1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

不動産を相続したら…「評価額の計算方法」と「相続登記の進め方」を税理士が解説

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年2月28日 9時15分

写真

※画像はイメージです/PIXTA

相続税を計算する場合、相続した不動産の評価額だけではなく、不動産を含む遺産総額や相続人の人数を把握し、家族全体の相続税総額を計算する必要があります。また、不動産を相続したら相続登記(名義変更)の手続きも必要です。不動産を相続した場合の相続税の計算方法や手続きの流れ、費用について解説していきます。

相続税は不動産を含む遺産総額で計算!課税の有無や控除も解説

冒頭でもご紹介した通り、相続税は「OO万円の不動産を相続したから、相続税はXX円」という計算はできません。不動産や他の財産を含めた遺産総額や法定相続人の人数を知り、家族全体の相続税総額を計算して、各相続人が相続する遺産の額に比例させた納税金額を計算する必要があるためです。また、相続人の属性によって税額控除が適用できるため、家族の誰かに相続税が課税されても、あなたは無税になる可能性もあります。

極端な話をしますが、遺産が評価額4,000万円の不動産だけで相続税が課税されるケースもあれば、3億円の不動産を相続しても相続税が課税されないケースもあるということです。まずはあなたのご家族が相続税の課税対象なのか否かを知り、具体的な相続税の計算方法を知りましょう。

相続税は遺産総額が基礎控除額を超える場合のみ課税

相続税は被相続人の「正味の遺産総額」が、「基礎控除額」を超えた部分にのみ課税されます。

●正味の遺産総額とは 不動産や金融資産などのプラスの財産や一定の生前贈与財産などの合計から、借金などの債務・未払い金・葬儀費用などを差し引いた金額のことです。

プラスの財産は、相続財産の種類ごとに財産評価をする必要があるため、正確な評価方法や計算方法などは税理士に相談されることをおすすめします。

●相続税の基礎控除額とは 相続税が課税されるか否かのボーダーラインで、「3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)」で計算される控除額のことです。

仮に法定相続人が3人であれば基礎控除額は4,800万円になりますが、ご家庭によっては法定相続人の数え方に注意が必要なケースもあります。

もし正味の遺産総額が基礎控除額を下回る場合、相続税は課税されず、相続税申告の手続きも必要ありません。

ただし相続税の課税対象ではなくても、不動産の相続登記手続きは必要です。不動産の相続登記については以下でまた詳しく解説いたします。

相続税の計算方法

先述した通り、相続税は正味の遺産総額から基礎控除額を差し引いた、「課税対象額」に対して課税されます(上記画像のSTEP2の部分)。そして相続税の計算では、この課税対象額から「家族全体の相続税総額」を計算した上で、「各相続人の相続税納税額」を算出する必要があります。

重要なので繰り返しますが、「OO円の不動産を相続したから、相続税は××円」と単純に計算ができないのは、まずは「法定相続分」で分割したと仮定し、家族全体の相続税の総額を計算する必要があるためです。

法定相続分とは、民法で定められている法定相続人が相続できる分割割合のことです。

そして法定相続分で分割を行ったら、以下の相続税の税率を当てはめて、各相続人の仮の相続税額を計算します。

各相続人の仮の相続税額を合計して家族全体の相続税総額を計算し、実際の分割割合に比例させて各相続人の納付税額を計算します。相続税の計算方法は細かい注意点が沢山ありますが、ここでは大部分を割愛しています。

【相続税対策】知っておくべき「税額控除」について

不動産を相続した相続人の属性によっては税額控除が適用され、相続税の納税額が軽減されます。

属性によって適用される税額控除

  • 配偶者控除
  • 未成年者控除
  • 障害者控除
  • 相次相続控除
  • 外国税額控除
  • 贈与税額控除

これらの控除を適用させるタイミングは、先述した「各相続人の納税額」が計算できた時点です。特に「配偶者控除(配偶者の税額軽減)」は控除額が大きく、課税対象額が1億6,000万円(もしくは法定相続分の範囲内)まで無税になります。

ただし配偶者控除を適用させるには相続税申告手続きが必要となり、何も考えずに分割をすると将来的に子供にデメリットがあります。

相続税計算で必須!不動産評価方法と不動産評価額の計算方法

不動産を相続した時の相続税を知るためには、不動産を含めた遺産総額を計算する必要があると解説してきました。

ここで問題になってくるのが、相続税の不動産評価額です。預貯金は1億円あれば、額面通りの1億円の評価なので悩むことはありません。ただし不動産は「土地」と「建物」で資産を分け、それぞれ別の計算式に当てはめて、不動産評価額を計算する必要があります。

ここからは相続税の不動産評価方法や計算方法について解説しますが、正確な不動産評価額の計算方法はとても複雑です。

不動産(土地)の相続税評価額の計算方法

土地の相続税評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、どの土地区分になっているのかで計算方法が異なります

