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日銀マイナス金利解除に戦々恐々…世帯年収800万円の30代共働き夫婦、が絶句した「5年後の住宅ローン返済額」【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月22日 14時30分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年3月19日、日本銀行は金融政策を決める会合で、マイナス金利政策を解除する見直しを決定しました。マイナス金利解除で多くの消費者が最も気になる点としては、今後、住宅ローン金利がどうなるかというところでしょう。本記事では、Aさんの事例とともに金利の付く世界における変動金利について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。

「金利は上がらない」って言ったのに…“金利の付く世界”を知らない30代夫婦の不安

Aさん夫婦は33歳で同い年、世帯年収800万円の共働きです。昨年、35年の変動金利型ローンを利用してマンションを購入しました。しかし、日本銀行の3月19日のマイナス金利解除決定のニュースを聞いて、戦々恐々としています。

「借りたときは、日本は金利なんて上がらないですよ、って言われたから勧められたローンをそのまま契約したのに、ひどいよ」とAさん夫婦は言います。

日本の住宅ローン金利は30年以上も前から下がり続け、Aさんのような若いご夫婦には、住宅ローンの金利が5%や6%の時代があったことは信じられないでしょう。ですが、金利については、いつ、どうなるか、なんてわかりません。「絶対、上がらない」とは断言できないのです。

いえることは、いままでのローン金利が底だった、ということです。底だったので、上がることはあってもこれ以上下がることはありません。そのため、「万が一、上がったら」ということを考えて計画しないといけません。

金利の基礎知識

日本の金利が諸外国よりも低いと円安になります。円安になると、食料品などの輸入品の価格が上がります。日本の金利が上昇すると、円高になって物価は落ち着くかもしれませんが、ローンの返済額は増えます。悩ましいところですね。また、債券価格も金利に影響します。たとえば、国債の価値が下がってしまうと、金利は上昇するのです。

住宅金融支援機構が公表した「住宅ローン利用者の実態調査」によると、利用した住宅ローンの金利タイプは、

・変動金利型……74.5% ・固定期間選択型……18.3% ・全期間固定型……7.2%

となっており、変動金利型ローンの根強い人気がわかります(2023年10月調査 2023/4-2023/9)。変動金利型ローンを選択する理由としては、やはり金利の低さが魅力で、それにより借入可能額が大きくなることです。

マンション価格の高騰は続いており、建築材料や人件費も上がっていますから、住まいを手に入れるには高いハードルとなっています。少しでも借入額を大きくしたり、返済額を少なくしたりするために変動金利型を選択する人も多いのでしょう。

さて、Aさん夫婦の住宅ローンの返済額はどのくらい変わるのでしょうか。変動金利型ローンの特徴を押さえて、いろいろとシミュレーションしてみましょう。

変動金利型ローンの特徴

変動金利型ローンでは、半年に1度の金利の見直しが行われます。そのため、金利上昇局面では、半年ごとに返済額がアップしていってしまいます。

そうなると、返済が滞るような家庭が出てくる恐れもあります。そこで返済が滞らないように、変動金利型の住宅ローンには「5年ルール」や「1.25倍ルール」というものが存在します。

一見、よさそうなルールですが、デメリットも隠れています。こういったルールのメリット・デメリットもしっかり理解して利用するようにしましょう。

5年ルール

どんなに金利が上昇しても、返済額は5年間は変わらない、というルールです。しかし、返済額は5年間変わらないとしても、金利は必ず半年ごとに見直されます。そのため、返済額は変わらないとしても、返済額の内訳、つまり元金と利息の金額が変わってきますので、注意が必要です。

返済額はそのままでも、元金部分が小さくなりますので、いわゆる「借金がなかなか減らない」という状況になります。具体的に見ていきましょう。たとえば、住宅ローンの返済がスタートしたあとの2年後に金利が上昇したケースでご説明します。

(例)借入金額4,000万円 35年ローン ボーナス返済なし

■金利0.5%で借り入れ 毎月の返済額:10万3,834円  (初回の内訳 元金部分:8万7,167円 利息部分:1万6,667円)

■2年後(返済25回目)に金利1.0%に上昇

本来であれば、

毎月の返済額:11万2,399円  (25回目の内訳 元金部分:8万817円 利息部分:3万1,582円)

となるのですが、5年ルールの適用で、

毎月の返済額:10万3,834円 (返済額はそのまま) (25回目の内訳 元金部分:7万2,252円 利息部分:3万1,582円)

となります。

説明を聞いたAさん夫婦は絶句しました。Aさん夫婦が恐怖を感じるのも当然です。5年ルールでは、返済額はそのままに抑えられても、内訳の利息部分は金利が上昇した分は元金よりも優先してしっかりと取られていくことになります。つまり、元金の返済が先送りになってしまうのです。

これにより、将来、ふたたび金利が下がったとしても「返済額が減らない」ということもありうるのです。

125%ルール

実際の返済額は5年ルールによって5年間は同じ返済額で抑えられますが、その後に返済額が急上昇した場合は、やはり返済が滞ってしまうリスクがありますので、返済額が上がっても1.25倍までに抑えよう、という「125%ルール」があります。

