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保育園に預けられなければ退職一択だったが…2001年に第一子を出産した女性がいま、「男性の育休黎明期」について思うこと【ライフキャリアコンサルタントが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月18日 15時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

2022年10月より、男性の育児休業取得を推進するため、子の出生日から8週までの期間に取得できる「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されました。政府は2025年までに男性の育児休業取得率を30%とする目標を掲げていますが、現状、男性の育休が浸透しているとは言い難いでしょう。本記事では、2001年に第一子を出産したライフキャリアコンサルタントの江野本由香氏が、日本の育児支援制度の実態について解説します。

父親の育休問題

2022年10月からパパ育休もはじまり、父親が育休を取ることは国をあげて応援モードです。とはいえ男性の育休は、言い出しづらい、取りづらいと感じている人も多いでしょう。

なぜ育休を取りたいと言い出しづらいのでしょうか。また、なぜ取りづらい状況なのでしょうか。その理由にはいろいろあるでしょう。

■仕事が忙しくて休めない ■職場で取った人がいない、もしくはほとんどいない ■これからのキャリアに影響が出てしまうのではないかと不安

などなど。ですが、父親であるあなたが「自分の価値軸に沿った選択として育児休業を取りたい」と思うのであれば、これらの理由で取らないのはもったいないです。

仕事と育児の両立は、長いあいだ女性の課題としてとらえられてきました。しかし時代が進み、これからは男性・女性にかかわらず、すべての働く親の課題となり、とくに大きな変化が求められるのは男性の働き方や生き方なのです。

変化することは、むずかしいし、勇気のいること。では、どうすればよいでしょうか。

「育休を言い出しづらい…」今の自分に大切なことを考える

父親であるあなたが育休を取りたいと心から思っているとしましょう。

「自分だけでなく、職場全体が忙しくて、とても育休を言い出せる雰囲気ではない」「職場で誰も取った人がいないので、周囲からどう見られるか不安で言い出せない」という状況だとしたら、現在地点を人生のタイムスケールでとらえ、仕事人や父親といった役割のなかでWill-Can-Mustをあげてみましょう。

それを俯瞰し、「いまの自分にとって大切なことの優先順位」をつけてみるのです。すると、どのタイミングで、どれくらいの期間、育休を取得するのがよいのか、そのためにどのような段取りが必要かといった道筋が見えてくるでしょう。

このような過程を踏まえて導き出した考えは、決して自分勝手ではなく、職場のことも、パートナーのことも、子どものことも考えられたものであるはずです。自信をもって上司や周囲の人へ話してみてください。

それでも多少の反発はあるかもしれません。そのようなときは、先述したように「これがいまの自分の最善の選択」という言葉を自身に投げかけてみましょう。

新しいこと、変化が必要なことを受け入れてもらうことはむずかしいことですが、あなたの人生です。あなたが決めた道を進めばよいのです。

復職後、自分の居場所はあるのか…

ほかには、「これからのキャリアへの影響」を心配する声もしばしば聞かれます。

母親の場合、産前産後休暇だけでも3か月以上、育児休業もあわせれば1年以上、職場を離れることになるわけですから、育休の取得は「キャリアの中断」ともとらえられ、いまも多くの働く母親の悩みの種にもなっています。

男性の場合はまだそれほど長い期間の育休を取ることは少ないものの、自分の仕事を誰かにいったん引き継いでいくことに戸惑う人も多いでしょう。

「誰かに自分の仕事を取られてしまうのではないか」

「復職後に自分の居場所がなくなってしまうのではないか」

「今後の昇進に響くのではないか」

……などと不安を感じるのは当然でしょう。

むしろ、育休がキャリアアップへの鍵になる!?

しかし、一時的に職場を離れることで見えてくるものや考えることもありますし、何よりも子育てという経験は、その後の仕事やあなたの人生に役立つことがたくさんあります。その貴重なチャンスを生かせるかどうかは、あなた次第です。

赤ちゃんは1歳くらいまで言葉をほとんど話しません。生活すべてに誰かのサポートが必要な存在です。

泣き止まない赤ちゃんを抱っこしながら、「この子はなぜ泣いているのかな?」と、あらゆる可能性を考えます。五感をフルに使って想像し、赤ちゃんから求められていることに心から応えようとします。

しばしば「トイレにも行けない」「ごはんを立って食べているような感じ」と言われるように、自分のペースで動くことがむずかしい生活となるでしょう。

子どもは日々成長していきます。その時々で親の役割やサポートの仕方は違うので、柔軟に変化していく力も必要なわけです。これらのことは仕事上でも大切なことではないでしょうか。

育休期間での経験から得られたスキルを仕事の場面でも生かしていければ、キャリアへもプラスの影響を与えるはずです。

1992年の育児休業法から長い月日が流れ、育児休業を取得する女性、復職する女性は多くなりました。法律の施行後から職場の理解があったわけでも、復職が当たり前だったわけでもありません。

いまの男性育休も、このときと同じ状況にあります。男性の育休が一般的なこととなり、父親と母親が協力しながら、誰もが目指したいキャリアを描き、自分らしい生き方ができるようになる未来がやってくるかどうかは、いま子育てをしている世代の生き方にかかっているのではないでしょうか。

