歩く速度が遅い人は要注意…ボストン大学が明かした、「認知症になる人」と「ならない人」の決定的な差【理学療法士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月22日 10時15分
※画像はイメージです/PIXTA
歳を取ってから身体機能の衰えを感じ、ますます運動をしなくなったという人は少なくないでしょう。しかし、普段の運動習慣と認知症には密接な関係があると、リタポンテ株式会社取締役であり理学療法士の上村理絵氏はいいます。本記事では、同氏による著書『こうして、人は老いていく 衰えていく体との上手なつきあい方』(アスコム)から、認知症を予防する方法について解説します。
肉体と精神の老化は、認知機能の低下にもかかわる
もの忘れが増えてきた、今日あったことを思い出せない。年を重ねてくると、認知機能が低下し、このようなことが起こってきます。もしも認知症だったら、どうしよう。こんな認知症への不安が、「精神的な老化」へとつながっていきます。
「肉体的な老化」と「精神的な老化」は相互に関係しあいます。「肉体的な老化」を改善することで、認知機能の低下を防ぐこともできるのです。
「認知機能」という言葉には扱う分野によってさまざまな意味がありますが、高齢者の健康に関して用いられる場合には、主に記憶、計算、判断、理解、学習、思考、言語など、脳の高次の機能を表します。この認知機能と身体機能は、相互に密接に関連しているのです。
米国・ボストン大学の研究チームが、認知症や心疾患のない2770人の男女を平均年齢48.7歳のグループと同71.3歳のグループに分けて、調査を行いました。その結果、いずれのグループでも、ウォーキングなど、中~高強度の身体活動を1日10~20分行っている人は認知機能が良好であるとの傾向が見られたのです。
また、平均年齢48.7歳のグループでは、中~高強度の身体活動をわずか10分行っているだけでも、言語記憶の良好さが示されました。
WHOガイドライン「認知機能低下および認知症のリスク低減」においても、身体的な活動と脳の健康との関連が認められています。追跡期間が10年を超える大規模な研究により、身体活動をする人は、しない人に比べて、認知機能低下、認知症、血管性認知症、アルツハイマー病などの発症リスクが低かったことが報告されているのです。
運動を行うには、もちろん、それだけの身体活動を可能にする機能が維持されていなければなりません。つまり、身体機能が低下すれば、それにつれて認知機能も低下することが避けられないのです。認知機能を正常に保ち、さらに向上させるためには、身体機能の維持に努めること、すなわち「肉体的な老化」を止めることが大切になってきます。
認知機能が下がると、身体機能も下がる…負のループを断ち切るために
歩くのが遅い人は、認知症の発症リスクが高い一方、認知機能に問題が生じたときには、身体機能にどのような影響があるのでしょうか。
認知機能が低下すると、物事を自分で管理するのが難しくなります。それまでの生活習慣を守るのも容易でないため、活動量を維持できず、身体機能も低下するのが一般的です。
さらに、認知機能の低下は、身体機能の低下に直接結びついていきます。なぜなら、人は、体を動かすときには、認知機能と身体機能を同時に働かせているからです。
一例として、「歩く」ということについて、考えてみましょう。「歩く」という行為には、注意力、実行力、空間認識力などが必要とされます。そのため、認知機能が衰えている場合には、歩くことに何らかの影響が表れるのです。
実際、世界の複数の国・研究機関の調査によって、認知機能が低下している人は歩行速度が遅くなることが明らかにされています。あわせて、歩行速度が遅くなっている人は、遅くなっていない人に比べて、認知症の発症リスクが高いとの研究結果も示されています。
歩行という最も基本的な動作にさえ、認知機能の低下がこれだけの影響を与えるのです。より複雑な動作での影響の大きさは、あらためていうまでもありません。
認知機能が低下すれば、身体機能は十分に働かず、活動の強度は下がり、その量も減ってしまいます。そうなると、身体機能も必然的にさらに低下してしまうのです。
繰り返しますが、認知機能と身体機能は相関関係にあり、一方が低下したときにはもう一方もまた低下する可能性が非常に高くなります。認知機能を下げないためにも、身体機能を改善するリハビリにぜひ取り組んでほしいのです。
上村 理絵 理学療法士 リタポンテ株式会社 取締役
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