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日本株式市場は「上昇する」と予想 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月2日 14時50分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

※本稿は、チーフリサーチストラテジスト・石井康之氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。2024年3月のマーケットを振り返り、「1. 概観、2. 景気動向、3. 金融政策、4. 債券、5. 企業業績と株式、6. 為替、7. リート、8. まとめ」のそれぞれについて解説します。

1.概観

【株式】

3月の主要国の株式市場は、堅調な展開となりました。米国株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)が公表した政策金利見通しで年内3回としていた利下げ予想を維持したことなどを受けて、投資家のリスク選好姿勢が強まり、続伸しました。NYダウは5ヵ月連続で上昇し、最高値を更新しました。欧州の株式市場は、長期金利の低下を受けてドイツDAX指数が最高値を更新するなど堅調な動きとなりました。日本の株式市場も、日経平均株価が4万円台に乗せるなど最高値を更新し、上値を追う展開となりました。日銀が金融政策決定会合でマイナス金利の解除を決めたものの、当面緩和的な金融環境が続くとの観測などから上昇しました。中国株式市場は、前月に大きく反発した影響もあり、上海総合指数、香港ハンセン指数ともに小幅な上昇となりました。

【債券】

米国の10年国債利回り(長期金利)は、FRBが公表した政策金利見通しやパウエルFRB議長のハト派発言を受け、FRBが6月にも利下げを開始するとの観測から小幅に低下しました。ドイツの長期金利は、欧州中央銀行(ECB)が経済予測で24〜25年のインフレ率見通しを引き下げたことなどを受けて低下しました。一方、日本の長期金利は、日銀が金融政策決定会合で大規模緩和政策を大きく修正したことを受け、小幅に上昇しました。

【為替】

円の対米ドルレートは、日銀が大規模緩和政策を大きく修正したものの、日米金利差が開いた状況が長く続くとの見方が優勢となり、151円台に下落しました。

【商品】

原油価格は、米国経済が堅調さを示したことやロシア産原油の供給が減るとの見方が強まり、需給の引き締まり状態が続くとの観測から上昇しました。

2.景気動向

<現状>

●米国の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.4%と、堅調な個人消費にけん引され、2四半期連続で高い成長となりました。

●欧州(ユーロ圏)の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%でした。高い金利が個人消費の重石となり、弱い動きが続いています。

●日本の10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.4%と、2四半期ぶりにプラスとなりました。設備投資が速報値から上方修正されました。

●中国の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%と、前期から伸びました。ただし、名目GDP成長率は同+3.7%と実質を下回りました。

●豪州の10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比+1.5%と、前期から減速しました。物価高で個人消費が伸び悩み、前期比は+0.2%でした。

<見通し>

●米国は、これまでの大幅な利上げに伴う景気抑制効果から、景気が緩やかに減速するとみられます。ただし、雇用が安定しており、個人消費が底堅いことや、企業収益が回復傾向にあることから、景気の急減速は避けられ、軟着陸(ソフトランディング)に至るとみています。

●欧州は、ECBの金融引き締めによる景気抑制効果により、低成長が続くとみられます。ただし、インフレの鈍化による購買力の回復に加えて、労働力不足に伴う底堅い雇用、財政の支援などが景気を支えるため、腰折れはしないとみています。

●日本は、1-3月期の実質GDP成長率については、自動車大手の生産中止の影響からマイナス成長が見込まれます。しかし、インフレの鈍化と賃金の上昇、経済対策の効果、インバウンド消費の増加、堅調な企業収益を背景に、緩やかな景気回復のパスに復調する見通しです。

●中国は、不動産市場の低迷や海外景気の減速で需要不足が続き、若年層の雇用悪化の影響などから個人消費も力強さを欠くことから、景気の回復ペースが鈍化するとみられます。ただし、政府が拡張財政を継続することから、急激な減速は避けられる見通しです。

●豪州は、中国景気の減速に加え、利上げの累積効果や、粘着質なインフレで家計の実質可処分所得が圧迫されることから個人消費が力強さを欠き、当面景気が緩やかに減速するとみられます。ただし、年後半の利下げ実施により、25年にかけては徐々に持ち直すとみています。

