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フィリピン、堅調な「経済成長」を予測も「地政学的課題」の懸念高まる…解決策は?

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月15日 7時15分

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写真:PIXTA

一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は堅調なフィリピンの経済成長見通しと、そんな中で進む外交的な枠組そして経済成長の要であるインフラ整備の最新動向をレポートします。

フィリピンの堅調な経済成長予測も「高インフレ」がリスク

東南アジア地域シンクタンク(AMRO:Asean Macro Research Office)の最新報告によると、フィリピンの経済成長率は今年と2025年の両方で、ASEAN加盟国や中国、日本、韓国、香港を上回る見込みだといいます。

AMROは、フィリピンの2024年国内総生産(GDP)成長率を6.3%と予測しており、1月の報告から変更はありません。これは、2023年の改定値5.5%を上回るもので、政府が今年掲げている6~7%という目標の範囲内でもあります。AMROは2025年のフィリピンの成長率を6.5%と予測しており、これも政府の目標値(6.5~7.5%)の範囲内です。フィリピンは外部需要の回復から、製造業や観光業が回復するとみています。

今年の成長率予測では、フィリピンはカンボジア(6.2%)、ベトナム(6%)、インドネシア(5.2%)、マレーシア(5%)、中国(4.4%)、ラオス(4.7%)、香港(3.5%)、ミャンマー(3.2%)、タイ(2.9%)、ブルネイ(2.7%)、シンガポール(2.6%)、韓国(2.3%)、日本(1.1%)を上回っています。2025年も、フィリピンとベトナムが地域での成長リーダーになることが予想されています。

一方で、フィリピンの経済見通しはいくつかのリスク要因を課題を抱えています。短期的な成長見通しは比較的堅調ですが、高インフレがリスクとなっており、特に食料部門における供給ショックと、地政学上の紛争が国際エネルギー価格に与える影響が懸念されています。これらはインフレを押し上げ、内需を抑制する可能性があるからです。

AMROの推定によると、今年のフィリピンのインフレ率はベトナムと並んで3.6%と、ASEAN+3地域で最も高い水準になる見込みです。より高いインフレ率を示すのはミャンマー(16.1%)とラオス(14.3%)です。AMROは2025年にはフィリピンのインフレ率が2.9%に落ち着くとみています。

このインフレ予測は、フィリピン中央銀行(BSP)が今年と来年についてそれぞれ3.8%と3.2%と予測している値よりも低くなっています。世界経済が比較的堅調なことにより、今年はややインフレ圧力が上向きになる可能性があり、成長率の鈍化を招くおそれが指摘されています。

さらにインフレ上昇リスクがBSPの利下げを遅らせる可能性があります。BSPは4月10日、政策金利を17年ぶりの高水準である6.5%に維持しました。インフレはまだ十分に低下しておらず、フィリピン中央銀行が利下げに踏み切る状況にありません。インフレが落ち着き、2~4%のインフレターゲットを達成するまでは、金融政策は引き締まった状態を維持するとみられています。

地政学的な緊張の高まりに「ASEAN以外」に活路を模索

AMROは、フィリピンは主要な貿易相手国(中国、アメリカ、日本など)の経済減速、金融市場の変動、金融状況の悪化といったリスクにも直面しているとしています。また、長期的な成長については、マルコス政権のBBM(Build Better More)政策によるインフラ開発の進捗ペース中国・米国間の地政学的な緊張の高まりの影響が大きいとされています。フィリピンはまた、エルニーニョなどの気候変動による社会経済的コストの上昇にも直面しています。

フィリピン、日本、米国、オーストラリアの4ヵ国は、高まる中国の強行な外交姿勢に対処するために、防衛や安全保障はもとより、その他の分野での連携を強化し、より強力な経済的な関係を構築する動きをとっています。この「クアッド(4ヵ国)」は、世界的な潮流である「ミニラテラル(限定的な国にとの関係)」グループへ発展する可能性があり、インド太平洋地域に経済的繁栄をもたらすための貿易やインフラ投資、地域的なサプライチェーンの連携、エネルギー安全保障など範囲を広げていく可能性があります。

ASEANを基盤とするアプローチが、南シナ海を含む地政学的・安全保障上の課題に対処するには不充分であると考えられ、新しいクアッドのようなミニラテラルグループの動きが出てきています。米国、日本、オーストラリア、フィリピンは昨年、中国への対応として、クアッド安全保障対話を開始しました。これらの同盟国は、中国の台湾への攻勢に懸念を示しています。

中国はフィリピンの排他的経済水域での補給任務を水砲で妨害するなど、フィリピンとの緊張関係が高まっている中、フィリピンは、中国の対応が不充分なこともあり、一連の鉄道プロジェクトへの中国からの資金提供をキャンセルしました。なお、中国はフィリピンの輸入の最大の供給国で、米国はフィリピンの最大の輸出先です。

フィリピンの環境天然資源省(DENR)は、深刻な水不足解消に向けて、民間企業による大規模な水の供給と水力発電プロジェクトの提案を受け付けています。大手企業を含む計88件の提案を受け取っており、これには、サンミゲル、マニラ・ウォーター、メトロパシフィックなど大手企業が含まれています。

DENRによると、これらのプロジェクトは水供給量の増加だけでなく、水力発電の活用も含まれています。フィリピンの人口の40%がまだ正式な水道を利用できていない状況で、これを整備するためには、2,500億ペソが必要とされています。これらの取り組みの中には、カビテ大規模水道プロジェクトや国立灌漑局が水供給と発電を行う8つの多目的ダムの建設を含みます。8つの多目的ダムは合計で1日あたり約4億1,600万リットルの能力を持ち、水力発電と太陽光発電の両方を活用するように設計されています。

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