生成AI、勤務先へ導入されたが…「ついていけない」と涙の50代サラリーマン〈転職にまさる選択肢〉はあるか【公認会計士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月17日 12時15分
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(画像はイメージです/PIXTA)
ビジネス界隈では「生成AI」をはじめとする最新テクノロジーが話題です。若い世代は歓迎ムードですが、中高年世代は自身の仕事を脅かされるのではないかと生きた心地がしない模様。日本人の働き方の今後の展望について、企業経営に詳しい公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
勤務先の「生成AI導入予定」に、中高年社員は戦々恐々
ChatGPTなど、生成AIの技術の発展に伴い、業務のなかに生成AIを導入・活用する企業が増えています。
新しいテクノロジーを導入することで、ビジネスの可能性が広がることはもちろん、従業員の働き方改革につながるなど、メリットは多くあります。しかし一方で、新たな技術に「ついていけない」と感じ、涙目になっている中高年の従業員もまた、少なくないのです。
生成AIが仕事に取り入れられているいま、これらを使う立場にある人は「AIをフル活用しながらどんどん仕事内容も刷新し、しっかり稼ごう」と考える人と、「生成AIのことなどよくわからないから、給料は下がってもいいので、いまの仕事内容を変えたくない」と考える人に二分されています。
いまの中高年世代の方々の場合、会社の指示・命令通りに動くこと、そして、社内の調整力を期待されてきましたが、専門性はそこまで極めていないという人もいます。これまで慣れ親しんだ仕事内容を変更し、いまさらAIやデジタル技術の活用といわれても…と思われるかもしれません。
とくに、いまの50代のサラリーマンの皆さんは、日本的経営が当たり前だった時代に就職し、完全なゼネラリストとして育成され、おまけに終身雇用・年功序列を当然と考えてきた世代です。管理職の仕事は得意でも、いまの年齢から現場の仕事をこなすことには抵抗があるかもしれません。
そのような方々が、生成AIの活用や、リスキリングによるスペシャリストへの転向を求められても、かなり大変なのではないでしょうか。
新しいテクノロジーの導入で、中高年の仕事が消滅!?
生成AIの普及で、一部の管理職の仕事がなくなるのでは…と危惧する方もいますが、実際には、当分の間、そういった事態にはならないと予想されます。生成AIは、人間より事務処理が速く、多少マシな意思決定ができる…といった程度であり、経営判断まで任せられる万能の神ではないのです。
将棋を考えてみるとわかりやすいでしょう。将棋ソフトがトップレベルの棋士に勝つこともありますし、それらを使って腕を磨く棋士も実際にいますが、将棋ソフトが必勝法を持っているわけではありません。
それでも「いつかはAIが人間を支配する時代が来る」と予想する人もいますが、実際のところはまだわかりません。
それに、AIにすべてを完璧にやってもらうより、人間にやってもらうほうが楽しいこと、適したことも多くあります。参加者全員が、藤井聡太さんより強いAIソフトを入れたパソコンを持参する将棋大会を想像してみてください。そんなの、きっと面白くないですよね。
リスクにさらすのは、自分自身? それともお金?
その他、AIの台頭によって予想されるものとして、サラリーマンのみなさんが簡単に転職する時代になる可能性が高い、という点があります。
日本的経営が通用しなくなり、ジョブ型雇用を開始する大企業が増えているという背景もありますが、ビジネスに関する意思決定をAIが適切に行うことで、ビジネスに伴うリスクをある程度測定できるようになります。そうすれば、リスクを取りつつ事業を起こすというハードルは、いまよりずっと下がるでしょう。
現代の資本主義とは「リスクを回避したがる者が提供する価値を、リスクを取ってもいいと思う者が吸い上げる」という、経済循環の仕組みです。つまり、リスクを取る企業オーナーや株主が、リスクを回避したがるサラリーマンの価値を吸い取るシステムなのです。
ですが、AIが適切なリスク評価を行うようになると、リスクを取らないことはビジネスとして間違いである、ということが明確になります。つまり、従来のように「サラリーマンとして安定的に雇われて働く」という考え方は、AIによって否定されてしまうのです。
そうなると、リスクを取って起業する若者が増えるでしょう。若者がリスクにさらすのは〈自分自身〉です。新事業に失敗したらやり直すことになり、会社をクビになったら転職することになります。収入が安定せず、生活できなくなるリスクが伴いますが、それでも、NISAに投資する資金のない20代の若者たちがリスクを取って稼ごうとすれば、自分自身に投資するしかないのです。
ならば、50代はどうでしょうか? この年代になれば抱えるものも多く、自分自身をリスクにさらす勇気が出ない方も多いと思います。
その場合は「自分のお金」をリスクにさらす、という選択肢があります。リスクを取ることでお金を増やすのです。
たとえば、銀行に預けているお金をNISA口座に移し、金融資産に投資する、といったことが、リスクを取ってお金を増やす、ということになります。
もしここでAIを活用する企業の株価が上がれば、利益になります。転職を考えるより先に、NISAへの投資を考えるのも、選択肢のひとつだといえるでしょう。
岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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