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相続税額「1億円」!? 祖父の死で老後資金が消滅した63歳地主の父、子を二の舞にさせないための「緻密な相続対策」【元メガ・大手地銀の銀行員が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月31日 10時15分

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(※画像はイメージです/PIXTA)

先祖代々受け継いだ土地や建物などの資産で、家賃収入を得て楽に暮らしている……そんなイメージの「地主」。しかし、先祖や家族から受け継いできた大切な資産だからこそ、特に相続においては多くの地主が頭を抱えることに。本記事では、地主の坂井一信氏(仮名)の事例とともに地主の厄介な相続対策について、ティー・コンサル株式会社代表取締役でメガバンク・大手地銀出身の不動産鑑定士である小俣年穂氏が解説します。

定年退職後、相続について考え始めた「地主一族の当主」

私(坂井 一信)は、都内ターミナル駅から私鉄で20分ほどの「〇〇」駅周辺に古くから不動産を有しているいわゆる「地主の一族」である。

大学卒業御、都内の総合商社に就職し、30数年間は仕事一筋で勤務をしてきたが50代後半で役職定年を迎えた。その後は嘱託社員として数年間勤務したが、昨年末でサラリーマンとしての人生に終止符を打った。

今年63歳となるが、仕事を引退し時間もできたことから次世代へ円滑に承継させる準備を開始したいと考えている。私が承継したときの苦労を次世代にはさせたくないことが理由だ。

坂井家は駅周辺に多く在住しており、地元ではそれなりに名の知れた一族である。私の一族は坂井家の「分家筋」にあたり、不動産を複数所有し承継してきた。

私の父は13代目であったが、10年前に突然体調を悪くし他界した。母親もその前年に他界しており、結果としては母を追うような形であった。

坂井家は長寿の家系であり祖父母は90代まで長生きしていたことから、父親としても予想外であったと思われ、残念ながらいろいろと探してみたものの「遺言」の準備はしていなかった。

したがって、弟との遺産分割協議においては大変難儀したが、最終的には弟に金融資産を多く渡し、長男である私のほうが不動産(借入金も含む)を承継することで調整した。

相続税については、亡くなる数年前に父親名義で賃貸マンションの建築を行ったところであり、多くの借入金が残っていたことから手元の資金でなんとか納税することができた。ただし、私が老後の資金として働いて蓄えてきた預金の大半は相続税の納税資金として消えてしまったが。

当時、私は商社の管理職として忙しい日々を送っていたことから相続税の申告は税理士に任せっきりであり、週末に弟と分割について話し合いに注力し、あっという間に納税期限の10ヵ月を迎えたような状態であった。

したがって、その際には相続税の申告書をじっくりと見る機会がなかったが、今年に入って時間もできたため、長らくしまってあった当時の申告書を引っ張り出した。私の相続対策の下準備として、自分なりに現状把握から始めることにした。

坂井家の推定納税額

相続税算出の構成要素として、「家族構成(法定相続人)」と被相続人である私の「課税資産」で成り立っていることがわかった。それぞれを以下のとおり整理してみた。

法定相続人

法定相続人については妻と、子供3人の計4人である。長男と長女はそれぞれ伴侶を得て、子供にも恵まれ、都内で各々自宅を購入のうえ生活をしている。次男については、同居しており結婚の可能性も低いように感じている。

不動産

不動産については、固定資産税の課税明細から、当該評価額を相続税相当額に計算して算出した。

おおよそ、概算ではあるが不動産としては5億5,000万円ほどの評価になりそうだ。貸家建付地や貸家の減価、ならびに小規模宅地等の特例については自宅に適用できないことも鑑みて、土地の単価の高い図表2の「NO4」の敷地で利用することとして計算をしてみた。不動産にかかる課税評価額としては、4億4,000万円弱程度となりそうである。

金融資産

金融資産としては、父親の相続時にだいぶ目減りしてしまったが、現在はおおよそ預貯金と有価証券で3,000万円ほどになると思われる。負債については、父親の代で「NO4」の建物を建築した際の借入が当初3億円あったが、現在では2億円となっている。

基礎控除額を国税庁のホームページで確認したところ「3,000万円+600万円×法定相続人」であり、合計5,400万円であった。概算で算出した不動産課税価格に金融資産を加算し、負債および基礎控除を減算した課税資産として約2億1,000万円であった。

