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年金月14万円の65歳男性、テレビに向かって思わず「羨ましい」…増える〈高齢者の生活保護受給〉に恨み節【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年2月20日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省によると、65歳以上の生活保護受給者は増加し続けているそうです(2022年6月3日公表:生活保護制度の現状について)。一方、生活は苦しいけれど生活保護を受けていない(または受けられない)高齢者もいます。そこで、生活保護の受給資格や各種保険、その他国・自治体の制度について、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが具体的な事例を通して解説します。

自身の定年後、父が要介護に…「万全の準備」を進めたAさん

高校卒業後は地元の工場に就職し、定年まで真面目に働いてきたAさん。給与が高いわけではありませんでしたが、ひとり息子のAさんは実家住まいだったこともあり、家に毎月約10万円入れながらコツコツ貯金。そのかいあって、60歳で定年退職したときには、退職金を含めて預金が2,000万円ほどになっていました。

定年後は、熱中する趣味こそなかったものの、両親が自宅の庭に作った家庭菜園の世話をしたり、両親の病院や買い物の送迎、地元の消防団に顔を出したりと、なにかと忙しい日々を送っています。

そんなある日のことです。3年前、87歳になる父が、自宅の敷居につまずいて転倒。右足の大腿骨頸部を骨折してしまったのです。すぐにD病院に入院し、急性期の手術と治療を受けることになりました。

術後1週間で容態が落ち着いたため、こんどはE病院の回復期リハビリテーション病棟に転院し、リハビリに励みました。

E病院の主治医からは、Aさんに対し次のような申し伝えがありました。

「この病院に入院できる期間は、お父様の場合最大60日です。また、退院後も、継続的にリハビリに通っていただく必要があります」。

また、「認知症が疑われるので、脳神経内科で診察することをおすすめします」と言われたAさんは、父を連れて早速受診。検査の結果、初期の認知症と診断されました。

骨折+認知症で介護が必要になりそうだと思ったAさんは、父の退院後の準備のため、E病院内の「医療ソーシャルワーカー」や、自治体の「地域包括支援センター」に相談。 ※ 医療ソーシャルワーカー……患者や家族の相談に乗り、社会復帰を支援してくれる。

アドバイスをもとに、父が入院中に早速「要介護認定の申請」をし、「要介護度2」との認定を受けました。

認定後は、居宅介護支援事業者の介護支援専門員(ケアマネージャー)が、医師や看護師、リハビリスタッフや父、Aさんや母から現状や要望を聞き、介護保険サービスを受けるための計画書(ケアプラン)を作成。

また、自宅の玄関や廊下、洗面所、浴室などの段差をなくし、車いすで移動できるように、スロープや手すりを付けるなど、自宅のリフォームも実行。父の退院のために万全の対策を施しました。

「保険」や「国の制度」を上手に活用したAさん

こうした対策に、たくさんのお金がかかったことはいうまでもありませんが、Aさんは、保険や自治体の制度を上手に活用しました。

病院への支払いは、後期高齢者医療制度の高額療養費や、父の終身保険(死亡保険金は1,000万円で、保険料はすでに支払い済み)の医療特約の入院、手術給付金によってほとんど完了している状況です。

また、自宅の改築も、介護保険と自治体の「住宅リフォーム支援制度」によって、それぞれ20万円ずつ補助を受けられたため、かかった約200万円のうちAさんの負担は約162万円となりました。この費用は、Aさんが自身の貯蓄から支払いました。 ※ 手すりの取り付けや段差の解消など、介護に必要な住宅改修を行った場合、「介護保険」を利用して費用負担を減らすことができる。ただし、20万円の限度額が定められており、今回のケースでは父は1割負担だったため、20万円補助のうち1割負担→18万円が負担軽減されたことになる。

