節税効果で注目の「マイクロ法人」だが…得するつもりが損してた!とならないために知っておくべき「2つのデメリット」【新進気鋭の税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月15日 12時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
個人事業主の節税対策として注目を集めている「マイクロ法人」。個人事業主がマイクロ法人を設立することで、個人と法人それぞれの「良いとこ取り」ができ、大幅な節税が期待できるのがメリットです。しかし、マイクロ法人にはメリットしかないのかといえば、そうではありません。きちんとデメリットも理解した上で、このスキームを使うか検討する必要があります。そこで、本記事ではマイクロ法人のデメリットを辻哲弥氏(税理士法人グランサーズ代表社員)が解説します。
マイクロ法人は「メリットばかり」ではない
「マイクロ法人」とは、「ひとりだけで運営する小さな法人」のこと。マイクロ法人を設立して個人事業と法人を両方持つと、それぞれの「良いとこ取り」で大幅な節税が期待できるというのがメリット(※)です。
しかし、「マイクロ法人はメリットばかり」というわけではありません。メリットだけに気を取られていると、思わぬ点に気づかず「得するつもりが損していた…」なんてことにもなりかねません。
そうならないよう、マイクロ法人設立の際には、しっかりとデメリットも考慮しておくことが大切です。ということで、今回はマイクロ法人のデメリットをご紹介していきます。
※マイクロ法人のメリットに関する解説はこちら↓↓
【第1回】法人と自営業のいいとこ取り!社会保険料をガツンと減らすことができる「マイクロ法人」とは? 【第2回】社会保険料を減らせるだけじゃない!マイクロ法人の設立で得られる「驚きのメリット」【税理士が解説】
マイクロ法人のデメリット
結論からいうと、マイクロ法人には以下のようなデメリットがあります。
①法人設立費用・維持費などのコストがかかる
②確定申告などの手間が増える
それぞれ具体的に解説していきます。
マイクロ法人のデメリット① コストがかかる
まずコストがかかるということが挙げられます。設立費用は、株式会社だったら約25万円、合同会社は約10万円です。
また維持費用としては、税理士費用として15万円~25万円。役員報酬を設定することで社会保険料も発生します。
そして法人の場合、赤字でも法人住民税の均等割としておよそ7万円がかかることになります。
<設立費用>株式会社約25万円、合同会社約10万円
<維持費用>税理士費用約15万円~25万円、社会保険料、住民税の均等割約7万円
このように、マイクロ法人といえども初期費用と維持費がそれなりにかかるので、あらかじめ計算しておく必要があります。
マイクロ法人のデメリット② 確定申告などの手間が増える
もう一つのデメリットですが、法人・個人それぞれで確定申告することになるので、単純に事務作業の手間が増えます。
個人の確定申告は自分で出来ても、法人は難易度が跳ね上がるので、一般的には税理士に頼むケースが多くなります。そうなれば、税理士に支払うコストが発生します。
マイクロ法人の注意点
マイクロ法人のデメリットについては、ご理解いただけたでしょうか。ここからは、年間の維持費や手間を考えてもマイクロ法人を作るメリットが上回る、という方のために、気をつける点を述べていきます。
注意点① 個人と法人は別の事業にする必要がある
注意点の一つ目として、個人と法人は別の事業にする必要があります。つまり、個人事業主として行っている事業とは、別のビジネスをマイクロ法人でやっていく、ということです。
これは、まったく同じ事業内容の売上を都合よく個人と法人に分けて計上することはNGで、税務署から法人の実態を疑われてしまうからです。
たとえば、
・個人事業…コンサル
・法人……不動産管理
など、明確に分けることが必要です。
その際、メインで稼ぐ事業は個人事業で行うようにするのが、このスキームのポイントです。
注意点② マイクロ法人の規模を大きくしない
2つ目の注意点は、マイクロ法人の規模を大きくしないということです。マイクロ法人は売上を伸ばす目的ではなく、あくまで社会保険料や税金の負担を減らす目的で活用すべきです。
というのも、マイクロ法人で必要以上に売上を増やすと、その分だけ社会保険料・税金の支払いが増えてしまいます。ですので、マイクロ法人で法人税を抑えるためには、なるべく、かかる経費以上の売上をあげないことが重要になります。
役員報酬を年54万円に設定すると、社会保険料が最低額になり、なおかつ、給料所得控除(55万円)もフルで受けられます。それに社会保険料や税理士費用などマイクロ法人の維持費を合わせると、年間経費は80~90万円くらいになると思われます。
利益が残らないように、マイクロ法人の売上もそれと同じくらいにしておくのがいいということです。
注意点③ 社会保険料削減メリットがなくなるリスク
最後に、今後の制度改正次第では「社会保険料削減」という最大のメリットがなくなってしまうリスクもあります。
2024年から社会保険料の適用範囲がパートにまで拡大するなど、改正によって社会保険料を広範囲から徴収する流れになってきています。
今後の動き次第ですが、個人事業主にまで社会保険の適用範囲が広がったり、社会保険料の算定方法が変わったりする可能性もあり得ます。社会保険料目当てでマイクロ法人の設立を考えている人は、動向を注視する必要があるでしょう。
辻 哲弥
税理士法人グランサーズ
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