〈マンション管理人〉でも〈起業〉でもない…定年後の「最強の働き方」とは【シニアキャリアコンサルティングが助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月8日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
今のシニア世代は、体力も気力も旺盛な人が少なくありませんが、定年退職後の再就職先を考える際には注意が必要です。「肉体を駆使するような仕事や精神的にストレスの大きい仕事は避けたほうが賢明」と、行政書士でリスタートサポート木村勝事務所代表の木村勝氏は言います。今回は、木村氏の著書『老後のお金に困りたくなければ 今いる会社で「“半”個人事業主」になりなさい』(日本実業出版社)より、老後に最適な働き方について見ていきましょう。
シニアからの「独立」は、体力・メンタル面で無理をしない
シニア世代と呼ぶことが憚られるほど今の50代・60代は元気です。しかしながら、30代・40代と同じようにはいかず、明らかに身体面で衰えています。たとえ今のところ健康上に大きな問題がないとしても、肉体を駆使するような仕事や精神的にストレスの大きい仕事は避けたほうが賢明です。
2022年8月発売の「週刊現代」で、「『ビンボー老後』を招く『65歳の壁』」という特集が組まれたことがあります。筆者もコメントを寄せているのですが、この特集記事では、「稼いでいるのに身体が壊れ、寿命が縮んでいく」悲惨な事例が紹介されています。
シニアからの職業としては、警備、マンション管理、清掃などが思いつきます。マンション管理の仕事の実態を記事からの引用で紹介します。
《朝6時半に出勤してゴミ置き場に溜まっている大量のゴミを仕分けて移動させる。それだけでヘトヘトなのに、終わったら共用部分を上から下まで掃き掃除。昼に一息つけるかと思うと、今度は住民に雑用を頼まれたり「掃除の仕方が甘い」と叱られたり。本社に「あの人はいるだけで何もしていない」とクレームを入れられたときは、さすがに気がめいりました》(週刊現代、2022年9月3日・10日号、P42)「働くついでに体も鍛えよう」などと考えて、炎天下での交通誘導員など、安易に体力が必要な仕事に就くと、長続きしないばかりかケガや病気を招きかねません。
さまざまな仕事にチャレンジしてみるのはよいことですが、自分の体力や適性も踏まえたうえで慎重に踏み出すことも必要です。シニアになってから体調を崩すことは避けなければいけません。安易に健康のためという考え方は危険です。
多額の初期投資が必要な独立は避ける
退職金をすべてつぎ込むような多額の初期投資が必要な「独立」も避けたほうが賢明です。「起業」ではなく「独立」の場合、ほとんどのケースでオフィス新設の必要はありません。自宅で十分です。“独立したら(元の会社の同僚が来ても恥ずかしくない)駅前の一等地に立派な応接セットをそろえたオフィスをかまえたい”と思う方もいらっしゃるかと思いますが、そこは見栄を張らずにガマンです。
55歳から準備して、60歳で「“半”個人事業主」を目指す
「果たして前述のポイントをクリアするような『独立』など本当にあるのか?」と疑問に思った方もいらっしゃるかもしれません。
これまで出てきた留意ポイントをクリアする方法があります。それが「“半”個人事業主」という働き方です。
“半”個人事業主とは、「今いる会社」(あるいは、今いる会社と関係が深いグループ会社など)と「現在担当している業務」で「業務委託契約」を締結して働く働き方です。会社と縁を切ることなく、今までの業務の延長線上で業務を担い、自分の独立の基盤とします。
クライアントは、“既納先”です。既納先という言葉は、自動車販売会社の営業がよく使う言葉で、すでに自社の車を使っていただいているお客様のことを言います(今まで他社の車に乗っていたお客様や新たに車を買われるお客様は、“新規顧客”と言ったりします)。
今の勤めている会社は、あなたにとって長年契約を続けていただいている“優良既納先”です。あなたが提供するサービスレベルや人柄、実力まですべて知っています。自動車の営業でも“既納先”を逃さないことが活動の最優先になります。既納先をつなぎ止める労力に比べると、新規顧客を開拓することは時間も労力も倍以上かかります。
たとえば、まったく新規のクライアントと契約を締結するためには、次のプロセスを経ることが必要になります。
プロセス① 潜在的なクライアント候補を見つけるプロセス② 自分の提供する商品を理解し興味を持ってもらう
プロセス③ 商品を提供する会社として信頼してもらう
プロセス④ 商品にお金を払ってもらう
それぞれのプロセスごとに高いハードルがあります。独立(=新規顧客開拓)が難しいと思われる理由です。準備期間なしに、ゼロから商品を作り、売り込んで契約締結まで持ち込むためには、それなりの時間もお金も体力も必要です。
これが今まで雇用で勤務してきた会社との契約であれば、くどくどとセールストークをしなくても①から④のプロセスを省略できます。
今勤務している会社は、①優良既納先であり、②あなたはすでに商品を提供しており、③提供する商品レベルについても会社は知っており、④すでに値決めもできています。
多くのシニア向けの起業本や定年後の働き方本では、「すでに売れる商品(スキル、ノウハウなど)を持っている」「会社から完全に離れて独立・起業する」ことを前提に話が始まりますが、実際には30年以上サラリーマンをやってきた人間がいきなり独立・起業するのはハードルが高いです。また、よほどの実力・人脈の持ち主でもない限り、いきなりコンサルタントや講師・顧問などになるのも難しいでしょう。
もちろん、十分に時間をかけて準備をすれば、日本のシニアサラリーマンは長年かけて培った目に見えない経験・スキル・知識を持っていますので、実は可能なのですが、軌道に乗るまでにどうしても時間がかかります。
多くのシニアサラリーマンが「独立」に対してどうしても自信が持てずに踏み切れない理由は、このあたりに原因がありますが、この課題をクリアするのが“半”個人事業主として独立するシナリオです(図表)。
木村 勝
行政書士
リスタートサポート木村勝事務所 代表
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