国税庁のホームページから法定相続割合ごとの金額を計算したところ、おおむね4,000万円程度の課税となることがわかった。

相続税の配偶者控除が利用できれば、おおむね2,000万円程度であり手元の金融資産でも納税できそうである。しかし、母と同様に妻が先に他界する可能性もあるし、また負債も残り20年で完済することから、手元資金での納税は困難であると考えておいたほうがよさそうだ。

10年前の「父親の相続」も再計算

自分の相続税を概算したところ、父親のときの相続についても気になり、計算してみることにした。10年前の記憶であり、かつ当時は忙しかったこともあり鮮明には覚えていないが、2,000万円程度納税資金として支払ったはずである。

建物はいまより新しい分、多少高いものの、土地についてはいまより低かったことがわかった。記憶を思い起こすと当時は、リーマンショックや震災後ということもあり不動産価格はいまより低かった。計算してみるとおおむね5億2,000万円ほどで、やはりいまより2,000万円ほど低い。

また、私は父親と同居をしていたことから、小規模宅地等の特例も使えていた。したがって不動産にかかる課税評価額としては、3億8,000万円程度で5,000万円ほど低いことが判明した。

また、基礎控除についても当時は「5,000万円+1,000万円×法定相続人」であり、法定相続人は私と弟のみであったが7,000万円の減額が取れており、負債も2億9,000万円残っていたことから課税資産は約1億2,000万円ほどであった。

父親は、倹約を好みあまりお金を使わない人であったうえに、バブルの際には株式の運用でうまくいっていたようで相続時には1億円の金融資産が残っていた。

課税資産から計算すると相続税額は約2,000万円。金融資産の1億円はすべて弟に相続させ、不動産とのバランスをとるために納税資金は代償分割金として私のほうで負担することにしたので、記憶どおり2,000万円ほど貯金から支払ったことと一致していた。

遺産分割協議にあたっては、弟の妻からも権利があるのだから「平等にもらい受けたい」との要望があり配慮した格好だ。いまでは、会った際には挨拶程度は行うものの、当時の記憶はしっかりと残っている。

その後、税理士が作成した申告書とも照らし合わせてみたが、葬儀費用などの費用や不動産の計算における調整などで若干の相違はあったがおおむね計算と同様であった。

相続対策を開始する

いまのままでは納税額が不足することが見えているため、以前紹介を受けた不動産コンサルを呼び、対策を進めることにした。

不動産コンサル・税理士に相談、対策の検討スタート

依頼者である坂井一信は、不動産コンサルタントの真田に今後の対策を相談するために連絡を取った。

後日、真田は所属する税理士の里見と一緒に訪問のうえ、現状把握を行うことに。坂井は、現況の整理をしっかりと実施しており、打合せはスムーズに進んだ。真田と里見は依頼者の意向を聴取し整理を行った。

依頼者が課題として考えていることは以下のとおりである。

・坂井家は代々長男が不動産を承継しており、原則としてそれを前提としたいこと ・長男のいままでの経歴や兄弟に対するリーダーシップからも、当主として適性があると考えていること ・次男は内向的な性格であり、収入面で将来的な不安があるためサポートしたいこと ・長女は自宅購入時にも多少の援助(住宅取得資金贈与)をしているため、最低限としたいこと ・納税資金については、極力子供達に負担させたくないこと ・本人としては、ここまで苦労の連続であったことから道筋を作り次第、悠々自適な生活を送り長生きしたいこと

面談後、真田と里見は坂井の案内のもと、所有する物件を見て回り事務所に戻ったのち、対策について検討を開始した。

相続税額は「1億円」!? 土地を有効活用すると…

63歳坂井氏の平均余命は21.49歳(出所:厚生労働省「令和4年簡易生命表」)であり、20年後には完済する借入についてはゼロとみなし、その他建物評価額を経年に応じて減額させた場合を検討したところ以下のとおりとなった。

なお、金融資産については不動産キャッシュフローの積み上がりを勘案し現状より3,000万円多い6,000万円とした。

検証にあたり税改正がないことや、土地価格は不変との前提条件をつけているが、以下のとおり相続税額は1億円程度と試算された。現状からはおおむね5,000万円強の増額であり、手元資金のみでは納税資金に苦慮するものと想定される。