そのほか、入院中に細々した支払いがあり、父の貯蓄は5~60万円ほど減ったそうです。

退院後の父の「ケアプラン」通りでの介護費用

ケアマネージャーが作成した退院後の父のケアプランでは、週2回のペースでデイケア(通所リハビリテーション)に通うことになっていました。なお、デイケアのない日は、Aさんや母が介護を担います。

要介護度2の場合、在宅介護サービスの利用限度額は毎月19万7,050円で、父の場合はその1割の1万9,705円が自己負担額になります。

しかし、実際にこのケアプランを実行したところ、毎月の費用は約6万円でした。これは、利用する介護サービスの支払限度額を超える分は「全額自己負担」となるためです。 ※「要介護度2」の月額費用平均(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は6万6,000円(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度より)

「老老介護」を実感…心身限界のなか目に飛び込んできた「ニュース」

それから3年が経ち、Aさんは現在65歳、父は90歳、母は87歳になりました。

父はなんとか自分の足で歩けるようにとリハビリに励んでいますが、外出時は必ずAさんかヘルパーが付き添い、車椅子が手放せなくなっています。

また自宅での入浴や着替えなど日常生活にも介護が必要になり、要介護度も「3」に上がり、介護費用の負担も増えました。

現在のAさんと両親の収入と貯蓄は次のとおりです。

父の介護費用は父の年金からまかない、また3人の生活費は、菜園で収穫する野菜などを活用しながら、なんとか貯蓄を取り崩すことなく生活できています。

しかし、Aさんは65歳。父を自宅で介護するには、体力的にも精神的にも限界が来ています。「これが『老老介護』か……しんどいな」。Aさんは、自宅付近で父が入居できるような介護施設を調べてみました。すると、入居一時金は50万円前後、毎月の費用は15~20万円かかる施設が多いようです。いまより2倍~3倍のお金がかかります。

父を介護施設に入れたいものの、高齢の母も心配であるほか、自分自身の老後資金も残しておきたいAさん。「お金がいくらあっても足りないや。どうしたらいいのだろう……?」

それからAさんは、毎日のようにお金をどうするか考えあぐねていました。そんなある日の朝のことです。テレビで、「高齢者の生活保護受給が増えている」というニュースを目にしました。

生活保護を受ければ、介護が必要になってもお金を気にせず生活できるってこと? これまで真面目に生きてきた自分はこんなに苦労しているのに……羨ましい」。Aさんは思わずひとり言をこぼします。

今後の資金繰りについて誰かに相談したいと思ったAさんは、知り合いである筆者のFP事務所を訪ねることにしました。

国民の権利である生活保護…受給資格は?

Aさんは会うなり、筆者に「父は生活保護が受けられるでしょうか?」と尋ねます。そこで筆者は次のように、Aさんの現状に即して生活保護制度の概要を説明しました。

「生活保護制度」とは、厚生労働省によると「健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する制度」とされています。誰しもこの制度を利用する権利は持っていますが、

・働くことが可能であれば働く

・年金や手当など他の制度で給付を受けられるなら、まずそれらを活用する

・親族等から援助を受けることができれば援助を受ける

といった前提をまず試し、それでも生活が苦しい(援助が受けられる身内がいない、働いても収入が少ない、持ち家や車などを所有していないなど)場合にのみ支給されます。

厚生労働大臣が定める基準で計算される「最低生活費」と「収入(就労、年金、親族の援助など)」を比較して、収入が最低生活費に満たない場合、その分を「保護費」として「世帯単位」で支給されます。

生活保護費には、生活扶助(食費・被服費・光熱費など日常生活に必要な費用)、住宅扶助、教育扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8つの扶助があります。

生活保護を受ければ、健康保険料や65歳以上の介護保険料は「生活扶助」となり、介護サービス費は「介護扶助」で賄われて自己負担はなくなります。また受け入れ可能な介護施設も存在します。

なお、生活保護の相談窓口は、地域の社会保険事務所となります。

“残念ながら、生活保護は受けられません”

