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月8万円負担が増えても…「東京圏へ親を呼ぶ高学歴・中高年男性」が続出する、怖い理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月20日 16時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、高齢の親を東京圏へ呼び寄せる高学歴な中高年男性が増加しています。これには、近年の社会問題が深く関わっているようで……。日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏が管理職世代の介護と仕事の両立について、解説していきます。

介護離職の予防に向けた準備

経済産業省※1によれば、高齢化の進行に伴い、日本全体でビジネスケアラー(仕事をしながら家族の介護に従事する者)の数が増加することが予想されています。

介護離職者は毎年約10万人であり、2030年には、ケアラーのうち約4割(約318万人)がビジネスケアラーになる見込みであるとされています。特に、40代や50代になると、管理職等責任の重い仕事につき、日々忙しい毎日を送っているときに、親の介護問題に突然直面する方は少なくありません。

総務省※2によれば、東京圏の転入超過数(年齢5歳階級別)は20~24歳が最も多く(7万3,166人)、次いで15~19歳(2万186人)、25~29歳(1万9,417人)と、若い世代が多くなっています(0~4歳および55~79歳6区分は転出超過となっている)。

しかし、注目すべきは80歳以上の高齢者の転入超過数であり、2010年以降は連続で転入超過状態であることです。一見、移動が困難にみえる高齢者の転入が増えている背景には、東京圏に住む中高年の子世代が地方部に住む高齢な親を呼び寄せていると想像します。

親の介護にかかるお金の問題

生命保険文化センター※3によれば、介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1ヵ月(5年1ヵ月)、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、月々平均8万3,000円というデータもあります。

仮に、親に貯蓄などがなく、すべてを負担した場合、約500万円近くの金額を子が負担する必要ということになります。

日本総合研究所の調査※4によれば、東京圏に勤める高学歴中高年男性の年収について、1,000万円以上と回答している男性は約3割にのぼり、「600万~800万円未満」(22.1%)、「800万~1,000万円未満」(18.0%)と続く数値をふまえると、約7割が600万円以上の収入を稼いでいます。

しかし、大企業等に勤める高収入な方であっても、親の長生きのリスク、さらには自身の長生きのリスクまでも背負う必要を考えれば、介護離職を避けるための準備が必要だと考えます。

最近では、仕事と介護の両立をしやすい環境づくりに取り組んでいる職場も増えていますが、親等の介護によって離職をしてしまうことになれば、想定していた年金や退職金も目減りしてしまいます。親を近くに呼び寄せれば、仕事は辞める必要がなくなるかもしれませんが、月々8万円の負担が増えるかもしれません。

少しでも経済的負担を減らそうと自宅で仕事をつづけながら介護を行った結果、妻に介護の負担が偏り、「介護離婚」を切り出されるなど、家庭の問題が起こるリスクもあります。

「介護休業」は仕事を続けるための準備期間

そのような状況に陥らないためには、仕事と介護の両立をするという考え方に囚われないことも大切です。

育児・介護休業法※5では、要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある家族を介護する必要のある労働者のための休業制度が設けられています。対象家族1人につき、通算93日まで取得が可能で、3回まで分割を取得できます。

介護休業期間中は、一定の条件を満たせば、雇用保険から介護給付を受けることができますし、介護休暇制度の取得や、介護のための短時間勤務制度、所定外労働時間の制限が定められています。勤め先によっては、法定よりも手厚い制度が準備されていることもあります。

しかし、介護休業だけでは、介護はいつ終わるかわからず、十分ではありません。よって、介護休業は介護を行うための休業ではなく、仕事に復帰するための準備期間(注)ととらえておく必要があります。

そのうえで、家族等の介護に直面した後、仕事と両立しながら働き続けるためには、介護の問題に直面する前から、介護に関することを調べておくことがよいでしょう。

いざ介護に直面をすると、慣れないことに戸惑い、休業期間の時間をほとんど使ってしまうことになりかねません。そうならないためには、介護の仕組みや、介護が心配な家族が住む自治体の介護に関する情報を調べるなど、早めに準備できることは取り組んでおくことが大切です。

企業によっては、相談窓口を設けていたり、契約している福利厚生サービスのなかに、介護サービスがメニューに含まれているにも関わらず、従業員側がそれらを知らないこともあります。

最近では、テレワークが浸透している企業のなかには、育児だけではなく、介護を理由に遠方での勤務が認められることもあります。介護離職を判断する前に、勤め先企業の支援制度を活用できるよう、情報収集をしておくことが求められます。

(注)看取りのために休業を使われる方もおられますが、本稿では介護の準備に焦点を当てて述べています。

既定の考え方に囚われず、新しい視点を持つ

本稿では、介護について述べました。

米国の教育学者のドナルド・E・スーパーが提唱したキャリア理論「ライフ・キャリア・レインボー」では、キャリアを仕事や職業のみならず、「ライフ・ステージ」と「ライフ・ロール」(人生における役割)で示しています※6

年齢ごとにどのような役割を担ってきたか、あるいは担うことが想定をされているか、という自分の人生全体を可視化※7してみると、介護という役割に対しても、違った見え方ができるかもしれません。

参考 ※1:経済産業省「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)」 ※2:https://www.stat.go.jp/data/idou/index.html ※3:公益財団法人生命保険文化センター ※4:東京圏で働く高学歴中高年男性の意識と生活実態に関するアンケート調査結果(報告) ※5 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/ ※6:参考文献 「キャリアコンサルティング理論と実際 6訂版」木村周・下村英雄著 一般社団法人雇用問題研究会 ※7:参考文献 厚生労働省『平成 29 年度労働者等のキャリア形成における課題に応じたキャリアコンサルティング技法の開発に関する調査・研究事業』ジョブ・カード様式1作成ワークシート

小島 明子 日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト

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