豆本来の味を楽しむためには「湯の注ぎ方」が大切!もっとおいしくコーヒーを飲むコツ【専門家が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月2日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
コーヒーをドリップするときの正しい湯の「注ぎ方」を知っていますか。湯を注ぐ回数、位置、太さ、角度のどれにも、美味しいコーヒーを淹れるためのコツがあります。家庭でも挑戦できる美味しいコーヒーの淹れ方について、著書『至高のコーヒーの淹れ方』(エクスナレッジ出版)より、畠山大輝氏が解説します。
湯の「注ぎ方」で豆の実力を引き出す
豆の成分がお湯の中に移動する
ドリップの際のお湯の注ぎ方についてお話しします。
まず、お湯を注ぐ回数ですが、「基本のレシピ」では5回に分けて注湯を行います。
1投目で粉に蒸らしのお湯を注ぐと、粉とお湯が混ざった状態になります。そこに2投目、3投目と注湯を繰り返すと、その都度、粉が撹拌されます。この撹拌の中で、豆の中にある成分がお湯の中に溶け出し、重力によって滴下していきます。
前にも述べたとおり、豆から溶け出しやすい成分は、時間経過によって異なる(順番がある)ので、撹拌と滴下を繰り返すことで、メリハリのある抽出を行うというわけです。
ちなみに「基本のレシピ」では、2投目までに全体の半分の量のお湯を注ぎ終えます。これは、前半に抽出される成分が味わいに大きな影響を与えると考えるからです。
真ん中の層にしっかりとお湯を注ぐ
次はお湯を注ぐ位置についてです。コーヒーにお湯を注ぐときは、粉面の真ん中あたりから「の」の字を描くように回し入れるというイメージを持っている人が多いと思います。そのほうが粉全体にお湯が行き渡りやすいためで、ドリッパーの形状に関わらず、基本的にこの方法で間違いはないでしょう。
「基本のレシピ」では、円すい型のドリッパー(フラワードリッパー)を使っています。まず真ん中にお湯を注ぎ、そこから円を描きながら外側のほうに円を広げていきます。外側までいったら、今度は真ん中に戻るように円を小さくしていきます。1投目の蒸らしから5投目まで、基本的にこの動きを繰り返します。
前述しましたが、この注ぎ方は、真ん中にいくほど粉量が多くなる円すい型の中で、効率よく撹拌を起こして抽出にばらつきが出ないようにするためです。特に円すい型のドリッパーは、台形型のドリッパーなどに比べて真ん中の粉の層が厚いので、下のほうまで十分にお湯が行き渡るようにしっかりと注湯してやることが大切です。
お湯の太さを意識しながら注ぐ
注湯するときのお湯の太さは、「流量」や「流速」という言い方もします。
注ぐお湯が太ければ、それだけ単位時間当たりのお湯の量は増えます。逆に、細く注げば単位時間当たりのお湯の量は少なくなります。
お湯の量が増えるということは、それだけ勢いよく粉面にお湯が流れ込むことになるので、ドリッパー内で意図しない撹拌が起こったり、粉面の1部に穴が開くような現象が起こったりします。そうなると、粉全体からまんべんなくおいしい成分を引き出すことはできず、薄い液体のまま、下のサーバーへと落ちていく分も多くなります。
それならば、お湯は細く落とすほどいいのかというと、そうとは言いきれません。お湯が細すぎると、抽出に時間が長くかかってしまって余計な成分が抽出されたり、撹拌が起きにくくて不均一な抽出になったりします。
お湯は太すぎず細すぎず、ドリッパー内で適度に撹拌が起こって、重力で自然に滴下していく範囲でコントロールするのがポイントになります。
お湯を落とす高さもポイント
ドリップポットからドリッパーにお湯を落とす高さも重要です。
まず、位置が高すぎると、粉面の狙ったポイントにお湯を落とすことが単純に難しくなります。また、高い位置から落ちていく途中で、空気抵抗によってお湯が水滴状に広がってしまい、粉面の1点ではなく、やや広い範囲にお湯が当たってしまいます。
一方、低い位置から落とす場合は、粉にやさしく撹拌を起こすことができます。粉面の狙ったポイントにお湯を落とすのも容易になりますが、ポットの注ぎ口の長さや形によってはコントロールが難しくなる場合があります。
私が普段ペーパードリップを行う際は、粉面から10〜20センチ程度の高さで、安定してお湯を注げる体勢を取りながらコントロールするようにしています。フレーバーを出すために強めの撹拌を起こしたいときは高めの位置から、逆に深煎りの豆を使う場合など、撹拌をあまり激しくしたくない場合は、やや低めの位置から細めの流速でやさしく落とすなど、目的に合わせて使い分けています。
お湯を注ぐ角度はできるだけ垂直に
ポットから注ぐお湯の角度は、粉面に対してできるだけ垂直に近い状態が理想です。
粉面に対して入射角がありすぎると、それだけ狙った場所に撹拌を起こすことが難しくなるだけでなく、水流に勢いがつきすぎて、手前から奥に向かって粉面が崩れたりえぐれたりしやすくなります。
お湯を垂直に近い状態で落とすためには、お湯の勢いを強くしすぎないこと。軽く傾けた状態で、注ぎ口から出たお湯が自然に落下するようにコントロールします。そのためにはポットの中のお湯は、適切な量を入れておく必要があります。
ただし、お湯が多めに入ったポットは重くなります。その重さを支えられないと、途中で疲れてしまって、望み通りの注湯ができなくなります。そんな場合は左手でポットのふたを押さえたり、可能ならばポットの下に左手を添えたりできると、安定しやすくなります。あとは、きれいに垂直にお湯を落とせるように、空のドリッパーに向かって練習を重ねるのも上達の早道です。
畠山 大輝
Bespoke Coffee Roastersオーナー
コーヒー焙煎士/コーヒー抽出士
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