●路線価方式(市街地・住宅地など) 路線価方式の計算式は「路線価×地積×補正率」です。路線価は国税庁のサイトで簡単に調べられます

●倍率方式(人口が少ない地方・田畑・山林など) 倍率方式の計算式は「固定資産税評価額×倍率」です。倍率は国税庁のサイトで調べられます。

相続した不動産が市街地や住宅地で「路線価方式」を用いる場合、正確な評価額を知るためには「補正率」をかける必要がありますが、ご自身で正確な評価額を出すのは難しいと思います。路線価方式の不動産評価が難しい場合は、「固定資産税評価額×1.14」の計算式に当てはめれば、概算の土地の相続税評価額を知ることができるのでお試しください。

なお、貸している土地については借り手の権利にあたる部分を除いて評価するため、相続税評価額の計算方法が異なります。

不動産(建物)の相続税評価額の計算方法

建物の相続税評価額は、固定資産税課税明細書(納税通知書)に記載されている「固定資産税評価額」と同額になります。ただし、建設中の建物や賃貸している建物については、相続税評価額の計算方法が異なります。

不動産(マンション)の相続税評価額の計算方法

相続した不動産がマンションだった場合、戸建てと同じく「建物部分(専有部分)」と「敷地部分(敷地権)」に分けて相続税評価額を計算します。

敷地部分(敷地権)の計算で用いる「マンションの敷地全体の評価額」は、土地の相続税評価額で解説した「路線価方式」か「倍率方式」で計算をします。持分割合は登記簿(登記事項証明書)に記載されているので、ご確認ください。

【相続税対策】土地は小規模宅地等の特例で大幅節税!

「小規模宅地等の特例」が活用できれば、土地の評価額が最大8割減額されるため、相続税対策になります。

小規模宅地等の特例の対象

  • 特定居住用宅地等(被相続人の自宅がある宅地)
  • 貸付事業用宅地等(賃貸用不動産の宅地)
  • 特定事業用宅地等
  • 特定同族会社事業用宅地等

宅地の利用区分によって適用できる限度面積や減額割合が異なるので、以下の表を参考にしてください。

たとえば、被相続人が居住していた宅地の評価額が5,000万円だった場合、小規模宅地等の特例を活用すれば評価額が1,000万円になるということです。

相続税を計算する上で重要な「正味の遺産総額」を大幅に減額できるため、相続税の節税に繋がります。小規模宅地等の特例を適用させるためにはいくつか条件があり、小規模宅地等の特例を活用して相続税が無税になる場合でも、相続税申告は必要となるのでご注意ください。

不動産を相続した時の手続き…相続登記は行うべき

上記イラストは、相続が発生してから相続税申告手続きまでの、大まかな流れです。相続税が課税される場合、相続発生の翌日から10ヵ月以内に、相続税申告の手続きと納付を完了させる必要があるのでご注意ください。

そして相続税の課税の有無に関わらず、不動産を相続した相続人が行う手続きが「相続登記(名義変更)」です。

相続登記とは 被相続人(亡くなった方)の名義になっている不動産を、管轄の法務局で相続人の名義に変更する手続きです。 日本中にある不動産の「所在地・広さ・誰が所有しているのか」などの情報は、すべて法務局に登録されています。

これまで、相続登記を行うことは義務ではなく、いつまでに申請しなくてはならないという期限もありませんでした。しかし、令和6年4月1日から相続登記が義務化されることになりました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。なお、過去に相続してまだ登記をしていない不動産も義務化の対象になります。

不動産の相続登記をしないと将来的にデメリットあり

不動産の相続登記をせずに放置すると、将来的に多くのデメリットが伴います。

相続登記をせずに放置するデメリット ・不動産を売却できない ・不動産を担保にできない ・他の相続人に勝手に不動産を売却される恐れがある ・後で相続登記をすることが困難になる ・相続登記の義務化施行後は期限までに申請しなければ過料が科される

所有者が被相続人名義のままでは、その不動産を売却することも、担保にすることもできません

また、遺産分割協議がまとまるまでは一時的に相続人全員の共有状態となりますが、相続人は自分の持ち分を第三者に売却することができてしまいます。仮に売却が成立してしまえば、名義を戻すためにかなり面倒な手続きが必要になります。

この他、相続登記をしない間に相続人の誰かが亡くなってしまった場合、その亡くなった相続人の相続人の協力が必要になり、相続登記をすること自体が困難になってしまいます。

また、相続登記の義務化施行後は、正当な理由がなく期限までに申請しなければ10万円以下の過料が科される場合があります。相続登記をしないデメリットは大きいため、できるだけ早めに相続登記手続きを行いましょう

不動産の相続登記(名義変更)の必要書類

不動産の相続登記手続きの必要書類は、上述の通りです。戸籍謄本・住民票・証明書等の取得費用は、数千円程度の実費が必要となるのでご注意ください。なお、遺言書があってその遺言通りに不動産を相続する場合には、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書は必要ありません。

不動産の相続登記をすれば「登録免許税」がかかる

法務局で不動産の相続登記手続きをすると、「登録免許税」という税金が課税されます。

登録免許税の計算方法 相続登記する物件の固定資産税評価額×0.4%

たとえば、固定資産税評価額が3,000万円の物件であれば、3,000万円×0.4%で登録免許税は12万円になります。この固定資産税評価額については、上記の固定資産評価証明書や、毎年市区町村から送付される固定資産税の課税明細書(納税通知書)に記載されていますのでご確認下さい。また、法定相続人以外の方が不動産を相続した場合、登録免許税の税率が2になるのでご注意ください。

不動産の相続登記は司法書士に依頼? 自分でできる?

