月収41万円のサラリーマン「年金繰り下げで月額24万円」の試算にホクホクも…捕らぬ狸の皮算用となった、悲しすぎる理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月6日 11時15分
![月収41万円のサラリーマン「年金繰り下げで月額24万円」の試算にホクホクも…捕らぬ狸の皮算用となった、悲しすぎる理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_59419_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
年金だけで老後生活を送るのは心もとないが「年金の繰下げ受給」を行えば、年金受給額を増やすことは可能だ。しかし、単純に金額だけ見て繰り下げを決断するのは待ってほしい。年金の繰り下げ受給にはメリットだけでなく、デメリットもある。
平均的なサラリーマン「年金だけで老後生活」はかなり厳しい
全日本国民の関心ごとといっても過言ではない「年金の受取額」の問題。すでにさまざまなメディアが報道しているように、年金だけを原資に老後生活を送るのは、かなり厳しいを言わざるを得ない。
厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めた老齢年金が14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均年金月額は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円(厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』より)となっている。
消費支出のほうは、65歳以上の単身者の場合、14万9,033円(総務省『2023年度 家計調査 家計収支編』より)となっている。
数字を単純計算して「これならいけるのでは…?」と思った方もいるだろうが、現実問題、それほど簡単ではないようだ。
◆高齢者の1ヵ月の平均支出
消費支出…14万9,033円
(内訳)
食料…42,049円
住居…23,799円
光熱・水道…13,045円
家具・家事用品…5,760円
被服及び履物…4,447円
保健医療…7,367円
交通・通信…21,654円
教育…2円
教養娯楽…18,794円
その他の消費支出…30,704円
※ 数値「65歳以上単身者(勤労)」の場合
まず、年金額自体は「額面」であり、そこから税金や社会保険料などが引かれる。居住地域や家族構成などによって金額に差はあるが、受け取れる額は額面の85~90%といったところだ。平均的な年金受取額は、14.2万~15万円程度で、家計調査の結果となる金額には、やや不足というケースが多いと考えられる。
また「平均年金月額」とはいえ、こちらに届かない人も少なくない。これらを考えると、年金だけで暮らせる人は、かなり限られていると推察される。
年金受取額が増額される一方で、見落としがちなデメリットも
年金を増額するための選択肢として「年金の繰下げ受給」という方法がある。65歳で年金を受け取るところ、66~75歳に繰り下げると、1ヵ月受給を遅らせるごとに0.7%、最大84%まで年金が増額される。
定年前に月収41.6万円、年収674万円を受け取っている平均的なサラリーマンが、年金の受給を遅らせるとどうなるだろうか?
このサラリーマンが、65歳で平均的な年金額16.7万円を受け取れるとしよう。その場合、年金を70歳まで年金を繰下げると、月の受取額は23.7万円まで増額されるのだ。
65歳から5年ほど頑張って仕事を継続し、年金の受給をガマン。そうすれば、42%も増額した年金で、ゆとりあるリタイア生活をエンジョイできる――。
そんな明るい将来が垣間見えるかもしれない。
しかし、そこには落とし穴もある。
まず、早く亡くなれば損をするという、至極当然の話だ。上記の例なら、70歳を待たずに亡くなれば、受取金額はゼロ。もし繰下げ受給を開始しても、亡くなるタイミングによっては「65歳から年金を受け取った場合の総額」を下回ることもある(『【早見表】年金はいつ受け取るのが得?「額面」と「手取り額」の損益分岐点』参照)。
また「税金や社会保険料の負担が増える」という点にも注意すべきだ。現役時代、せっかく給与が増えても天引き額まで増額され、がっかりした経験をもつ人は多いのではないだろうか。年金の繰り下げによる増額も、これと同じことが起こる。通常通り受給していたら住民税の非課税世帯だったのに、繰り下げて金額が増えたことで適用外となり、大きく手取り額を減らしてしまうこともある。
さらに「加給年金」「振替加算」が受け取れなくなる点にも注意だ。
加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある人が65歳到達時点で、その人に生計を維持されている65歳未満の配偶者、または18歳になった年の3月31日を迎えていない子がいるときに加算される年金。振替加算は、配偶者が65歳を迎えるなどで加給年金が打ち切られたあと、配偶者の老齢基礎年金に対し年齢に応じた加算が受けられる制度。どちらも繰下げ受給を選択したことでもらえなくなってしまう。
繰下げ受給には、このようなデメリットもある。
繰下げ受給は長生きすれば得するが、何歳まで生きられるかは誰にもわからない。なにより、健康状態、生活の状況、考え方等により、いつからの年金受給が妥当かは人それぞれだ。
年金の仕組みを正しく理解せずに、計算結果だけ見て繰り下げ受給を決断すれば、結果的に「捕らぬ狸の皮算用」となり、後悔することになりかねない。
繰下げ受給をする場合は、年金事務所で確認してもらいつつ、慎重なシミュレーションをすることが望ましいといえる。
[参考資料]
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
年金を増やすなら「繰下げ」か「新NISAで運用」か…“究極の二択”に悩む64歳会社員が出した「意外な結論」【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月1日 11時15分
-
「基本月額」+「総報酬月額相当額」が50万円を超えたら、年金が減る? その場合、受け取るはずだった年金はどうなるの?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月28日 23時0分
-
来年、65歳で定年退職を迎えるのですが、生活費が心配です。年金の繰下げ受給はしたくないのですが、ほかによい方法はないでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月26日 23時0分
-
来年60歳になる自営業の夫婦です。年金の「繰下げ受給」を検討していますが、実際の利用者はどのくらいいますか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年6月14日 10時0分
-
年金の繰下げ受給してよかった!70歳男性「年金月24万円」に増額に歓喜も、自らの選択を後悔する「年金の真実」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月12日 9時45分
ランキング
-
1ミラノ風ドリア「480円→290円」で売上数3倍…創業者が「サイゼリヤの料理は、まずくて高い」と語る深い理由
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 8時15分
-
2寝るときにエアコンが欠かせません。電気代が安いのは「冷房」と「ドライ」どちらでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年7月4日 2時0分
-
3Q. 納豆をより健康的に食べるには、どのような食べ合わせがおすすめですか? 【管理栄養士が解説】
オールアバウト / 2024年7月2日 20時45分
-
4なぜ免許証とマイナカード「24年度末」までに一体化? 紛失したら運転できない? 国民にメリットあるのか
くるまのニュース / 2024年7月4日 9時10分
-
5定年後に、見落とすと厄介な出費「3選」とは?
オールアバウト / 2024年7月3日 21時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)