米ドル/円に潜む「大幅な円高」の可能性…為替のプロが注目する「円安阻止介入」と「米国株安」の動向
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月9日 10時15分
![米ドル/円に潜む「大幅な円高」の可能性…為替のプロが注目する「円安阻止介入」と「米国株安」の動向](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_59432_0-small.jpg)
(※画像はイメージです/PIXTA)
2週間にわたり、151~152円中心という狭いレンジでの値動きとなっている米ドル/円。長く続いた小動きで、溜まったエネルギーの発散により一方向へ大きく動きだす可能性があると、マネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏は指摘します。今週の相場の展開予測を詳しくみていきましょう。
4月9日~4月15日の「FX投資戦略」ポイント
〈ポイント〉 ・米ドル/円は先週も151~152円中心のレンジ・ブレークに至らず。 ・わずか1円レンジの小動きもすでに2週間以上続いており、今週はさすがに抜ける可能性あり。ただ、投機筋の米ドル買いポジションはかなり大きくなっており、円安阻止介入の可能性もあることから、基本的に米ドル高余地は限られ、米ドル安の場合のリスク大。 ・今週の米ドル/円予想レンジは147.5~153.5円。
先週の振り返り…151~152円中心の小動きが継続
注目された金曜日の米3月雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)など予想より強い結果となりました。これを受けて米金利が上昇、米ドル/円も上昇しましたが、過去2週間以上続いている151~152円を中心とした、変動幅がほぼ1円という狭さの状態が継続し、結局先週も完全に抜けるまでには至りませんでした(図表1参照)。
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ところで、このような米ドル高値・円安値圏で横這う、最近にかけての動きは、日米金利差が変化したことの影響が少なくなっているという印象があります(図表2参照)。
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日米金利差の変化へ反応せず、米ドル高・円安傾向が続いていることを正当化できる要素としては、投機筋の円売り拡大が考えられるのではないでしょうか(図表3参照)。
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投機筋の代表格であるヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジション(対米ドル)は先週、売り越しが年初来の最高を更新、14万枚以上に拡大しました。ちなみに、この14万枚以上の円売り越し(米ドル買い越し)という記録は、2013年12月と並んで、過去最高の2007年6月の18万枚以来の大幅となります(図表4参照)。
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2006~2007年は、円の売り越しが突出して拡大したといった意味で「円売りバブル」が起こった時期だったと言ってもよいでしょう。その主因は、日米の政策金利差の「米ドル優位・円劣位」が5%以上にも拡大したためと考えられます。最近の日米の政策金利差も、この2007年以来の5%以上に拡大しています。
以上を踏まえると、最近にかけて展開している円売りは、「円売りバブル」が起こった2007年と同様、大幅な日米金利差による「円劣位」を受けて、圧倒的に円売りが有利ななかで展開している可能性が高いのではないでしょうか。
そうであれば、円安傾向がさらに続くか、それとも反転するかは、大幅な日米金利差を受けた投機筋の円売りが続くか否かが最大の焦点になると考えられます。
通貨当局の責任者である神田財務官は3月29日、「(円安は)ファンダメンタルズに沿ったものとは到底言えず、背景に投機的な動きがあることは明らか」と発言し、まさに投機主導の円安を強くけん制しました。つまり、投機的円売りが続くか否かの1つの焦点は、当局による「円安阻止介入」との攻防ということになるでしょう。
円安阻止介入は、直近では2022年9~10月に行われましたが、それらを参考にすると、今回の場合は過去2週間以上続いてきた151~152円の狭いレンジを抜けて「米ドル高・円安」が広がるようなら、いつ介入が実現してもおかしくないのではないと推測されます。そして、2022年の円安阻止介入は3回ありましたが、すべて介入が行われた当日に最大5円前後の米ドル急落が起こりました。このため、今回の場合も、介入が実現したあとは、一時的に「米ドル安・円高」に大きく戻す可能性があります。
これまで見てきたように、投機筋はすでに米ドル買い・円売りポジションに大きく傾斜している可能性が高そうです。このため、介入の有無にかかわらず、さらなる「米ドル買い」の余力は、徐々に低下している可能性があります。その状況のなかで、米ドル下落のリスクが高まった場合は、米ドル買いポジションの損益確定売りが広がることも考えられます。
以上を踏まえると、基本的にはさらなる米ドル高・円安が進む余地は限られ、リスクとしては、「米ドル安・円高」に振れた場合に大きくなるのではないでしょうか。
今週の注目点…円安阻止介入、米国株安など
今週はCPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)といった米インフレ指標発表が予定されています(下記参照)。米景気が予想以上に強さを見せていることに加えて、中東の地政学リスクを受けた原油価格の上昇などから、インフレへの懸念も再燃の兆しがあり、CPIなどの結果にも注目が集まることになるでしょう。
〈10日〉 3月CPI総合=前回3.2%、予想3.5% 同コア=前回3.8%、予想3.7% 〈11日〉 3月PPI総合=前回1.6% 同コア=前回2.0%このように、インフレへの懸念が再燃する兆しが出てきたことから、米利下げへの期待の後退が広がってきました。それは、米国株などの下落をもたらす主因になってきたようです。NYダウの90日MA(移動平均線)かい離率は一時10%近くまで拡大し、短期的な「上がり過ぎ」懸念が強くなっていました(図表5参照)。
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そんな「上がり過ぎ」の反動が、米利下げへの期待の後退をきっかけに広がっていると考えられます。この株安の広がり方次第では、この先、米金利の低下を通じて「米ドル安(円高)」の要因になってくる可能性もあります。
今週は、2週間以上も続いてきた151~152円を中心とした狭いレンジをいよいよ抜けてくるかもしれません。その場合は、長く続いた小動きで溜まったエネルギーの発散により、一方向へ大きく動きだす可能性があります。
ただ、投機筋などは「米ドル買い・円売り」にポジションが大きく傾斜していると見られることから、基本的に米ドル高・円安の余地は限られるのではないでしょうか。そのうえで、円安阻止介入が実現する可能性もあり、その場合は、米ドル買いポジションが逆流する可能性もあります。以上を踏まえ、今週の米ドル/円予想レンジは、147.5~153.5円を想定します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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