3.金融政策

<現状>

●FRBは、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利(フェデラルファンド(FF)金利5.25〜5.50%)を5会合連続で据え置きました。経済見通しでは年内3回としていた利下げ予想を維持しました。パウエル議長は会見で、量的引き締め(QT)のペースの減速を示唆しました。

●ECBは3月の理事会で、4会合連続で政策金利(預金ファシリティ金利4.00%など)の据え置きを決めました。あわせて公表された物価見通しは、前回予測から24年、25年とも下方修正されました。ただし、ラガルド総裁は記者会見で、「利下げの議論は今回しなかった」と述べました。

●日銀は3月の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策を大きく修正しました。マイナス金利政策の解除に加え、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上場投資信託(ETF)などリスク資産の買い入れ終了などを決めました。

<見通し>

●FRBは、インフレ動向をにらみながら、当面現状の政策金利を維持するとみられます。今後は、インフレの鈍化傾向に伴う実質金利上昇を回避するため、24年7月に利下げを開始し、年内の利下げ回数(1回=0.25%)は2回になると想定しています。

●ECBは、高止まりしているコアインフレを抑制するため、現状の政策金利を当面据え置くと予想しています。欧州景気が停滞していることから、ECBは24年6月に利下げに転じ、以降四半期ごとに0.25%の利下げを行うとみています。

●日銀は、景気が力強さを欠いていることから、当面現状の金融政策を維持し、先行きの利上げはゆっくりとしたペースで実施するとみています。政策金利(無担保コール翌日物金利0.0〜0.1%)は、25年の4月、10月にそれぞれ0.25%の引き上げを想定しています。

4.債券

<現状>

●米国の10年国債利回り(長期金利)は、物価指標がインフレ圧力の根強さを示したものの、FRBが公表した政策金利見通しやパウエルFRB議長のハト派発言を受け、FRBが6月にも利下げを開始するとの観測から小幅に低下しました。

●ドイツの長期金利は、ECBが経済予測で24〜25年のインフレ率見通しを引き下げたことや米長期金利が低下したことなどから低下しました。

●日本の長期金利は、日銀が3月の金融政策決定会合で大規模緩和政策の撤廃を決めたことを受け、小幅に上昇しました。

●米国の投資適格社債については、投資家のリスク選好姿勢の強まりで社債スプレッド(国債と社債の利回り差)が縮小しました。

<見通し>

●米国の長期金利は、FRBが先行き利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。

●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。

●日本の長期金利は、日銀による利上げペースは緩やかとみられるものの、先行きの利上げが意識され、小幅ながら上昇すると予想します。

5.企業業績と株式

<現状>

●ファクトセット(FactSet)によれば、S&P500種指数の3月の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+10.3%となり、7ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。また、TOPIXの2月予想EPSは前年同月比+16.7%となり、10ヵ月連続で過去最高水準を更新しました。

●米国株式市場は、NYダウやS&P500種指数が最高値を更新するなど、上昇しました。FRBが公表した政策金利見通しで年内3回としていた利下げ予想を維持したことや、パウエルFRB議長のハト派発言を受けて、投資家のリスク選好姿勢が強まりました。

●日本株式市場は、日経平均株価が4万円台に乗せ、最高値を更新するなど、続伸しました。日銀が金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除を決めたものの、当面緩和的な金融環境が続くとの観測が広がり、好調な企業業績を背景に引き続き上値を追う展開となりました。

<見通し>

●米国株式市場は、インフレが減速傾向にあるなか、米景気が堅調さを保っていることから、今後も米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。先行きのFRBによる利下げが視野に入るなか、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、投資家のリスク選好姿勢は継続するとみられます。このため、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。

●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちを背景とした企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。これまでの上昇スピードの速さから調整リスクはあるものの、業績相場に入ることで下値は限られそうです。また、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISA(少額投資非課税制度)の資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。