次に、原則として長男家に不動産を承継させるという坂井氏の希望に基づき、長男の長男(孫)と養子縁組を行うこと、図表10のNO3の駐車場を有効活用する検討を行った。

なお、被相続人に実子がいる場合、養子は1名まで以下の計算において加えることができる(出所:国税庁 No.4170「相続人の中に養子がいるとき」)。

・相続税の基礎控除額 ・生命保険の非課税限度額 ・死亡退職金の非課税限度額 ・相続税の総額の計算

したがって、基礎控除についても当初の5,400万円から6,000万円に増額(+600万円)のうえ試算を行った。

また、NO3の有効活用の検証にあたっては複数のハウスメーカーの見積もりを取得し、収益性や、費用性、アフターメンテナンスの良否などを比較し、もっとも条件のよかった提案内容を採用して検証を行った。

昨今の建築費上昇の流れから建築費は諸経費含め1億5,000万円であり、当該建築費についてはNO4の物件で既存取引のある関東銀行(仮名)に相談したところ、「担保はNO3の土地建物(建築予定)のみで最終的には行内決裁が必要であるが、おそらく満額融資可能であろう」との回答を受けた。

かかる条件のもと、相続税額の試算を行ったところ1,000万円程度となった。この状況においては手元資金で十分支払い可能な水準であるものの、あくまで対策直後の想定であり実際の相続が20数年後に発生すると考えると、高額になっていると予想される。

資産管理会社を設立し、次男の収入をサポート

ここまでの検証において、依頼者課題の一部についてはおおむね意向どおりの対策が取れているが、さらに以下の点について解消するために資産管理会社の活用を検討することにした。

検討する課題 ・次男は内向的な性格であり、収入面で将来的な不安がありサポートしたいこと ・(依頼者本人が)悠々自適な生活を送り長生きしたいこと

ここで、資産管理会社活用の主なメリット・デメリットを整理すると以下のとおりである。

当初、株主兼代表取締役は坂井一信氏とする。資産管理会社の活用(以下「法人化」)においては、建物を法人へ譲渡し上記のメリットを達成することを目的とする。

また、土地については地主一族の場合、代々承継している土地であることから、その取得費は不明(取得費不明の場合には売買価格の「5%」が取得費となる)である。

したがって、資産管理会社へ譲渡するとその譲渡税が高額となる((譲渡価格-取得費及び諸経費)×20.315%)ことを鑑みこのタイミングでは移転しない。

一方で、建物は法人、土地は個人という所有形態になり一見「借地権」が発生するように思えるが、法人から個人へ適正な地代を支払い、かつ「無償返還の届出」の手続きをすることにより借地権設定にかかる権利金の認定課税がなされないように対応する。

さらには、既存の借入がある場合には銀行に対して法人へローンの借り換えを依頼することになる。銀行によっては新規で法人に対して融資を行い、当該融資金をもって個人のローンを返済する方法(図表13)があること。

あるいは個人の借入を法人が「債務引受」する形でローンを承継する方法(図表14)があり、銀行によって対応が異なることから事前相談が不可欠である。この際に、他行へ借換を行い金利の引き下げる戦略をとることもある。本件においては、既存銀行が低い金利のまま継続できそうであることから、そのままとした。

上記のとおり、法人化段階においては多くの時間と労力を要することから実行にあたっては坂井一信氏を中心に対応していくこととした。その後、軌道に乗ってきた段階において資産管理会社の株式については長男へ贈与するという方針を立てた(課題:生前の承継により「悠々自適な生活」を実現する)。

他方、次男に対しては、当該資産管理会社の社員として建物の維持管理への協力などを行ってもらい給与を支払うことで将来的な収入の確保を図ることとした(課題:次男の将来の収入のサポート)。

NO4の既存建物について「債務引受」の形で法人へ移した。また、NO3については法人名義で請負契約を締結のうえ建築を行うこととした。

NO2については「不動産鑑定評価」取得のところおおむね固定資産税評価額程度であったことから、諸経費分を含め8,000万円を新たに法人にて借入することとした。したがって借り入れについてはすべて法人で行っているが、不可分の土地についてはそれぞれ担保提供をしている。

