓄ゼロでも間に合う 老後資金のつくり方』(徳間書店)より、詳しく見ていきましょう。

退職金で住宅ローン完済後、貯蓄ゼロに…老後はどうなる?

<野口さん(仮名)の家計データ>

・夫60歳、妻60歳の二人暮らし(子どもは独立)、60歳定年。

・退職金は全部使ってしまい、貯蓄は0円。

・住宅ローン=完済

・毎月の支出=月額約33万円(年額400万円)

・65歳時点での予定年金受給額→夫:200万円/妻:80万円  

<家計改善のためにやること:ステップ①>

夫は再就職で60歳以降そして70歳まで働く予定。

夫の給与は、60〜64歳は月額30万円(年収360万円)、65〜70歳は月額20万円(年収240万円)。妻は60〜65歳まで会社員を続ける予定で、給与は月額15万円(年収180万円)。

ポイントは年金を受け取る“タイミング”

ステップ①のままでは、83歳には老後資金がつきてしまいます。その後は、月額約25万円の年金だけで暮らすことになります。余裕がないというよりも、厳しい生活になり、豊かな老後とはいえません。

そこで年金のさらなる積み増しを図ってみました。労働時間を増やせと言っているわけではありませんよ。ポイントは年金の受け取りを開始するタイミングです。

 

年金を70歳まで繰下げ受給すると…

70歳での年金受給額約305万円(増額された年金約298万円+厚生年金の増額6万5,772円)

65歳~70歳までは、野口さんの給与240万円と晶子さんの年金85万円、合計325万円で生活します。生活費の不足分は、老後資金から取り崩します。

このプランにすると、老後資金は100歳までなんとか持たせることができます。とはいっても、65歳以降は老後資金が少ない状態が続きます。

言い換えると余裕資金がほとんどないということです。もしも介護や認知症などのトラブルがあったときには、もっと手前でアウトになる可能性があります。なんとも不安な老後を過ごすことになってしまいます。対策が必要ですね。

では、次の一手を繰り出しましょう。

「繰上げ受給」と「繰下げ受給」、どちらが得?

通常、年金は65歳で受け取りが始まります。しかし、60歳から75歳の間ならば、いつでも受け取ることができます。65歳より前に受け取ることを繰上げ受給、66歳以降から受け取ることを繰下げ受給といいます。

「60歳からもらえるなら、なにもキリキリ働かなくたっていいじゃないか」

こういう意見があることは承知しています。実際約12.3%の人が繰上げ受給をしており、繰下げ受給を選んでいる人はたった1.5%です。「早くにスタートしたほうが長期間もらえて得!」だと考える人が多いようです。これは大きな勘違いです。

野口さんのように働けて、緊急性がなければ、繰下げ受給をするほうが得になります。というのも、早く受け取るほど受給額が減り、遅く受け取るほど受給額が増えるのです。

66歳以降に受け取りを開始する繰下げ受給は、1ヵ月につき0.7%ずつ年金が増えていきます。1年では8.4%の増額です。70歳まで繰下げたとすると、42%の増額になります。増額された年金額は一生涯続きます。

繰下げ受給の損益分岐点は11年11ヵ月です。70歳からスタートしたら、82歳以降はずっと得をするわけです。男性の平均寿命は81歳。微妙ではありますが、これからも寿命は延びていく予想です。女性はほぼ得をしますし、男性も半数以上は得になる方法でしょう。

一方、繰上げ受給は1ヵ月につき0.4%ずつ減らされ、60歳まで繰上げた場合は24%の減額になります。こちらも減額された年金額が一生涯続きます。その損益分岐点は81歳。それ以上長生きすれば、その後は損をします。

