不動産オーナーに人気の<相続税対策>に潜む、2つの落とし穴【弁護士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年12月20日 11時15分
![不動産オーナーに人気の<相続税対策>に潜む、2つの落とし穴【弁護士が解説】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_58001_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
昨今は高齢化に伴う相続件数の増加により、相続に関する生前準備の重要性が広まり、「自分ごと」として取り組む親世代・子世代が増えています。しかし、どれだけ周到に事前対策をしたとしてもそこは人の命とお金に関わること――思い描いたとおりになりにくいのが、相続の難しいところです。日本橋中央法律事務所の山口明弁護士が、実例を交えて解説します。
不動産オーナーに人気の節税対策は「長生き」がリスクに
不動産オーナーが家族のために行う節税対策として「更地にアパートを建築し、アパートローンを組んで財産評価額を圧縮することで、相続税の課税額を減額し節税を狙う」というものがよくあります。
相続発生と竣工のタイミングが合えば効果てきめんですが、都合よくタイミングがリンクするとは限りません。「私もそろそろ……」と対策するも「その後、想定以上に長生きして節税効果が得られなかった」(不謹慎な話ですが……)というケースはしばしば起こります。
家族からすれば、高齢の親を抱える傍ら「無理して建て替えなければよかった……」ということになります。
また、この方法には財産評価額が減りすぎてしまうという逆リスクが潜んでいます。アパートを建築して財産評価額の圧縮を狙ったつもりが、エリアが悪く、持ち主に利益のない「負動産」になってしまうという場合があります。建物を建ててしまったがために身動きが取れず、売却しようにも業者に足元を見られ……となればまさに最悪の事態です。
手軽で人気の自筆証書遺言は「日付の記載漏れ」に注意
昨今は遺言書の重要性が以前に比べて周知されるようになりました。遺産を残す予定の人が、遺産を相続することとなる家族に向けて内容を考え抜いて書き上げる遺言書。労力や費用面から、公正証書遺言ではなく、自筆証書遺言を選択する方が少なくありません。ところが必須の記載事項に漏れがあり「効力を発揮できない」というケースが多々あります。
プロの目が通らない自筆証書遺言は「日付の記載漏れ」等、ごくごく基本的な部分を見逃すことがあるので十分に留意が必要です。
介護を引き受けたのに謂れのない使い込み嫌疑をかけられ……
複数のきょうだいがいるファミリーは、きょうだいのうち1人が親の介護を引き受けていることがしばしばあります。きょうだいそれぞれ「親の介護」に対する認識が大きく異なっていることが相続発生時に露呈し、意見が食い違うことも。
たとえば、介護を引き受けてきた子どもは「大変な介護をしていたのだから、相続の取り分は多くて当然」と考えます。一方で、介護をしていなかった子どもは「親のお金を好き勝手使ったに違いない」などと考え、いさかいへと発展することは珍しくありません。
法律的には、寄与分が考慮されることはあまりなく、介護をした子どもが期待外れな思いをするパターンが多いです。それどころか、使い込みの嫌疑をかけられ悔しい思いをさせられることすらあります。
筆者はこれまで「これほど親に尽くしても、寄与分が考慮されないのであれば、最初から遺言書の作成をしてもらえばよかった」「親のために、これまでたびたび自腹を切っているのに……。使い込みを疑われるくらいなら、介護などしなければよかった」と悲しむ依頼者をたくさん見てきました。
親のお金が数千万単位で使い込まれた?真偽は「藪の中」
使い込みを疑われて悔しい思いをするケースについて触れましたが、実際に親の預金を1人が使い込み、ほかのきょうだいが追求し切れずに悔しい思いをする……というケースもあります。
親と同居しているきょうだいに、親の身の回りの世話だけでなく、親の財産管理を依頼していたという場合に起こり得ます。「相続発生後にお金の流れを確認したところ、数千万円単位で使途不明金が発覚する」などはよくある話です。
この場合、裁判をしたところで使途不明金が承認されるケースは滅多にありません。よほど極端な使い方をしない限り、法律の視点では「ある程度は仕方ない」という認識がなされることが多く「使ったもの勝ち」となりやすいのです。
理由の1つとして、そばにいる人が「権限の範囲外でお金を使った」ことの立証が容易ではないことが挙げられます。それを立証しない限り、裁判で勝てません。
筆者がこれまで見てきた「使い込み金額」のうち7,000万円、8,000万円というレベルは珍しくありません。しかし実際、法律の現場では「立証して裁判に勝つのは相当厳しい」というのが率直な印象です。
亡くなった方の生活スタイルから推察したとき「生活費にしては多いのではないか?」と思うことがあります。「これまで堅実に暮らしていたのに、急に年間2,000万円も3,000万円も使うわけないのでは?」と思ったとしても、それを立証できずに勝てない……という裁判は、相当あるでしょう。
資金援助した家で二世帯同居するも子ども家族と不仲になり…
最後に、まあまあよくある事例を紹介します。子どもがマイホームを建てるときに親が資金援助して二世帯で住んでいたが、折り合いが悪くなってしまい「出てけ!」と言われる。親からしたら「お金を出しているのに何でこっちが出ていくんだ!」となる。「お金が……」「権利が……」という主張はありながらも、感情の部分でどうしてもその場を去らざるを得ないというジレンマを抱えてしまうケースです。
こうした事態に陥らないために、仲が悪くなったときのことを法律的に担保する必要があります。たとえば、負担付き贈与という制度があります。
負担付き贈与制度とは
この法律の仕組みは「5,000万円ぐらいのマイホーム建築資金を子どもに援助します」というときに、「5,000万円あげる代わりに、終生までこの家で面倒見てください」「もしもその負担が不履行になったら、この贈与は解除しますよ」とするものです。
これをすることで、多少気に食わないことがあっても「出てけ」とは言いにくくなります。出ていかせようもなら、贈与されたお金を返さなければならないからです。人間はデメリットがあれば、多少嫌なことがあっても、大抵のことは我慢するものです。
負担付き贈与について子どもに言い出しにくいという人は、贈与をする前に弁護士を間に入れて「そういうのはきっちりしといた方がいいかな?」と伝えることをお勧めします。法律の抑止力を活用することで、老後の貧困や破産を減らすことができます。
山口明 日本橋中央法律事務所 弁護士
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