ですが、この125%ルールも5年ルールと同様に、利息は優先してしっかり取られることが前提となっています。具体例でみていきましょう。

たとえば、住宅ローンの返済がスタートしたあとの7年後に金利が上昇したケースでご紹介します(ボーナス返済なしで計算しています)。

(例)借入金額4,000万円 35年ローン 

■金利0.5%で借り入れ 毎月の返済額:10万3,834円  (初回の内訳 元金部分:8万7,167円 利息部分:1万6,667円)

■7年後(返済85回目)に金利3.0%に上昇

本来であれば、

毎月の返済額:14万3,306円  (85回目の内訳 元金部分:6万1,932円 利息部分:8万1,375円)

となるのですが、125%ルールの適用で、

毎月の返済額:12万9,793円(10万3,834円の1.25倍) (85回目の内訳 元金部分:4万8,418円  利息部分:8万1,375円)

となってしまい、元金の返済が大幅に減ってしまいます。このように、カットされるのは元金部分だけとなりますので、返済額がアップしても、住宅ローン残高はなかなか減らない、という状況に陥ってしまいます。

なお、いくら返済額が抑えられるとしても、5年ごとに1.25倍ずつ返済額が上昇していくのは、家計にとってはかなり厳しいのではないでしょうか。もし、連続で1.25倍に返済額がアップした場合、たとえば、毎月10万円だった返済額は、5年後には12万5,000円、さらにその5年後には15万6,250円になるということです。

こういったことも考えて、いくらまでなら家計の負担にならないかを考えておいたほうがいいでしょう。

最悪のケース「未払い利息」

それでは、金利が大幅にアップした場合はどうなるか、試算してみましょう(ボーナス返済なしで計算しています)。

(例)借入金額4,000万円 35年ローン 

■金利0.5%で借り入れ 毎月の返済額:10万3,834円  (初回の内訳 元金部分:8万7,167円 利息部分:1万6,667円)

■3年後(返済37回目)に金利4.0%に上昇

本来であれば、

毎月の返済額:17万227円  (85回目の内訳 元金部分:4万7,430円 利息部分:12万2,797円)

となるのですが、5年ルールにより、

毎月の返済額:10万3,834円  (85回目の内訳 元金部分:0円  利息部分:10万3,834円)

と、元金部分はゼロ、返済額の全額が利息のみとなってしまいます。しかし、本来支払わないといけない利息部分は10万3,834円ではなく、12万2,797円です。

払えなかった差額の利息分1万8,963円はどうなると思いますか? 金融機関がサービスしてくれるわけではありませんよ(金融機関も「商売」です!)。

差額の1万8,963円は後日支払うべき金額として、元金と同様に先送りとされてしまいます。つまり、いつかは必ず払わないといけない金額となるのです。これを「未払い利息」といい、変動金利型ローンでは一番怖いケースになります。本来はこの「未払い利息」のリスクまで理解して、変動金利型ローンは利用するべきなのです。

5年ルール・125%ルールは「時代遅れの制度」

なかには、「そんなに金利は上がらないよ」と思っている人もいらっしゃるでしょう。しかし、これまでの住宅ローンの超金利は「マイナス金利政策」と「金融機関同士の住宅ローン競争」からきているものでした。マイナス金利が解除されることで、今後一部の金融機関が金利を上げるなどしだすと、ほかの金融機関も追随して上げていく可能性がないとはいえないのです。

数十年という長期間の住宅ローンでは、今後金利が上昇すると返済額が増えることも考えて、あらかじめ余裕資金などの貯えをしておく必要があります。変動金利型ローンを利用する場合は、  

・固定金利型ローンと併用する ・借入期間を短くする ・借入金額を小さくする

というように、変動金利型ローンのリスクを抑えるようにしましょう。

以上のように、変動金利型ローンの5年ルールや125%ルールは元本や利息の先送りを発生させる危険性があり、将来の返済額が増えてしまうデメリットがあります。昔の「年功序列」のように、会社に居続ければ収入が右肩上がりで上がっていく時代は終わりました。

勤め続けることで収入が上がるのであれば、住宅ローンの返済額が上がっても怖くはありませんが、いまの時代のように能力や成果が重視されるようになってくると、将来のローンの返済額アップは不利になります。つまり、5年ルールや125%ルールは、ローン契約者にとっては問題点のある「時代遅れの制度」ともいえるでしょう。

こういった理由からか、変動金利型ローン商品で、5年ルールや125%ルールを採用しない金融機関も出てきました。

変動金利型ローンをすでに利用している方やこれから利用しようと思っている方は、5年ルールや125%ルールを採用しているローンかどうかを確認しておきましょう。

もし、これらのルールがないローンの場合は、半年に1度の金利見直し(ほとんどの銀行で4月と10月の年2回、適用金利の見直しが行われます)で、返済額が上昇してしまうので、元金返済の先送りはありませんが、注意が必要です。

まずは、返済額がどのくらい上がるのか、どのくらいまでの上昇なら耐えられるのか、いろいろとシミュレーションしてみてくださいね。

川淵 ゆかり

川淵ゆかり事務所

代表

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