繰下げ受給と繰上げ受給でどのくらい差がつくのか、比較してみましょう。

65歳のときの年金受給額が200万円で、95歳まで生きたとします。

・60歳まで繰上げ受給の総額=5,320万円

・65歳で受給開始の総額=6,000万円

・70歳まで繰下げ受給の総額=7,100万円

95歳まで生きると、繰上げ受給と繰下げ受給ではなんと1,780万円もの開きがあります。65歳で開始した人とも1,100万円の差が出ます。

長生きすればするほど、差は広がります。受給額が大きい人は、繰下げ受給をすることで、年金だけで生活していけるようになります。

夫婦の年金を69歳まで繰下げ受給する

年金の受け取り額をもう少し増やしたいところですが、野口さんの場合、2人そろって70歳まで繰下げると、資金が持ちませんでした。

しかし、69歳までの繰下げならいけます。69歳まで繰下げると33.6%の増額になり、夫は287万円で、妻は114万円。夫婦の年金総額は401万円となります。収支のバランスもプラスになっているため、お金の心配はなくなります。それなりに明るい老後を過ごせるでしょう。

ただ90歳までの貯蓄額が322万円とちょっと少ないのが気になるところ。もし、介護になったり認知症になったりすると、支出が増えます。はたまた配偶者が死亡したときには、年金が半分に減ってしまいます。これでは、本当に安心できる老後ではありませんね。

「もしも…」のときにも繰下げ受給は役に立つ

繰下げ受給はなかなか融通がきく制度で、途中でやめることができます。その際には2種類の方法があります。ひとつは、年金を一活で受け取る方法です。その場合は、65歳時点の受給額で計算され、未支給分の年金が支払われます。要介護になってまとまったお金が必要なときなどは助かります。もうひとつは、途中で年金の支給を開始する方法です。生活費が心配なときは繰下げをやめれば、そこから年金の支給は始まります。こちらは、その時点まで繰下げて増額になった金額を受け取れます。

現在の状況を考えながら、いつ受け取りを開始するかを決めればいいのです。また、繰下げ受給をしている途中で死亡してしまっても、未支給分として遺族が受け取れます。生命保険と同じようにみなし相続財産になるので、相続税の税制優遇があります。

「繰上げ受給」「繰下げ受給」それぞれのデメリットとは?

年金をいつから受給するかは、それぞれの事情によって異なります。人生100年時代に向いている方法は繰下げ受給です。

逆に、早く年金を受け取ることができる繰上げ受給は、デメリットが大きいです。

繰上げ受給は一度選択すると、途中で変更がききません。また、障害年金を受け取れなくなります。遺族年金を受け取っている人は併用ができません。

どうしても生活に困っているのでない限り、できるだけ避けたいものです。

もっとも、繰下げ受給にもデメリットがないわけではありません。いちばんのデメリットは、早死にすると損をすること。とはいえ、死んでしまえばお金は必要ないので、デメリットとは言えないかもしれません。ただ、年下の配偶者がいた場合は、加給年金を受け取れません。加給年金とは、厚生年金の遺族手当のようなものです。加給年金は金額が大きいため、損になることもあります。

また、受給額が増えたぶん、税金や社会保険料が多くなってしまいます。

70歳まで繰下げると受給額は42%アップしますが、実際の手取り金額は35~32%くらいになるかもしれません(税金や社会保険料は、それぞれ家族関係や家計の状態で異なります)。すると、損益分岐点も1~2年、後ろにズレます。

「税金や社会保険料まで上がるなら損だ」という人もいますが、それは間違い。もともとの目的は、年金の受給額を増やすことです。増えた金額以上に、税金や社会保険料が上がることはありません。ある意味、これは仕方のない話です。

「税金や社会保険料が増えるから、給料を上げないでください」なんて言う会社員はいませんよね。引かれる損より、増えた得に目を向けてください。

繰下げ受給は、基礎年金か厚生年金のどちらか一方を選ぶことも、両方を繰下げることもできます。さらに、繰上げ受給とは違い、「70歳まで繰下げるつもりだったけれど、お金が必要になったので68歳からもらおう」といった具合に、変更も可能です。このように自由度の高いしくみになっています。

長尾 義弘 ファイナンシャルプランナー

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