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たくさん納税してやっているだろう→1,000万円の追徴課税…税務調査官を“本気にさせた”60歳男性のNG対応【税理士が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月31日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍を経て、これまで控えられていた税務調査の増加が見込まれています。もし自分が税務調査の対象になった場合、スムーズに済ませるためにも「納税者のNG言動」を把握しておきましょう。今回、具体的な事例を交えながら、税務調査の対象になりやすい人の特徴や税務調査でやってはいけない振る舞いについて、多賀谷会計事務所の宮路幸人税理士が解説します。

税務調査の対象になりやすい人の特徴

みなさんは税務調査の調査対象がどのように決められるかご存じですか? 国税庁では「国税総合管理システム」、通称「KSK」と呼ばれるコンピュ-タシステムがあります。そこでは個人に支払った給与や報酬などの支払調書、個人の確定申告書などのデ-タが一元管理されています。

また、データは業種別に管理されており、たとえば飲食店であれば、平均ではこのぐらいの粗利益率であるとか、不動産業であればこのぐらいの交際費であるなど、さまざまな収支の平均値がわかるようになっています。

この業界平均の数字と比較して、たとえば交際費が倍以上かかっている、粗利益率が異様に低いなど数字に違和感があると、売上を除外して申告しているのではないか、あるいは個人的な私的な遊びや家族の支出を交際費にしているのではないか、などと疑われて税務調査に発展する可能性があるのです。

また、最近流行の暗号資産やネットビジネスといった業種は税務署に狙われやすくなっています。税務署も効率よく調査を行いたいと考えているため、脱税が多い業種とされる風俗業や、納税額が多い富裕層にも調査が入りやすくなっているという特徴があります。

業績好調により納税額が増えたAさん

建設関係の仕事を営んでいる個人事業主のAさん(60歳)は、最近の建築需要の増加により業績が右肩上がり。ここ数年で一気に売上が増えました。しかし、それに伴い所得税と消費税の納税額が大幅に増えたため、なにか節税策はないかと社長仲間からいろいろな話を聞いたそうです。

その結果、

①消費税の計算上、従業員に給与として支払うより外注費として支払ったほうが有利なので給与から外注費へ切替え

②昔から乗るのが夢だった高級車を2台購入

③知人友人や家族との飲食やゴルフなど交際費等の経費を大幅に増額

④青色事業専従者として支払っている妻と子供の給料を大幅に増額

など、経費を大幅に増やすことで納税額を減らすことに成功。Aさんはうまくやったと満足していました。しかしその翌年、税務調査に伺いたいと税務署から連絡がくることに。

調査当日…Aさんが犯した“失態”

税務調査当日、調査官は朝10時ごろ2人でやってきました。最初はなごやかな雑談から始まりましたが、お昼をはさみ、徐々に本格的な税務調査がスタート。調査官からは

「売上が急激に伸びた理由はなにか? またなぜこんなに突然経費が増えているのか」

「この接待はどの取引先といったのか? この海外視察は誰と行ったのか? 以前と比べてゴルフの頻度が格段に多くなっているが、どのような目的で誰と行ったのか」

「以前は従業員だった人を給料という形ではなく外注費にしたのはなぜか? 以前と同じ雇用関係にあるように思えるが、外注先は個人事業主としての実態はあるのか」

「仕事用のトラック以外に外回りの乗用車があるにもかかわらず、なぜ高級車が2台も必要なのか? 誰がどのように使用しているか」

「妻と子の給料が倍増しているが、その理由はなにか? 業界平均よりはるかに高いが、どのような仕事内容なのか」

などと、怒涛の質問責めを受けました。

そもそも、納税額は以前と比べて増えているにもかかわらず、税務調査の対象となったことに不満を感じていたAさん。調査官の矢継ぎ早の質問がだんだん不愉快になってきました。その結果、

「そもそもなんでわざわざウチにきたんだ? 前よりもたくさん納税してやっているだろう。売り上げも伸びているから給料も増やしたし、車も買ったんだ。こんな暇があったら政治家でも調べたらどうだ?」と、調査官を煽ってしまったのです。

Aさんはその後の税務調査の対応もふてくされて真面目に答えず、時間が来たら追い出すように帰らせるという、決してやってはいけない対応をとってしまいました。

税務調査官の“逆襲”

税務調査官からすると、このような対応をされてしまってはますます調査に力が入ります。Aさんが真面目に答えないことから、調査官としては「はっきりと答えられない不正なことをやっているのではないか」と判断する材料となるためです。

税務調査のあと、税務署はAさんの外注先などに反面調査を行い、実態の確認を進めました。その後、Aさんのもとに再び調査依頼が。Aさんはしぶしぶ対応することに。

結局、外注先などの反面調査により、給料を外注費に変えたのはあくまで消費税対策のためであり、雇用関係であることには変わらないと判断されました。このため、外注費約5,000万円は給与とみなされ、源泉所得税の追加課税と消費税の大幅な課税が行なわれました。

また、高級車2台(計約1,200万円)も仕事で使っている実態がなく、社用車としての経費計上が否認されました。

そのほか、交際費のなかにあった知人との個人的な飲食やゴルフ、“視察”名目の海外旅行についても業務に関係ないとされ、否認。さらに、奥さんと子に対する専従者給与も、仕事の内容が変わっておらず、同業他社より過大に多いと否認……再調査の結果、Aさんには約1,000万円の追徴税額が課されることとなりました。

税務署への“非協力的な態度”は逆効果

いかがだったでしょうか? 調査官からの質問に対して真面目に答えなかったり、ましてや調査官を煽ったりと、税務署に対して非協力的な態度をとると、調査官も感情的になり、徹底的にやり返される恐れがあります。

また、筆者はよく「私はこんなに税金を払っているから税務署は調査にこないよね?」などと聞かれることがあります。しかし、この認識は誤りです。

税務調査は基本的に税金を多く払っている人ほど対象になる可能性が高まります。というのも、納税額が少ない場合、追徴税額があまりとれなさそうと判断され、調査対象から外される可能性が高くなるからです。

ここ数年急激に売上が伸びた、また最近流行りの業種などは税務署の目につきやすいため、慎重な納税申告が求められます。専門家としっかり話し合って“隙のない申告”を心がけましょう。

宮路 幸人

多賀谷会計事務所

税理士/CFP

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