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日本酒がもっと美味しくなる!〈完璧なペアリング〉を実現するために知っておきたい「温度の法則」とは【専門家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月7日 17時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

日本酒には味や香りで4タイプに分けられ、それにより相性のよい料理も異なります。さらに、ペアリングを究めるには、日本酒の「温度帯」を意識することが大切、と日本酒の専門家である近藤淳子氏は言います。葉石かおり氏・監修、近藤淳子氏・著『人生を豊かにしたい人のための日本酒』(マイナビ出版)より、日本酒のペアリングについて、詳しく見ていきましょう。

日本酒の「ペアリング」のコツとは?

ペアリングを実践するためには、まずは下記の日本酒の4タイプをテイスティングして、特徴を実感できるようになることが大切です。

①フルーティタイプ(大吟醸酒・吟醸酒系・生酒) (「東洋美人」「横山五十」「山丹正宗」など)

香りは華やか。リンゴ、イチゴ、メロンなどフレッシュな果実やバラ、キンモクセイ、ユリなどの花のような印象。味は甘くジューシーで、透明感があり果実感にあふれています。余韻は程よく長く、冷やして飲むと味わいの輪郭をくっきりと感じられます。  

②軽快タイプ(本醸造酒・火入れ酒全般・生酒) (「八海山」「久保田」「播州一献」など)

香りは穏やか。レモン、スダチ、グレープフルーツなどの柑橘系、ローズマリーやイタリアンパセリなどのハーブ系、竹や杉のような樹木系の香りをうっすらと感じられます。味わいは軽やかですっきり、キレも良い。余韻は短く、よく冷やして飲むと爽やかさが強調されます。  

③旨口タイプ(純米酒・生酛・山廃酛) (「龍力」「石鎚」「田酒」など)

香りは、米に由来する落ち着いたイメージで、ヨーグルト、チーズなどの乳製品を思わせるような印象です。和三盆や水飴のような糖系や昆布のだし系の香りも。味は、米の旨味が凝縮されたふくよかさを感じさせます。余韻はやや長く、常温から熱燗まで幅広い温度帯を楽しめます。  

④熟成タイプ(熟成期間をとった日本酒) (「達磨正宗」「木戸泉」「神亀」など)

香りは、アーモンドやカシューナッツなどのナッツ系。ドライのレーズンやアンズ、紹興酒やシェリー酒のような酒系、カラメルソースやメープルシロップなどの糖系の香りも感じられます。味は、甘味と旨味が幾重にも重なった熟成した奥深さが特徴です。円熟味のある存在感。余韻は長く、冷たく冷やしたり燗をつけたりと、様々な温度帯で熟成酒ならではの個性を発揮します。

多彩な香りと味の濃淡などで分類されている4タイプを、自分の舌や鼻でカテゴライズできるようになると、ペアリングするときの食材、調味料、料理法などを選ぶスキルが鍛えられます。

では、日本酒4タイプ別のペアリング例を挙げてみましょう。

■フルーティタイプ(大吟醸酒・吟醸酒系・生酒など)

パプリカやマンゴーなどの素材そのものの甘味を最大限に活かせるのがこのタイプ。香りにメロンやバナナなどを感じたら、その香りと同じフルーツをアクセントに使用してみましょう。味付けは濃過ぎると、せっかくのフルーティな魅力を感じられなくなるので、薄めで調整します。

〈メニュー例〉

稚鮎(稚鮎はメロンのような香り)の天ぷら、パプリカ、フルーツトマトのマリネ、モッツァレラチーズと柿のカプレーゼ、キスのカルパッチョ(オレンジを煮詰めたソースがけ)、生ハムメロン、パパイヤのはちみつレモンがけ、イチゴとクレソンのバルサミコ酢サラダ、キウイの豚肉巻き

■軽快タイプ(本醸造酒・火入れ酒全般生酒など)

素材そのものの旨味を感じられるエビや白身魚の刺身、ハーブ、パセリなどのインパクトが強過ぎない香草、繊細な昆布だしとの相性が良いです。味付けは薄めで、焼く、蒸すなどシンプルな料理法がおすすめです。

〈メニュー例〉

ジュンサイの酢の物、タコときゅうりの酢漬け、湯葉の刺身、イカそうめん、もやしのナムル、おからの野菜炒め、キノコ類のマリネ、ささみのポン酢和え

■旨口タイプ(純米酒・生酛・山廃酛の酒など)

旨味がたっぷり乗っているサバやマグロ、牛や豚のばら肉など味の主張がしっかりあるタイプとよく合います。味付けは甘辛煮やみそ焼きなど濃いめのものと調和します。

〈メニュー例〉

あん肝の生姜煮、うなぎのかば焼き、肉じゃが、イカ墨パスタ、白菜と豚ばら肉のミルフィーユ鍋、牡蠣フライ、鶏もも肉の竜田揚げ、シュウマイ

■熟成タイプ(熟成期間を長くとった酒など)

万華鏡のような香りのバリエーションを楽しむことができる熟成酒は、独特な癖のある食材や調味料と見事にマッチします。ラム肉燻製、ドライフルーツ、トリュフ、ナッツ類、ブルーチーズ、スパイス系などと楽しめます。インド料理や中華料理などの力強さにも負けず、濃厚な味付けが向いています。

