もったいない!…設備メーカーに勤める55歳“普通の”サラリーマン「嘱託勤務」の予定が一転、「高い給与で」転職に成功したワケ【人材開発コンサルタントが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月13日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
同じ会社に長く勤めてきたミドル・シニア世代にとって、「この年齢から新たに職を探すなんて遅い」と諦めている人も多いのではないでしょうか。しかし、この世代には「勤続」してきたからこその強みがあると『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)著者で人材開発コンサルタントの田原祐子氏はいいます。設備メーカー技術者のYさん(55歳)の事例をもとに、ミドル・シニア世代ならではの強みをみていきましょう。
ミドル・シニア世代に蓄積されている、「深化・進化」した知識
「座学知」と「経験知」はまったく異なる
まず、何よりも先にお伝えしたいのは、あなたが長年仕事をしながら蓄積してきた知識は、仕事の経験がなく座学で学ぶ知識や、新入社員が入社したてのころに学ぶ知識とは、内容・質・量・深さといった有用性が、まったく異なるということです。
たとえば、自動車販売の田村さん(仮名)の場合、同じ自動車に関する知識であっても、実際にお客様に説明したり、運転しながらお話しする内容は、決して座学では得られないレベルのものでしょう。お客様との会話や営業、アフターフォロー等、「経験を通じて」得られる知識に違いありません。
少し細かい定義で恐縮ですが、英語の「ナレッジ」を日本語にすると、「ナレッジ=知識」と翻訳されてしまいます。
一方で、英語におけるKnowledgeの本来の意味は、文字通り「経験を通じて得られる知識」です。
あなたには、さまざまな専門領域の知識だけでなく、専門分野に関連するさまざまな領域の知識、汎用的な知識も蓄積されています。
上の図は、長年の経験や実践の蓄積があるからこそ、一般的な知識でない、生きた貴重な知識「経験知・暗黙知」が蓄積されている様子を表したものです。
この図は、今後、あなたの仕事の対象となる領域を広げ、ご自分でも「思わぬ新しい才能を開花させるヒント」となる貴重なものです。ぜひ、ご自身の知識を細かく棚卸しするための助けにしてみてください。
仕事をしてきた「エリア」の情報は、貴重な「無形資産」
じつは、「あなたは、仕事をどの地域(エリア)でしてきましたか?」という問いは、あなたが営業や技術のみならず、たとえ、どのような仕事をしていたとしても、もれなく活用することができる、貴重な「無形資産」です。
次に紹介するのは、Yさんが、実際にご自分が長年仕事をしてきた地域の知識・情報や人脈を活かして、その地域での活動が未経験の企業に価値を認められ、望まれて就職した事例です。
【事例】“普通のサラリーマン”が高い給与で転職できたワケ
入社以来、20数年九州エリアを担当した経験が思わぬ活路に繋がる
Yさんは、長年、設備メーカーの技術部門を担当しています。本社勤務は、新入社員として入社して3カ月間だけ。その後は、ずっと全九州エリアの営業所を転々としてきました。設備のメンテナンスが必要であれば九州の隅々まで出かけて行っては、機器のメンテナンスを手がけます。
特に難易度が高いメンテナンスではないので、若手の社員でも対応できるのですが、長くこのエリアを担当してきたYさんは、いわゆる「顔役」の状態になっており、メーカーのみならず、いろいろな地域の役所や公民館、商店街等にもちょくちょく顔を出し、大変頼りにされる存在となっていました。
また、かれこれ30年近くも九州全域、島しょ部まで網羅してまわっているので、各地域の気質や細かい商流等も熟知しています。そんなYさんも55歳が間近となり、長年勤めた会社からは、嘱託での慰留の提案がありました。
ところが、ある友人に、ひょんなことから嘱託の話をしたところ、友人が、「もったいない! Yさん、九州全域に顔が利くんでしょう? 九州と言えば、私は九州に進出したい企業を知っているから、そこに紹介してあげますよ!」と、ある企業に繋いでくれたのです。
早速、Yさんは面接に臨み、晴れて今以上の高給優遇で、3年間の顧問契約をすることになりました。
企業が喉から手が出るほど欲しい、「エリアを熟知している人材」
じつは、こうした事例はよく聞きます。
世の中には、その地域に明るい方々に対する求人や顧問としての関わりを求める依頼は、必ず一定数あります。
特に、未開拓の地域で新たに事業を展開・進出したい企業にとっては、Yさんのようにエリアを熟知している人材は、その状況をよく知っているだけでなく、「新規事業売り込みのための、地域の企業との面談のセッティングや、初回面談のアポイントが容易に取れる」ことから、喉から手が出るほど欲しい人材です。
Yさんの事例のような「地域との繋がり」は、無形資産の中でも、重要な「社会・関係資本」と言われるものです。
地域だけでなく、ご自身が培ってきた「商流」も、非常に価値があります。自社商品とバッティングしなければ、退職後に別の商品を売ることができるかもしれません。また、言わずもがな、「人脈」についても同様に、スタートアップから老舗まで、こうした人材を喉から手が出るほど欲しがっている企業は少なくないのです。
そして、これらはすべて、長年の経験知の蓄積があるからこそ形成されていく大切な資産であり、時間をかけなければ紡げない強みでもあります。
そして、「これらの社会・関係資本をどう活かすか」という鍵を握っているのは、あなたのもっとも貴重な経験知なのです。
田原 祐子 人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者
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