個人については、借入がなくなり、かつNO2(既存借入なし)の売却資金7,500万円分が増加したが、生命保険非課税限度額(法定相続人5名×500万円=2,500万円)について、いくつかの生命保険会社の提案を受け、安定的でありかつリターンの大きい保険へ加入することとする。

当該ケースにおける相続税額は約7,000万円であり、今後借入返済による資産の増加や不動産キャッシュフローによる金融資産の積み増しなどもないことから相続税額は大きくはぶれず当該金額を目線としておけばよい。

なお、「無償返還の届出」を提出した土地については自用地に対して「20%の減額」となる。

方向性が固まった

真田と里見は、依頼者である坂井氏に対して提案に行くこととした。

おおむね希望どおりだが、家族会議が必要に

真田と里見は、依頼者である坂井氏に対して以下のとおり提案した。

課題 ・長男家への承継     → 孫の養子縁組、資産管理会社設立のうえ将来的に長男へ株式移転 ・次男の収入サポート   → 資産管理会社の手伝いを行ってもらい給与を支給 ・相続税納税資金について → 法人化により納税は可能な水準と考えられること ・悠々自適な生活     → 資産管理会社の代表を将来的に長男へ引継ぎ、本人はサポートにまわる ・長女への相続資産    → 養子縁組および遺言の作成により長女相続資産は減少(ただし、丁寧な説明が必要であることから、こちらについては後述する)

坂井は自分の希望に近い形となることで安心した。ただし、真田からは資産が長男家に集中することから、現段階においても将来の揉めごとを排除すべく、家族を含めて提案の機会を設ける必要性を述べた。

坂井も先代からの相続が、なんら話し合いのなかで急遽始まってしまったことに原因であると考えており、結果として実弟との関係悪化につながっていることへの反省を感じていた。

また、一方で法人化による新たな借り入れが生じることに不安があったが、この点については真田らが不動産収支の検証を行っており十分に返済可能であることを説明し納得した。

長男がほとんどの土地を継承…「遺留分」の分配方法

遺言の作成および孫との養子縁組により各人の遺留分は以下のとおりとなる。必要最低限と考えている長女および次男の遺留分は「6.25%」である。ここで坂井と真田らは遺留分を勘案した相続案についても打合せを行った。

不動産の評価は時価の算定が難しいが、検証にあたっては相続評価額を前提とした。打合せの結果、妻には自宅を相続させ、それ以外の土地については長男に相続させることとした。

金融資産は相続発生までは変動するが、一旦法人化後の金融資産をもとに割り振りを行った。長女と次男には3,000万円を相続させ、妻には2,000万円、長男には生命保険の2,500万円として考えた。

また、孫については実質長男と同一であることから孫の分を含めて長男へ承継させることとした。ただし、今後の孫の成長により当主としての適性がついてきた場合には、土地の一部については孫に承継させることも検討したいと思っている。

この内容で、方向性を固め家族全員を招聘した会議を開催することとした。

家族から理解を得る

坂井一信は家族全員に対して「今後の坂井家のことで話がしたい」と、みなの集まりやすい、とある日曜日の夕方に妻、長男、長女、次男に家へ来てもらうよう声をかけた。真田と里見も内容を説明するために同席することとした。

冒頭、一信から真田と里見を家族全員に紹介をした。その後、一信から会議の趣旨について説明をおこなった。

定年退職し、ここ数ヵ月承継について真剣に考え始めたこと、円滑に承継を行うために真田と里見の意見を聞きながら方向性を固めたこと、自分が父親から相続をした際になにも知らされていない状況であり大変苦労したこと、資産を承継したあとも決して楽なことはなく働きながら都度対応にあたってきたことなどを説明した。

家族の反応を見ると、当初想定していない内容であったのか一様に驚きを隠せていなかったが、徐々に話の趣旨を理解し真剣に耳を傾けていた。ここからはバトンを託された真田が、現状の資産の内容と今後の方針について説明を行った。

一信氏の意向を受けて、不動産については長男家に承継を託したいこと、その対応として法人化や養子縁組を行うこと、遺言を作成のうえ事前に承継方法については定めておくこと、などをひとつひとつ言葉の意味や内容について丁寧に説明を行った。

