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年金夫婦で月額23万円「繰下げ受給で、もっと増やす」と希望を持っても…男性の平均寿命が示す、残酷な未来図

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月26日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

止まらないインフレに物価上昇。日本の年金生活者の懐は寒くなる一方だ。そのため、これから年金生活に入る人のなかには「年金の繰下げ受給」を検討する人も少なくないだろう。しかし、増加率に気を取られて無理をすると、残念な結果になりかねない。実情を見ていく。

老後の生活設計…「年金頼り」と回答した人が約4分の1

令和6年度の国民年金(老齢基礎年金)の満額支給額は6万8,000円、また専業主婦世帯であるモデル夫婦の年金額は月23万0,483円となっている(厚生労働省)。2023年度と比較すると、2.7%の引き上げだが、年金改定率は物価変動率に追いついておらず、実質的には目減りしているといえる。

※ 平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金〈満額〉)の給付水準

内閣府が実施した『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』において、老後の生活設計の中で、公的年金をどのように位置づけているかを問うたところ、「全面的に公的年金に頼る」と回答した人が4分の1だった。

【Q】あなたは、老後の生活設計の中で、公的年金をどのように位置づけていますか

【A】

●全面的に公的年金に頼る…26.3%

●公的年金を中心とし、これに個人年金や貯蓄などを組 み合わせる …53.8%

●公的年金にはなるべく頼らず、できるだけ個人年金や 貯蓄などを中心に考える…11.7%

●公的年金には全く頼らない …1.6%

「全面的に公的年金に頼る」と回答した人の回答割合だが、「40代」が16.7%、「50代」が26.7%、「60代」が28.0%となり、「70代」ではおよそ半数となる45.3%になる。
 

「年金の繰下げ受給」を夢見るも、寿命という厳しい現実が

この数字から、70代以上のシニアの多くは、年金以外の収入源を持たないということが推察される。

進行するインフレ、若いときから必至で貯金したが、なんとも心もとない。では今から投資にトライできるかといえば、経験もないうえ、ヘタを踏んでなけなしの虎の子が吹き飛んでは涙も出ない。

そこで多くのシニアが検討するのが「年金の繰下げ受給」だ。年金の受け取りは、原則65歳からだが、受給開始を先延ばしして66歳~75歳までの間に受け取ることも可能。これが「年金の繰下げ受給」だ。

繰下げ受給では、年金の受け取りを1ヵ月遅くするごとに0.7%アップすることになり、最大84%増額が可能だ。

上述した65歳のモデル夫婦では、専業主婦の妻の年金が満額だと仮定した場合、夫の年金額は月16万2,483円となり、75歳まで繰り下げると29万8,968円になる。さらに専業主婦の妻も繰り下げると月12万5,120円で、夫婦合わせて額面で月40万円以上。つまり、年間230万円以上も年金受取額が増える計算になる。

それほどまでに増額できるなら、75歳になるまでなんとか就労プラス節約で辛抱し、そこから先はバラ色の年金生活が…と思うかもしれない。

しかし、寿命までのトータルで考えた場合、本当に得なのだろうか?

年金の繰下げ受給の「損益分岐点」を考えてみよう。年金を繰り下げた場合、受取総額が65歳で年金を受け取り始めたときの総額を上回るのはいつになるのだろうか。額面でいうと、「66歳」まで繰り下げた場合は「77歳11ヵ月」、「70歳」まで繰り下げた場合は「81歳11ヵ月」、「75歳」まで繰り下げると、なんと「86歳11ヵ月」だ。

手取りで考えた場合は、居住地や家族構成等でも変わるが、だいたい2年程度後ろ倒しになる(関連記事:『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』)。

だが、人間には寿命がある。男性の場合、81~82歳で半数が亡くなる。女性のほうは、87歳~88歳だ。男性の場合は、68歳~69歳の間に、女性の場合は73歳~74歳の間に「生存率5割の壁」が立ちはだかる。女性に比べて男性のほうが、繰下げ受給による受取総額が65歳からの受取総額を下回り、損する可能性が高い。

これをどのように考えるべきか?

膨らむ年金額を夢に見つつ、必死で働くも残念な結果に…というのでは哀し過ぎるではないか。健康、生活スタイル、家族の状況等すべてを勘案し、ベストだと思える受給のタイミングをはかってほしい。

[参考資料]

厚生労働省『令和6年度の年金額改定についてお知らせします』

内閣府『生活設計と年金に関する世論調査(令和5年11月調査)』

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