Aさんの実家は持ち家です。つまり父は、自宅の土地建物といった資産を所有しています。売却すれば、周辺の物件と比較して諸経費など差し引いて約4,000万円の譲渡益が入ります。したがって、Aさんの父は現状生活保護を受けることはできません。

家族全員高齢者…A家の「最善策」は

在宅介護の背景にあった「父のこだわり」

とはいえ、在宅介護が苦しいと話すAさん。次に、父の介護や両親の生活の問題にフォーカスを当ててみましょう。

退院後、高齢者施設に入れずに在宅介護になった背景には、父の「こだわり」がありました。父は以前から、「たとえ寝たきりになっても俺は自宅にいたい」と家族に伝えていたそうです。

介護がつらく、Aさんは何度か父に施設を勧めたこともありましたが、母も「お父さんが家にいたいと言っているんだし、ヘルパーさんの手を借りながら自宅で頑張りましょう」となだめます。両親の考えはいまも変わっていないそうです。

しかし、もし今後、父の介護度が要介護度5※1まで進んだ場合、在宅であっても月額の介護費用は10万6,000円※2必要です。支出額がいまより増えると、年金収入だけでの生活は厳しく、貯蓄を取り崩すことになりかねません。

※1 要介護5の居宅介護サービスの利用限度額は1ヵ月36万2,170円。3万6,217円は自己負担(1割の場合)。 ※2「要介護度5」の費用平均月額(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む、生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度より)。

また、要介護度5の方を在宅で介護するには限界があります。

そこで、Aさんのお考えどおり、要介護度3のいまのうちに、介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム(特養)に入居する準備が必要かもしれません。

バブル期に契約した“お宝”終身保険が活用できる

資金面は、現在Aさんも両親も、死亡保険金1,000万円医療特約付きの終身保険に加入しています。この保険はいわゆる“お宝保険”といわれる、バブル時代から1990年前半に契約した予定利率の高い保険です。

被保険者が死亡したときは、通常相続人が死亡保険金1,000万円を受け取ります。

また、保険会社に確認が必要ですが、解約したら死亡保険金と同額の1,000万円またはそれ以上の解約返戻金が受け取れる可能性もあります。そこで、父の終身保険をこのタイミングで解約して、解約返戻金を施設入居の資金に活用するのもひとつの手です。

また、87歳の母は、いまは健康であっても注意が必要な年齢です。ただし、母が病気などで入院しても、母も終身保険に加入していますので、父が入院したときと同様費用の心配はあまりありません。

また母の介護費用が必要になったときは、母も終身保険(保険金1,000万円)を解約してもいいでしょう。なお、それまでに万が一父が亡くなっていたら、母は遺族厚生年金と自分の年金で約199万7,100円(月額16万6,425円)受給できます。

ただし、この終身保険を解約すると、医療給付などの特約も解約されます。入院したときの終身保険からの入院給付はなくなりますが、父と同様に後期高齢者医療制度の高額療養費が、また介護保険でも、所得によって自己負担額の上限が決まっている制度もあります。

筆者の話を聞き、落ち着きを取り戻したAさん

またAさんは現在独身ですが、このまま単身で生活する人生設計なら、自宅の土地も建物も広すぎ、固定資産税など経費も生涯かかります。

そこで、両親が亡くなったあとは、自宅の土地建物を売却してその資金で、生涯住めるマンションや平屋の住宅を借りるか、購入してもいいでしょう。

筆者がここまで話すとAさんは、「そうか、必ずしも自宅に住まなくてもいいんだ!」と、勝手に自縛していた人生に気づき、両親の面倒を見ることも気が楽になったそうです。

生活保護を必要としている人も、現状を打開する手段として断腸の思いで利用しているのであり、生涯、生活保護の状態で終わることはないでしょう。「一瞬でも、生活保護を羨ましいと思ってしまった自分を恥ずかしいです」。Aさんはそう言い、苦笑いしたのでした。

牧野 寿和 牧野FP事務所合同会社 代表社員

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