止まらないしゃっくり「病気でもないのに大げさな」とも言い切れない…これだけ続いたら病院も検討したい「時間の目安」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月10日 7時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
しゃっくりをすることは誰にでもあるものですが、何時間も止まらないと、だんだん不安になってきます。とはいえ「しゃっくり程度で病院に行くのも大げさ?」と対処方法に悩むところです。本記事では米国老年医学の専門医である山田悠史氏による著書『健康の大疑問』(マガジンハウス)から一部抜粋して、「止まらないしゃっくり」について解説します。
止まらないしゃっくりは危ない?
しゃっくりを一度も経験したことがないという人はおそらくほとんどいないでしょう。しゃっくりはそれほど身近なものだと思います。しかし、しゃっくりが何なのか、なぜ起こるのか、考えてみたことがある人はあまりいないかもしれません。
そもそも、しゃっくりとは何なのでしょうか? しゃっくりは、「意図しない横隔膜の収縮」です。これでもまだピンとこないかもしれません。横隔膜というのは、胸とお腹を隔てる膜状の構造で、呼吸をするための筋肉でもあります。普段はこの筋肉が縮んだり緩んだりを繰り返すことで、人は呼吸を続けています。
一方、この筋肉が意図せず突然収縮してしまうと、人は急速に息を吸い込ま「される」ことになります。その後、空気の通り道にある声門と呼ばれる蓋が閉じ、息を吸い込む動きが止まります。この声門は、まさに声を生み出す場所でもあるのですが、この声門が閉じる際にしゃっくりの音が出るのです。そして、この一連の動きがしゃっくりというわけです。
しかし、この動きにどういう意義があるのかはよく分かっていません。一説によると、まだ赤ちゃんとしてお腹の中にいる間に、呼吸の訓練として起こる、プログラムされた横隔膜の運動が大人になって残ったものではないかとも考えられています1。
しゃっくりは、背の高い男性に多い傾向が報告されています2。これを読んでるあなたが高身長の男性であれば、しゃっくりに苦しむ確率は他の人より高いかもしれませんし、低身長の女性であれば、その確率は低いかもしれません。ただ、それもなぜだかはよく分かっていません。
基本的に、しゃっくりは病的でないことがほとんどで、特に48時間未満でおさまるものは多くが問題はないと報告されています3 4。一方、48時間以上続いてしまう場合には、背景に病気が隠れている可能性を考える必要があります。基本的には、横隔膜、または横隔膜と脳をつなぐ神経に何らかの刺激があると、しゃっくりが止まらなくなってしまうことが考えられます。
横隔膜の上側には、心臓や肺があり、下側には、胃や肝臓といった臓器があります。このため、例えば肺のがんや炎症、胃や肝臓の病気が原因で、止まらないしゃっくりが起こる可能性があります。私自身、「しゃっくりが止まらない」という人に肝臓のがんを見つけたり、肺の病気を見つけたりしたことがあります。
また、新型コロナウイルス感染症でも肺炎が起きますが、止まらないしゃっくりで病院を受診し、蓋を開けてみたら原因は新型コロナだったというケースも報告されています5。
あるいは、薬が原因となることもあります。最もよく報告されている薬はデキサメタゾンと呼ばれるステロイドの薬です2。実はこの薬、新型コロナウイルス感染症の治療薬としても使用されますが、その他に抗がん剤による吐き気どめとして使用されたり、喘息の治療で使用されたりもする用途の広い薬です。
このため、医師としてこの薬が原因のしゃっくりにもたびたび出会ってきました。このように、基本的には特に問題はない症状であるものの、48時間以上続いてしまった場合や、薬の投与を受けるたびに起こる場合には、病院で相談する必要があるといえるでしょう。
なお、しゃっくりの止め方は、それぞれ「自己流」があるかもしれませんが、基本的には、「迷走神経」と呼ばれる神経の働きを高めるような行動や横隔膜の動きを止めるような行動が有効ということが分かっています4。例えば、10秒程度の息止めをする、冷たい水を飲む、舌を引っ張るというような行動が有効だと報告されています2。
あくまでケースバイケースの報告であり、しっかりと研究されたものではないですが、危険性の少ない方法がほとんどであり、試す価値があります。また、しゃっくりには有効な薬もいくつか報告されており、しゃっくりが止まらない場合にはそれらの薬を使用することもできます。たかがしゃっくり、されどしゃっくり。しゃっくりも実は奥が深いのです。
1 Kahrilas PJ, Shi G. Why do we hiccup? Gut 1997; 41: 712–3.
2 Hosoya R, Uesawa Y, Ishii-Nozawa R, Kagaya H. Analysis of factors associated with hiccups based on the Japanese Adverse Drug Event Report database. PLoS One 2017; 12: e0172057.
3 Kolodzik PW, Filers MA. Hiccups (singultus): review and approach to management. Ann Emerg Med 1991; 20: 565–73.
4 Smith HS, Busracamwongs A. Management of hiccups in the palliative care population. Am J Hosp Palliat Care 2003; 20: 149–54.
5 Totomoch-Serra A, Ibarra-Miramon CB, Manterola C. Persistent Hiccups as Main COVID-19 Symptom. Am J Med Sci 2021; 361: 799–800.
山田 悠史
米国老年医学・内科専門医
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