仮想通貨で億り人のはずが、地獄へ…「ビットコイン」を購入した36歳サラリーマン、税務調査で告げられた「多額の追徴課税額」に撃沈【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月2日 11時30分
(※写真はイメージです/PIXTA)
仮想通貨取引に対する税務調査が年々強化されていることをご存じでしょうか? 億り人を夢見て投資しても、税務上の脇が甘いと、痛い目に遭うケースは少なくありません。本記事ではAさんの事例とともに、仮想通貨に関する税務調査について税理士事務所エールパートナーの木戸真智子税理士が解説します。
投資に積極的なサラリーマン、税務調査でまさかの…
36歳のAさんは都内の企業に勤めるサラリーマンです。フルリモートで仕事をするような、比較的自由な職場です。出勤時間をとられないこともあり、土日だけでなく平日も趣味にあてる時間の余裕があり、興味のあることはいろいろと挑戦してみることも多く、有意義に過ごしていました。
そんなAさんが興味を持ったのは投資。株式、FXも経験がありますが、コロナの影響でテレワーク勤務になる前から、ビットコインなどの仮想通貨に投資をしていました。
仮想通貨に投資する仲間とも交流があり、情報交換をしながら、いろいろな取引所で投資をしていました。時には投資仲間にすすめられて海外の取引所でも取引をすることもありました。いつかは仮想通貨で億り人に……そんな夢をみて、日々せっせと投資に費やしていました。
そんな日々を過ごしていたあるとき、Aさんのもとへ税務調査がやって来ます。
過去7年分の申告において、申告が漏れている箇所について、指摘されたのでした。Aさんとしては、適正に申告していたつもりでしたが、取引所をいろいろなところで投資していたこと、そして、投資仲間のすすめで海外取引所で投資していたものの、そのままにしてしまっていたものもあったため、確認が漏れて、申告できていないところもあったのでした。
Aさんは、仮想通貨を売却して、日本円に換金したときは税金がかかることは理解していたのですが、仮想通貨をほかの仮想通貨と交換した場合、仮想通貨で商品を購入するために決済した場合なども課税されることをAさんは知りませんでした。
Aさんは、複数の取引所でやり取りする際に、資金移動をしたり、仮想通貨をほかの仮想通貨と交換したり、仮想通貨で支払ったりしていたことがこの数年間で度々あったのです。
それらが積み重なって、累計5,000万円の申告漏れが発覚しました。結果、約1,600万円の追徴税額となってしまい、がっくりと肩を落とすのでした。
税務調査で狙われる「海外投資」を行う個人投資家
国税庁は2023年11月に令和4事務年度、所得税および消費税調査等の状況について公表しています。そのなかのトピックスとして、海外投資等を行っている個人に対する調査状況やインターネット取引を行っている個人に対する調査状況について記載されており、仮想通貨についての調査件数は前年比138%という高水準で調査が行われました。調査があった件数は、615件であり、そのうち申告漏れ等があった件数は548件でした。
海外投資等についても国税庁は積極的な調査を取り組んでおり、調査件数も前年比136%と増えています。調査件数2,784件のうち、申告漏れがあった件数は2,475件。本人が適正に把握して申告しているつもりでも、海外投資は申告が漏れやすいポイントでもあるので、しっかり自信でも把握したうえで投資をしていくことが重要です。
税務署に申告漏れがバレるワケ
税務署は本人の承諾がなくても預金口座を調査できます。この調査は本人だけでなく、家族の口座も調査対象になることもあります。
金融機関は過去10年分の入出金データを保存していることが多いため、税務署は過去まで遡って確認することが可能です。つまり、不自然な預金の動きがあれば、一目でわかってしまうのです。
さらに、税務署は他にも情報収集が可能になっています。税務署は専用のシステムによって、過去10年間分の収入や通帳等の財産を把握することができます。このシステムを国税総合管理システム(KSK)といわれています。
国税庁や税務署では、これにより納税者情報を管理しており、そこには給与や確定申告のデータが登録されているため、そこに記録されている所得状況と預金の状況を照らし合わせて調査をします。
これまでに蓄積された過去データがあるので、申告をすべき人がしていなかったりすると税務調査の対象やお尋ねの対象になることがありますし、膨大なデータをもとに照らし合わせることで高確率で発覚します。
申告漏れが発覚すると…
発覚したあとで支払う税金にはペナルティも課されてしまいます。さらに、ペナルティを課された記録も残ってしまうため、このような状況はできる限り避けるべきものになります。
仮想通貨の取引があった場合の「確定申告」
ここで、仮想通貨の取引があった場合の確定申告について、確認をしておきましょう。なかには、「仮想通貨の取引の利益が少しだけなら申告しなくてもいいのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
会社員などの給与所得者が副業で得た所得が年間20万円以下である場合には、原則として確定申告を行う必要はありません。ここで気を付けたいのは仮想通貨だけではなく「ほかのもの」も含めてということになります。
仮想通貨は「雑所得」という種類に含まれるので、同じく雑所得に分類される所得がほかにもあれば、それも合計することになるのです。
雑所得とは、たとえばどのようなものがあるでしょうか。よくあるケースとして下記があげられます。
FXでの収入ネットショップでの収入
印税・講演料などの収入
友人にお金を貸したときの利息収入
上記に限らず、副業として少し収入があったとすれば、それらも対象になります。意外と、幅広くありますので、仮想通貨だけで考えるとうっかり、申告漏れということもあります。
副業の所得が20万円以下でも申告が必要になるケース
そして、会社員などの給与所得者が副業で得た所得が20万円以下でも申告が必要になるケースもあります。それは年の途中で退職した場合です。年の途中で退職して転職しなかった場合には、年末調整をしていない可能性があります。その場合には、確定申告をする必要があります。
途中退職でも12月など年末に退職している場合には、退職の時点で年末調整をしているケースもあるので、退職のときに確認しておきましょう。
しかし、年末調整をしていても、もしかしたら住宅ローン控除や生命保険料控除を考慮していないこともあるので、その時は改めて確定申告をすることになります。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
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