不動産の相続登記の手続きは、専門家である司法書士に代行を依頼される方がほとんどです。司法書士に依頼をすると10万円程度の費用がかかりますが、印鑑証明書以外はすべて代行取得をしてもらえます。あとは必要書類に署名・押印をするだけで相続登記の手続きが完了しますので、手間はほとんどかかりません。

もちろん、相続登記の手続きをご自身で行うことも可能です。法務局や市区町村役場に足を運べば、窓口の方が教えてくださいますので、その指示に従えば登記の手続きや必要書類の取得はできます。ただ、書類に記載ミス等があれば後日法務局に再度出向いたり、添付書類に不備があれば、また再取得・再提出する必要があったりと、手間や時間がかかります。それらの手間と司法書士に依頼する場合の費用を天秤にかけて、ご自身でするか専門家に依頼するかを検討されるのが良いかと思います。

相続した不動産を売却したらまた税金!? 相続税以外の税金

不動産を含む遺産総額が基礎控除額を超えていれば相続税が課税され、相続登記をすれば登録免許税や司法書士の報酬が発生します。ただ、不動産を相続すると、ケースによっては相続税の他にも税金が課税されます。

相続した不動産を売却すると「譲渡所得税」が課税

相続した不動産を売却して利益(売却益)が出た場合は、「譲渡所得税」が課税されます。譲渡所得税は「所得税(復興特別所得税を含む)」と「住民税」を合計した金額となり、それぞれ税率が異なります。

この「保有期間」というのは被相続人が所有者になってからになるため、相続した不動産を売却した場合は「長期譲渡所得」になるケースがほとんどです。

この譲渡所得税は、不動産を売却した年の翌年3月15日までに税務署で確定申告を行う必要があります。税務署から税金の支払い通知書は送付されないため、売却した年の翌年3月15日までに納付書を作成して納税をしてください。

また、相続した不動産を売却した場合には、様々な特例の適用を受けることができます。たとえば、相続した財産を3年以内に売却した場合、「相続税の取得費加算の特例」を活用すれば、支払った相続税の一部を売却益から控除して節税ができます。

相続人以外が相続すると「不動産取得税」が課税

相続人以外の人(受遺者)が不動産を相続した場合、「不動産取得税」が課税されます。

不動産取得税の税率と計算方法

  • 土地…固定資産税評価額×3%(宅地は固定資産税評価額×1/2×3%)
  • 建物…固定資産税評価額×4%(住宅は固定資産税評価額×3%)

ただし、法定相続人が不動産を相続した場合は、不動産取得税は原則課税されません。また相続人以外の受遺者でも、包括遺贈(割合を定めて遺贈を受けること)によって不動産を取得した場合は課税されません。

相続した翌年からは「固定資産税」が課税

相続した不動産が賃貸物件だった場合、不動産所得が発生するため「所得税(復興特別所得税を含む)」が課税されます。毎年税務署に対して確定申告を行う必要がある為、手続きの手間がかかります。費用が発生しますが、確定申告は専門家である税理士に依頼が可能です。

不動産を相続する際の問題点

不動産を相続すると様々な税金や手続きが必要となるだけではなく、いくつか問題点が挙げられます。

たとえば

  • 不動産が1つで複数の相続人がいる場合の分割方法
  • 相続財産が不動産のみで相続税が払えない場合

相続人が複数いる場合の不動産の分割方法

被相続人が所有していた不動産が1つで複数の相続人がいる場合、問題となるのは不動産を含めた遺産の分割方法(分配方法)です。遺産の分割方法は以下の4つがあり、遺産分割協議の際に相続人全員で具体的に分割方法を決める必要があります。

たとえば、不動産を残したいのであれば現物分割・代償分割・共有分割のいずれかを選択、財産を均等に分割するなら換価分割・代償分割・共有分割のいずれかを選択することとなります。遺産総額・相続人の資産・不動産の今後の利用状況を含め、ご家族にベストな分割方法を選択しましょう。

不動産のみ相続して相続税が払えない場合

「現物分割で不動産のみ相続した場合」や「遺産のほとんどが不動産だった場合」など、相続税が払えないケースもあるかと思います。相続税は相続発生の翌日から10ヵ月以内に、金融機関や税務署で現金一括での納税が原則です(近年はクレジットカードによる納付も可能です)。

仮に手元にお金がなくて相続税が払えない場合、不動産を売却して納税資金を確保する、もしくは延納の申請が必要になります

相続税には物納制度もありますが、不動産は時価より低い金額で評価されてしまう上、手続きも複雑なので現実的ではありません。また、相続税が払えないからと、相続税の申告や納付を放置することは絶対に避けてください。相続税の納税期限を過ぎるとペナルティが課せられ、余計な税金を支払うことになります。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください