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部下を励ますための「不幸自慢」は“逆効果”…落ち込んでいる部下に上司がすべき「声かけ」のコツ【マネジメントのプロが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月15日 11時0分

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誰しも仕事で落ち込むことはあります。部下が落ち込んでいるとき、上司はどのような対応をすべきなのでしょうか。そこで今回は、横山信弘氏による著書『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)から、落ち込んでいる部下への“適切な”対応を見極めるコツについて解説します。

落ち込んでいる部下に絶対やってはいけないこと

誰だって落ち込むときはある。特によかれと思ってやったことが裏目に出たり、努力の方向性が間違っていたりしたときには、いっそう強く落ち込む。部下がこのような状態にあるとき、マネジャーはどう対応すべきか。励ますのか? それともスルーするのか?

もちろん答えは1つではない。いろいろなケースで考えるべきであろう。ただ、どんなケースであってもマネジャーがやってはいけないことがある。それが「不幸自慢」だ。

「そんなことで落ち込むなよ。俺なんて、社長から『お前なんて二度と顔を見たくない』とまで言われたことがあるんだから」

部下を勇気づけようと、自分の過去の恥ずかしいエピソードを披露するのだろう。だが、ほとんどのケースで、上司の思惑どおりにはならない。

「落ち込んでいたって、何もいいことはない」

そんなことは本人が一番よくわかっている。頭では理解できているのだ。にもかかわらず、理性では感情をコントロールできないからこそ落ち込むのだ。自己嫌悪するし、自信喪失する。

そんな状態の部下に、不幸自慢したって気休めにもならない。もしも上司の不幸自慢ごときで気分が晴れるぐらいなら、部下はたいして落ち込んでいなかった、と捉えよう。

では、理性的になれない部下に、どう声をかけるのか? 部下自身に問題がある場合はスルーせず、教育し、時には叱咤激励するのが適切である。

逆に、部下自身の責任ではない場合は、軽い声かけにとどめ、基本的にはスルーする。それぞれのケースに応じて、適切な対応をとることが重要である。

それはなぜか? 具体的な事例とともに、解説していく。

なぜ「落ち込んだ要因」を誰かに話すとダメなのか?

まずは、自身の問題ではないケースだ。ビジネスにおいては、自分の思いどおりにならないこともあるだろう。というか、いろいろなことに挑戦している人は、そのほうが圧倒的に多いはずだ。

だからこそ、うまくいかないことがあったとしても気にすることはない。どんなに努力しても、無理なものは無理なのだ。最善を尽くして、それでも成果が出なければ仕方がない。大事なことは、やれることは全部やり切ったのかどうかである

マネジャーは、常にそのことを部下に伝えておけばいい。

「失敗体験」を思い返すことのデメリット

ちなみに、これを読んでいるあなた自身はどうか。落ち込んでいるとき、誰かに

・励ましてもらいたいか?

・スルーしてもらいたいか?

過去を振り返って思い出してみよう。どうされたほうが嬉しかっただろうか。どんな風にされると、心にさざ波が立っただろうか。私だったら、

・スルーしてもらいたい

・そっとしておいてほしい

・声をかけないでほしい

と思っている。理由は、落ち込んだ要因を想起することで、「追体験」が始まってしまうからだ。もしも

「3日かけて提案書を作成したのに、お客様から『全然わかってない』と叱られたんです。聞いてください」

と言って、上司に一部始終を聞いてもらったとしよう。そうすることで、気分がスッキリするのは、その場だけではないか。

それよりも、お客様のことを考え、何日間もかけて提案書を作ったときの苦労がよみがえってこないか。にもかかわらず理解してくれなかったお客様の表情をまた思い出したりしないか。そのときにかけられた心ない言葉が、また脳内に乱反射しないだろうか。

成功体験なら、いくらでも話せばいい。うまくいったことを「追体験」することで、ドンドン自信が芽生えていく。そのプロセスを思い返して、

「次もこうしよう」

と決意を固められる。繰り返すことで、その成功が再現されていくのだ。しかし、失敗したこと、うまくいかなかったことを誰かに話すと、「追体験」をし、自信が失われていくのである。

人の思考プログラムは、過去の体験の「インパクト×回数」でできている。どんな体験であろうが、体験数は1回しかない。だから時間が経てば忘れてしまうのだが、何度も想起することで同じ出来事を何度も体験することになる。

思い返したくもない体験を、何度も「追体験」することで、自分の思考プログラムが変わっていってしまうのだ。

以前は自信があったのに、ドンドン自信がなくなってしまうこともある。だから、一生懸命にやったことでうまくいかなくても気にすることはないのだ。したがって、決して人に話す必要はない。そんな体験は1回すればいいだけだからだ。

部下に「ガス抜き」をさせないようにしよう

「溜まっているものは、吐き出したほうがスッキリする」と言う人がいる。気分転換、ストレス解消のために「ガス抜き」を推奨する書籍も多い。

私は絶対にやめたほうがいいと思っている。先述したとおり、「追体験」をするため、ネガティブな思考が強化されるだけだからだ。

それゆえに、「俺には、お前の話を聞いてやることしかできないから」と部下に声をかけるマネジャーは気をつけるべきだ。「傾聴の大切さ」を研修で習い、やたらと部下に声をかけ「何でも聞くから、話せ」というマネジャーがとても増えている。

だが、下手な傾聴はやめよう。しかも、部下が「聞いてください」と言ってもいないのに、「落ち込んでるんだろ。言えよ。私が聞いてあげるから」と働きかけるのは、単なるマネジャーの自己満足だ。無意識のうちに「私は君のよき理解者だ」とアピールしたいがための行為になっていないか。気をつけよう。

基本的には、部下と目を合わせず、心で見守るだけでいい。心で見守っていると、感度が上がり、ちょっとした部下の言動に対して敏感になる。

「課長、来週の案件で相談に乗ってほしいことがあるんですが」

「おう。どうした?」

落ち込んでいる要因には触れず、未来に向かって動き出そうとしている部下に対し、親身になって接してやればいい。​声をかけるにしても、

「そういうときもあるさ」

「ドンマイ、ドンマイ」

と言う程度でいい。そうして、「正しい努力を続ければ、必ず自分の糧になる」という思考を、部下の脳にしっかりと築き上げるサポートをするのだ。部下本人は、上司のおかげで前向きになれたとは認識できないだろう。でも、それでいいのだ。

上司は手柄を欲しがってはならない。

横山 信弘

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長

経営コンサルタント

※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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