〈メニュー例〉

スパイスカレー、麻婆豆腐、豚ロースのナンプラーにんにく焼き、タンドリーチキン、キノコのオイスターソース煮詰め、ブルーチーズと焦がしキャラメルアーモンドのクラッカーのせ

あくまで基本ルールに則ったペアリング案です。家であなたのお好きなタイプの日本酒と向き合って、あれこれと合う料理を作って楽しんでみてはいかがでしょうか。

日本酒の保管は「温度管理」が命

日本酒に含まれる有機酸には、「冷旨酸(れいしさん)」と「温旨酸(おんしさん)」があります。

「冷旨酸」とは、冷やしておいしいと感じる「リンゴ酸、クエン酸、酢酸」(フルーティタイプ・軽快タイプ)のこと。精米歩合の数値が小さい吟醸タイプや本醸造酒など、華やかな香りとみずみずしくフレッシュな酒質は冷やすことで一層、その個性が強調されます。

例えば、冷やすと「味の輪郭がシャープになる」「爽やかさが強調される」「飲み口が軽快になる」などの傾向に変化。真夏に甘いお酒を常温で飲むと、人によっては重たく感じてしまうこともありますが、冷やすと、その甘さを緩和して飲みやすくできます。軽快タイプはその軽やかな個性がより際立ち、キレが良くなることもあります。

これらのタイプは、3℃~8℃(冷蔵庫の種類による)の家庭用の冷蔵室や野菜室で冷やしておくことをおすすめします。

日本酒をよりおいしく飲むためには、日本酒の温度管理をしながら保管することがとても大切です。なぜなら、日本酒は温度に敏感に影響を受けてしまうからです。最近では、ワインセラーならぬ、温度帯別で冷蔵できる高性能な日本酒セラーも開発されています。

「温旨酸」とは、温めるとおいしいと感じる「乳酸、コハク酸」(旨口タイプ・熟成タイプ)のこと。昔ながらの生酛や山廃、旨味にあふれた純米酒、熟成酒などは、温めることで旨味がより花開きます。温めると「香りが立つ」「味わいにふくらみと丸味が増す」「旨味が増える」などの味覚変化が起きます。

これらの種類は、グルタミン酸などの旨味成分が多く含まれているため、旨味をさらに感じやすくなるのです。酸味が多く、やや重たいと感じる酒質は、温めるとまろやかになり、味わいのバランスが整うこともあります。熟成酒はあまり高温に温めすぎると苦味が出る場合もありますので、注意が必要です。

火入れをしていないため酵母が生きている「生酒」や、お値段の張るあまりお燗のイメージがないような「大吟醸」も温めてみると、その新たな魅力が引き立つこともあります。実際に自身がおいしいと思う温度帯をあれこれ探してみると楽しいのではないでしょうか。

手軽にできる「熱燗」の作り方

ちろり(燗酒用の酒器)を使用してお燗をつけるのは粋ですが、手軽に電子レンジでどなたでもできる方法をご紹介します。

①徳利に1合のお酒を入れて、電子レンジに入れる。(電子レンジ対応の徳利を使用)

②600Wの電子レンジで40秒加熱後、一度徳利を取り出して箸などで混ぜる。(徳利の上部しか温まっていないので、温度を均一にするため)

③さらに、600Wの電子レンジで40秒加熱し、混ぜる。

温まった徳利は細い首の部分が熱くなっているため、手で持つ際には気を付けてくださいね。

先に、「料理と日本酒の温度帯を合わせる」ペアリングを説明しましたが、ただ温度だけを合わせるのではなく、口の中で料理と酒が入ったときに一体感があるかどうかを重視しましょう。料理だけの個性が際立ったり、酒だけの風味を強く感じたりすると味わいがアンバランスになり、ペアリングが成功しているとは言えません。

では、日本酒の温度帯によってどのようなペアリングの可能性が広がるのでしょうか。例えば、チーズに冷たい旨口の日本酒を合わせるのと、50℃くらいの旨口の熱燗で合わせるのとでは、断然、後者の方が口の中がさっぱりと感じられます。

その理由は、冷たい日本酒の場合は上あごにチーズが少し残ったような違和感があるのに対して、熱燗は口内に残ったチーズの脂質を一緒に洗い流してくれて、舌をすっきりリセットさせる効果があるからです。そうすると、またチーズと熱燗に自然に手が伸びて、飲食が快適に進んでいきます。

また、オリーブオイルを使った料理を食べたあとには、温かい日本酒を飲むことで、口内に残ったオイルをすっきりさせることもできます。さらに、料理になかった酒の甘味を補完することもできるのです。オリーブオイルの凝固点は、0℃~6℃。米油やごま油など他のオイルに比べて、一番凝固点が高く、白く固まりやすい特徴をもっています。

つまり、口の中に冷蔵庫から取り出したばかりの冷たい日本酒を入れると、オイルが固まりやすく、油っこさが立ってしまい、いつの間にか食がスムーズに進まなくなってしまいます。鶏のから揚げ、エビの天ぷらなどの油ものには、燗酒をぜひ合わせてみてください。

日本酒の温度帯を少し意識するだけで、ご自宅でもペアリングを上達させるテクニックが身に付くでしょう。

近藤 淳子 一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション 副理事長、フリーアナウンサー

葉石 かおり 一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーション 理事長 酒ジャーナリスト、エッセイスト

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