2001年に第一子を産んだ女性の「仕事と育児」

私の子育ては育児休業法の進化とともに歩んできました。そのような時代を歩んだ私の体験をヒントとしてお伝えしていきましょう。

「夜の会議も当たり前」の会社で、16時退社の時短制度を使う

第一子を産んだ2001年は、育休は1年まで。保育園に入れなかったときの延長はなく、預け先がなければ退職するしかありませんでした。保育園の優先順位付けもいまほど厳密ではないうえ、定員の関係で年度替わりの4月でなければ入園はほぼ不可能な状況。

「1歳までは自分の手で息子を育てたい」との願いは叶わず、7月生まれの息子は8か月で入園することになります。そこから出産前とは違う、まったく初めての部署や、初めての業務での時短勤務生活がはじまります。

職場には2名のワーキングマザーはいたものの、その方たちは時短勤務制度を利用せず、二重保育をしながら通常どおりの時間で勤務をしていました。

他部署のワーキングマザーも、「うちの子は、おばあちゃんのことを母親だと思っているから!」「病気になったら入院させちゃう!」と笑って話す……。そのような環境のなかに16時退社の時短勤務制度を利用する私が入ったわけですから、上司も同僚も困惑しきっていました。

勤務先は、フレックスタイム制、コアタイムなし、残業といった感覚がなく、夜のミーティングも当たり前。

仕事・職場の仲間が大好きで飲み会もよくある環境だったので、16時退社でコミュニケーションをとることもむずかしい私をマネジメントする上司は、さぞ苦労されたことでしょう。

当時、時短勤務制度が使えるのは、子どもが満3歳になるまで。しかし3歳を超えたからといって、保育園の預かり時間が変わるわけではなく、通常勤務に戻せば二重保育は避けられません。男性が育児を理由に早く退社することは、まず想定されない時代。夫をあてにはできません。

「このままだと二重保育になってしまう、そこまでして私は仕事を続けたいのか?」と自問自答する日々。

長男が3歳に…それでも「時短勤務」を続けられたワケ

そのような矢先、第二子の妊娠がわかります。出産予定日は、息子の3歳の誕生日の4か月後。

産前休暇や有給を使っても2か月ほど時短勤務が使えない期間ができてしまい、悩んだ挙句上司に相談すると、「仕事さえしてくれれば、いままでどおりの時間に帰っていいよ」と、あっさり許可が下りました。

第二子出産後も時短勤務制度を利用。その子が3歳を迎えるころに、また悩みます。そのころは16時30分退社で、ふたりの子を別々の保育園へ迎えにいき、19時に帰宅。21時過ぎに寝かしつけたあと、やり残した仕事をやるといった生活のサイクルができあがっていました。

その部署での仕事は本当に楽しくて、同僚と社内コンテストに応募して賞をもらうなど成果を出せていたので、「時短勤務のまま仕事が続けられたら」と、強い想いがありました。

そこでまたもや勇気を出して上司へ相談。すると上司から、「来期から時短勤務制度を利用できる子どもの年齢が上がるかも」といった話を聞きます。来期になる前に第二子は3歳になってしまい、5か月ほどの空白の時間が空いてしまいます。

上司から次のようなことも言われました。「時短勤務としてのミッショングレードはこれ以上、上がることはない。通常の勤務時間にして、超過勤務をせずに退社する選択もあるのではないか」

ミッショングレード制をとっている会社なので、半期ごとに業務設定やテーマ設定をし、その難易度や達成状況によって給与も変わります。どれほど仕事をがんばっても、時短勤務制度を利用していたらグレードを上げることはできないので、昇給も昇格もむずかしくなるのです。

「いま私にとって大切なことは何か?」けっきょく時短勤務を選択することにしました。「長い人生のなかで子育ての期間など、わずかな時間。子育てに重心を置くときがあってもよいのでは?」と、別の上司から言われた言葉が背中を押してくれたのです。

自分の価値軸でした選択。上司には、私の仕事、子育て、人生の価値軸について、素直に伝えました。空白の5か月も人事上は勤務時間不足になってはいましたが、同僚たちからはいままでどおり「時短勤務の人」と受け止めてもらい、そのままの勤務体制で続けられたのです。

男性の育児が当たり前になる未来へ

22年間の在籍中、10年間を育児時短勤務で過ごしたことで、私が管理職に昇進することはありませんでしたが、自分の価値軸で選択したキャリアにまったく後悔はありません。

会社を卒業するときまで、「私だからできること」にこだわり、ミッションでの成果達成はもちろんのこと、後輩のワーキングマザーの相談相手、社内託児所設立プロジェクトへの参加などを通じ、「子育てをしている女性が自分らしく働ける会社」になるように、微力ながら活動を続けました。

いまでは当たり前のように時短勤務を使い、成果を出す女性が活躍できる会社になっています。

このように、変化の過渡期、その先端を走るときの風当たりは強く、つらい思いをすることもあるでしょう。

しかし、自分が「こうしたい」「こうなりたい」と強い想いをもち、周囲に対し、真摯な気持ちで向き合えば、まわりの人から理解を得ることも、未来を変えることもできます。

私のような想いをもつ女性一人ひとりが歩んできたことが、出産後も働き続けられる世の中を創ることにつながっています。変化は急に起こるわけではありません。誰かの「こうしたい」という想いが周囲へ伝播し、世の中を動かしていくのです。

誰もが当たり前に満足のいく子育てと、自分が目指したいキャリアを実現できる未来を創るのは、いま子育てをしているあなた、そしてこれから父親・母親になろうとしているあなたです。

江野本 由香 ライフキャリアコンサルタント

※本記事は『キャリアと子育てを両立する!自分と家族の価値軸で築く幸せな生き方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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