途中、長男や長女から言葉の意味など質問があり都度回答を行い、2時間程度かけて説明を終えた。

一信は内心、実弟との話し合いのときを思い出し長女や次男から「長男ばかり優遇されているのではないか」との意見が出ることを覚悟していた。しかし、一信がそれぞれ意見を聞いてみたところ意外な反応があった。

長女からは「お父さんが相続の対応をしているときに、とても苦労している表情をしていたことをいまでもよく覚えている。当時私は社会にでたばかりで仕事に慣れるのも一苦労していたときに、仕事と相続のこととで大変だったと思う。叔父さんの気持ちもわからなくはない。でも、わたしとしては兄に同じような苦労をさせたくないし、十分な内容だと思っている」との発言があった。

また、次男からも「近くでお父さんのことを見てきていたから、資産を維持することの苦労はよくわかっている。そもそも資産のない家に生まれたのであれば、なにももらえないのが当たり前であるし、むしろもらいすぎているくらいに感じている」との発言があった。

一信は、心底理解をしてもらえたことに感謝をしながら、また、自分としては苦労している姿を見せないでいたつもりであったが、実のところ子供たちがその姿を見て気にかけていてくれたことに感動をしていた。

最後に、この計画を実現させるために少しずつ進めていくこと、長男に対しては次期当主として承継の中心的役割として支えて欲しいこと、相続納税資金は生命保険分のみでは不足することが予想されることから、自分と同様に貯蓄を進めていってほしいことなどを説明した。

また、今後の状況についてはみなが集まるタイミングなどで共有していくことを説明して会議を終えた。

順調に土台を築き上げ、遺言も作成

会議を終えたあと、一信は真田と里見とで法人化ならびに資金調達、NO3の駐車場についての賃貸マンション建築、孫との養子縁組を順調に進めた。

なお、養子縁組については孫が未成年であることから長男にも法定代理人として協力をしてもらった。その他、「無償返還の届出」なども漏れなく対応をした。

いよいよ土台が仕上がったことから公正証書による遺言作成に着手した。内容については、以前実施した家族会議の内容と同様の形とした。長女や次男からは個別にそこまでお金は必要ないとの申し出を受けていたが、約束したことであるからと当初の内容で進めることとした。

また、妻が先に逝去する場合も鑑み、その場合の配分についても条件付きとして取り決めを行った。

作成にあたって、最も時間をかけたことが遺言の最後にメッセージとして残す「付言」であった。真田からも円滑な承継の実現にもっとも重要な内容であるから、時間をかけても構わないので納得のいくまで何度も検討を重ねて欲しいといわれていた。

付言 長男に対して 一族の中心としてみなを支えて欲しいこと。承継をするにあたっては苦労を伴うが長男であればできると確信していること。法人を活用して、より円滑に承継をできるような仕組みを作っていって欲しいこと。いままでの長男の努力や物事に対する姿勢など素晴らしい大人に育ってくれたと感謝していることなどを記載した。 長女に対して 困ったときには長男を支えて欲しいこと。家族会議の際に、自分の姿を見ていてくれていたことや、資産もそこまでは不要であるなど、他人を思いやる姿勢に感動したこと。長女一家がより幸せになることを祈っていることなどを記載した。 次男に対して 長女同様に長男が困難な際にはいい相談役になってほしいこと。法人の維持や発展には次男の力が不可欠であると考えていること。一番近くで、我々両親のことを大切にしてくれ支えてくれていたことに感謝していること。幸せな人生を送ってほしいことなどを記載した。

いままでのことを振り返り文字に起こすことで頭の整理もよくできた。仕事が忙しく家族のことも妻に任せっきりであったことから、今後は妻と余生を楽しむため早速旅行の予定を考え始めた。

まとめ:課題の整理~対策実行まで、しっかり行動に移す

・60代からの相続対策においては気力も体力も充実しており本人主体で取組可能であること ・課題の整理から課題への対策実行までを先送りせず、しっかりと行動に移すこと ・将来の揉めごとを排除する意味でも生前から自分の考えを家族内に共有すること ・相続資産が不動産の場合は平等に配分することは困難であることから、遺留分を考えた承継を前提としておくこと ・遺言には自分の気持ちを付言としてしっかりと残しておくこと

以上のポイントを押さえることが重要である。

小俣 年穂

ティー・コンサル株式会社

代表取締役

<保有資格>

不動産鑑定士

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

宅地建物取引士

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