6.為替

<現状>

●円の対米ドルレートは、151円台に下落しました。日銀のマイナス金利政策解除の観測から月中旬に円高に振れましたが、実際に日銀が大規模金融緩和を大きく修正すると、日米金利差が開いた状況が長く続くと見込んだ円売り・ドル買いが優勢となり、円安が進みました。

●円の対ユーロレートは、日銀がマイナス金利政策の解除したものの、緩和的な金融環境を維持する姿勢を示したことから下落しました。

●円の対豪ドルレートも、日豪金利差が開いた状況が長く続くと見方などから下落しました。

<見通し>

●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。当面はもみ合い推移が続くものの、先行きはFRBの利下げ開始と日銀の利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。

●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きは豪州中銀の利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇すると予想しています。

7.リート

<現状>

●グローバルリート市場(米ドルベース)は、米欧の長期金利が低下したことを好感し、上昇しました。S&Pグローバルリート指数のリターンは前月末比+2.2%でした。また、円ベースのリターンは、為替効果がプラスに寄与し、同+3.3%となりました。

●米国は、長期金利が小幅に低下するなか、小幅に上昇しました。欧州や豪州は、長期金利の低下を好感して大きく上昇しました。日本は、これまで警戒されていた日銀のマイナス金利解除が実施され、日銀が当面緩和的な金融環境を維持する姿勢を示したことを好感して、大きく反発しました。

<見通し>

●グローバルリート市場は、先行き米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

●米国は、FRBによる利下げ開始に伴う長期金利低下や景気のソフトランディングから、レンジを切り上げるとみています。欧州は、米国に連動するとみています。アジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。日本は、オフィス空室率の改善を背景に上昇するとみています。

8.まとめ

【債券】

●米国の長期金利は、FRBが先行き利下げに転じるとみられることから、緩やかに低下する展開を予想します。市場は利下げを一定程度織り込んでいるとみられるため、当面はもみ合うものの、景気減速とインフレの低下に伴い、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。

●欧州の長期金利も、ECBが利下げに転じるとみられるため、米長期金利に連れて緩やかに低下する展開を予想します。

●日本の長期金利は、日銀による利上げペースは緩やかとみられるものの、先行きの利上げが意識され、小幅ながら上昇すると予想します。

【株式】

●米国株式市場は、インフレが減速傾向にあるなか、米景気が堅調さを保っていることから、今後も米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。先行きのFRBによる利下げが視野に入るなか、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、投資家のリスク選好姿勢は継続するとみられます。このため、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。

●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちを背景とした企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。これまでの上昇スピードの速さから調整リスクはあるものの、業績相場に入ることで下値は限られそうです。また、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISAの資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。

【為替】

●円の対米ドルレートは、米金利の低下に伴い、緩やかに上昇すると想定します。当面はもみ合い推移が続くものの、先行きはFRBの利下げ開始と日銀の利上げによる日米金利差縮小が円の上昇要因となるとみています。ただし、日銀は連続的な利上げを急がず、円の上昇余地は限られそうです。

●円の対ユーロレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きはECBによる利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇するとみています。

●円の対豪ドルレートは、当面レンジ内でもみ合うものの、先行きは豪州中銀の利下げと日銀の利上げが意識され、緩やかに上昇すると予想しています。

【リート】

●グローバルリート市場は、先行き米欧の中央銀行の利下げに伴い長期金利の低下が見込まれ、借り入れコストが改善することや、米景気のソフトランディングにより世界景気が底堅く推移し、賃料収入の安定推移が期待できることから、回復基調を辿ると予想します。

●米国は、FRBによる利下げ開始に伴う長期金利低下や景気のソフトランディングから、レンジを切り上げるとみています。欧州は、米国に連動するとみています。アジア・オセアニアは、景気の回復基調を背景に緩やかに上昇するとみています。日本は、オフィス空室率の改善を背景に上昇するとみています。

(2024年4月2日)

石井 康之

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフリサーチストラテジスト

※上記の見通しは当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。今後、予告なく変更する場合があります。

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日本株式市場は「上昇する」と予想 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】』を参照)。

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