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知らなかった…年金月13万円“自分の生活で精一杯”の65歳男性、90歳父が「老人ホーム退去」の大ピンチ→“まさかの顛末”に歓喜のワケ【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月6日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

長寿化が止まらぬ日本では、親の介護と定年を迎えたあとの自身の老後問題が重なるケースも少なくありません。そこで頼りになるのが「介護施設」です。ただ、介護施設にはさまざまな種類があり、選び方を誤ると「思わぬ悲劇」に見舞われることも……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、事例をもとに高齢者施設選びの注意点とポイントを解説します。

「老々介護」はもう限界!…実家で父の介護を担ってきた65歳のAさん

65歳のAさんは、高校卒業後に就職した工場を60歳で定年退職したあと、再雇用で65歳まで勤めあげました。高校時代からバイクが大好きだったAさん。社会人になってからは暇さえあればツーリングやバイクのカスタムに没頭していたため、老後に向けた資産形成などは一切してきませんでした。もっとも、年金は月13万円と、余裕のある生活は送れませんが、なんとかやっていけそうです。

そんなAさんには、90歳になる父親がいます。父親の年金は月10万円ほどで、数年前から介護が必要な状況です。Aさんはひとりっ子で、また母親も早くに亡くしているため、周りに頼れる身内がいません。なるべく費用を節約しようと自分の力だけで父親の介護を頑張っていたAさんでしたが、自身も60歳を超え、老々介護に限界を感じたことから、父親を施設に入所させたいと考えるようになりました。

父親にそのことを伝えると、「施設に入れるような余裕はないだろう」となかなか首を縦に振りませんでしたが、必死に説得。結局、父親の年金の範囲内で生活できる「サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)」へ入居させることを決断しました。しかし……。

施設へ入居してからほどなくして、父親は自分の力で食事が摂れなくなってしまったのです。そのため、いったん近くの病院へ入院して鼻からチューブを挿入して栄養を摂る、「経管栄養法」をとることになりました。

無事手術を終え、父は元の施設へ戻りましたが、その月に施設から請求された金額が非常に高額で、Aさんは驚きを隠せませんでした。

施設費用が高額に…入居から半年で「退去勧告」を受けることに

医療行為は、基本的には医療職である看護師が行います。高齢者施設には看護師が24時間体制で常駐しているところもありますが、Aさんが父親を入れた施設は看護師がいません。そのため「訪問看護サービス」を利用することになったのでした。「訪問看護サービス」は外部のサービスであることから、月々の利用料はそれだけ高額となります。

その事実を聞いたAさんは、思わず「そんな……この施設の利用料は月10万円だって言っていたじゃないですか。オプションなんて聞いてない」と狼狽。

Aさんは、自身の貯蓄を取り崩しながらなんとかその分を払っていましたが、もともと月10万円もギリギリだったAさんは限界を迎え、わずか半年で施設から退去勧告を受けることになってしまいました。

「自分の生活だけで精一杯なのに、これからどうすればいいんだ……」窮地に陥ったAさんは「なにか良い案はないか」と、知り合いのファイナンシャルプランナーである筆者のもとへ相談に訪れました。

「サ高住」に潜むデメリット

いわゆる「高齢者施設」にはさまざまな種類があります。今回、Aさんの父親が入居していたのは一般型のサ高住です。入居者は自立している人から要介護の人までと幅広く、主に民間企業が運営しています。なお、部屋は個室で、毎日の安否確認や生活相談といったサービスが受けられます。

入居一時金は10~20万円程度と、初期費用を抑えることができる一方、介護サービスを利用する場合には外部事業者を頼ることになり、利用した分だけサービス利用料を負担する仕組みとなっています。

そのため、Aさんの父親のように介護サービスを受ける頻度が多くなると、その分月々の負担額は増えます。

また、サ高住のなかには“介護型”といわれる、一定の基準を満たした「特定施設」があります。特定施設では、介護度に応じて、定額料金で介護サービスを受けることができます。介護度が上がらない限りは介護サービス費の変動がないため、月々の費用を計算しやすい一方、外部の介護サービスは利用できないという点がデメリットです。

