腸内フローラを変えるために欠かせない食物繊維だが…〈水溶性〉と〈不溶性〉を区別することに意味はないと言い切れるワケ【医学博士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 10時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
腸内フローラを変えるためには腸内細菌のエサである食物繊維を摂ることが大事です。食物繊維は、水溶性と不溶性に区別されますが、長年腸内細菌を研究し続けている医学博士の内藤裕二氏は、区別することに意味はないと言い切ります。そこで、内藤氏の著書『70歳からの腸活』(エクスナレッジ)から一部抜粋して、日本人に不足しているとされる食物繊維について解説します。
米に含まれる食物繊維も無視できない
腸内フローラを変えるには、腸内細菌のエサである食物繊維を摂ることがもっとも重要です。
腸活に関心のある方なら、食物繊維が野菜やきのこ、果物、海藻などに含まれていることをご存じでしょう。
しかし実はそれだけでは十分な量の食物繊維が摂れていない可能性があります。
というのは、食物繊維の大事な供給源であるお米(穀物)を摂らない人が増えているからです。
メタボの予防などで、炭水化物を制限するダイエット法のブームが続いています。
そのやせる効果については、私は申し上げる立場にはありませんが、炭水化物を制限するということは、主食であるお米を食べないことになります。
玄米に比べると白米は食物繊維が少ないのですが、最近の測定法で
それに昔は少ないおかずで、白いごはんを何杯も食べていたので、それだけでもかなりの食物繊維が摂れていたと考えられます。
野菜や海藻などはおかずです。たくさん食べようと思っても限度があります。やはり、主食であるお米に含まれる食物繊維を無視してはいけません。
ただ主食から摂る食物繊維を増やしたいのであれば、白米よりも、玄米や胚芽米、雑穀米などを食べることをお勧めします。
食物繊維に関しては、もう1つ大事なことがあります。それは酪酸菌を増やすには食物繊維を摂取するしか方法がないということです。
酪酸菌を配合した整腸剤を摂っても酪酸菌そのものは増えていきません。
これはビフィズス菌や乳酸菌についても同じですが、発酵食品に含まれる菌を食べても、その菌が腸内で増えることはありません。ただそれらの菌がつくり出した成分が腸内環境に影響を与えるので、有用な菌が入ったヨーグルトなどを食べることには意味があります。
いずれにしても、「長寿菌」や「第3の善玉菌」とも呼ばれる酪酸菌を増やしたいのであれば、食物繊維を摂ることが一番大事だということです。
日本人に今不足している栄養素は、カルシウムと食物繊維だけといわれています。
腸内フローラを変えたいのであれば、主食のお米はもちろん、野菜や海藻などからしっかり食物繊維を摂ってほしいと思います。
水溶性、不溶性は気にしなくていい
厳密にいうと、食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類に分けられます。
水溶性食物繊維は水に溶ける成分で、例えばコンブを水に漬けると出てくる、ぬめり成分などがよく知られています。
一方、不溶性食物繊維は水に溶けない繊維質の成分です。野菜などのシャキシャキした歯ごたえのある食感は不溶性食物繊維のものだといわれています。
いずれもヒトの胃や腸では消化できない成分です。不溶性食物繊維も便のカサを増やして便通をよくするといった効果がありますが、腸内細菌のエサになるのは水溶性食物繊維のほうです。
そのため、水溶性食物繊維のほうが大事だといわれていますが、両者を区別することはあまり意味がありません。
というのは、食物繊維を含むほとんどの食品は、水溶性も不溶性も両方含んでいるからです。
また厚労省の栄養摂取基準は、以前は水溶性と不溶性に分けていましたが、現在はそれをやめています。
食事から摂る食物繊維は、どちらかというと不溶性食物繊維のほうが多いのですが、一方だけを含む食べものというものはありません。
ですから、私は水溶性食物繊維が豊富な食べ物というイメージで分けないほうがよいと思います。食物繊維が豊富な野菜やきのこ、果物、海藻などを意識して摂っていれば、水溶性食物繊維も必然的に摂れるのです。
水溶性食物繊維を摂ると、酪酸菌や乳酸菌、ビフィズス菌などのエサになり、それらの菌が増えて、腸内フローラが改善されます。というよりも、多様性のある腸内フローラになるといったほうが正しいでしょう。
酪酸などの短鎖脂肪酸を産生する腸内細菌は、おそらく多様な菌がお互いに助け合って、お互いが生き残れるように働いていると考えられるので、そもそも1種類の菌だけを増やすエサというのは存在しません。
また酪酸菌を増やすには食物繊維を摂るしかないといいましたが、食物繊維は酪酸菌だけを増やすわけではなく、乳酸菌やビフィズス菌なども増やして、多様な腸内フローラに変わっていくと考えられています。
内藤 裕二
京都府立医科大学大学院医学研究科
教授/医学博士
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