「特養」なら、低負担で介護サービスが受けられる

Aさんの父親の場合、現在入居している一般型のサ高住から介護型へ転居しようにも、年金だけでは費用を賄えません。そこで、筆者は「特別養護老人ホーム(以下、特養)」を案内しました。

特養は要介護3以上の人が入居でき、4人部屋などの多床室から個室まで部屋の種類はさまざまです。年金の範囲内で入居できるよう、介護保険負担限度額認定制度や社会福祉法人等利用者負担軽減制度(後述)が設けられています。

特養は人気が高いため施設によっては待機者がおり、すぐに入居できないケースがあります。前払金は不要で、運営は地方公共団体・社会福祉法人が行っています。

高齢者施設にはこのほか、養護老人ホームや認知症を対象としたグループホームなどがあります。

知らなかった…介護費用の負担を減らせる「5つ」の制度

毎月の介護費用負担に悩まされていたAさんですが、実は、介護費用の負担を軽減できるいくつかの公的な制度があります。

1.高額介護サービス費制度

「高額介護サービス費制度」とは、1ヵ月で支払った利用者の負担額が限度額を超えたとき、払い戻しを受けられる制度です。年収約370万円~約770万円の世帯であれば、月額4万4,400円が負担限度額となりますが、住民税非課税世帯は月額2万4,600円が負担限度額となります。

2.高額介護合算療養費制度

「高額介護合算療養費制度」は、医療保険と介護保険による1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担額(合算額)が、各所得区分に設定された限度額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。

年収約370万円~約770万円の世帯であれば負担限度額は67万円で、住民税非課税世帯の場合は19~34万円です。

※ <参考>関係府省提出資料(6/9) (https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/senmon138shi02_6.pdf)

3.介護保険負担限度額認定制度

介護保険負担限度額認定制度は、低所得者が老人ホームを利用する際に、食費や居住費の負担額を軽減する制度です。

認定を受けるためには、「生活保護を受給していること」「世帯全員が住民税非課税」などの要件があります。また、対象者の資産によっても負担額が変わります。

4.社会福祉法人等利用者負担軽減制度

「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」は、社会福祉法人が提供する介護サービスを低所得者が利用する際、自己負担額を軽減できる制度です。対象施設を利用した際の食費や居住費が適用となります。

5.その他自治体独自の制度

その他、自治体が独自に制度を設け、家賃の補助やオムツの支給などを行っています。自治体によって制度の内容や対象となる要件もさまざまであるため、ご自身の自治体窓口やホームページでご確認ください。

FPから一連の説明を受け、上記の制度を知ったAさんは「知らなかった……こんなに便利な制度があったんですね。よかった、なんとかなりそうだ!」と歓喜して帰宅されました。

結局、Aさんの父親は「高額介護サービス費制度」を利用することで自己負担を軽減することができたそうです。また、タイミングよく空きが出たようで、筆者の勧めどおりサ高住から特養へ入所することが叶ったそう。月々の費用も年金の範囲内で問題なく納められるようになりました。

良いことだけが書かれたパンフレットには要注意

慣れ親しんだ自宅から施設へ住まいを移すと、環境の変化やストレスなどから体調を崩し、思わぬ入院や介護が必要になるケースも少なくありません。今回のAさんのように、入所時のパンフレットなどに記載のない費用が発生する場合もあります。

高齢者施設への入居を検討する際には、いま現在は介護が必要なくとも、どのような場合に費用が発生するかよくシミュレーションを行いましょう。

手元の資金が少ない場合には手頃な価格帯の施設が魅力的に思えますが、今回のように介護が必要になった場合負担額が増えるなど、デメリットもあります。

施設ごとの違いをよく把握したうえで、どの施設が入居する本人にとって適切か、医師やケアマネージャーなどの専門家にも相談のうえ、後悔のない選択をしましょう。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役

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