J.D. パワー初・個人株主満足度調査「自動車・銀行・証券・保険」各部門のランキングを発表…コーポレートガバナンス関連の影響度は?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 8時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
米国を本拠とする国際的なマーケティングリサーチカンパニー、J.D. パワー(ジェイ・ディー・パワー)より、J.D. パワー2024年個人株主満足度調査℠の結果が発表されました。企業が自社の立ち位置や強み・弱みを把握し改善活動に活用するとともに、個人投資家が中長期的な投資対象を判断する上での指標となるよう、「初の試み」として実施された本調査。企業の評価の指標として、コーポレートガバナンス関連の影響が4割もあったことが明らかになりました。
2024年個人株主満足度調査
J.D. パワー2024年個人株主満足度No.1を発表
CS(顧客満足度)に関する調査・コンサルティングの国際的な専門機関である株式会社J.D. パワージャパン(本社:東京都港区、代表取締役社長:山本浩二、略称:J.D. パワー)は、J.D. パワー2024年個人株主満足度調査℠の結果を発表した。
総合満足度ランキングは下記の通り。
【自動車部門】(対象5社)
第1位:トヨタ自動車(749ポイント) 「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の全7ファクターで最高評価。
第2位:本田技研工業(710ポイント)
第3位:SUBARU(657ポイント)
【銀行部門】(対象5社)
第1位:三井住友フィナンシャルグループ(720ポイント) 「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の全7ファクターで最高評価。
第2位:三菱UFJフィナンシャル・グループ(688ポイント)
第3位:りそなホールディングス(660ポイント)
【証券部門】(対象6社)
第1位:SBIホールディングス(707ポイント) 「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の全7ファクターで最高評価。
第2位:大和証券グループ本社(681ポイント)
第3位:東海東京フィナンシャル・ホールディングス(676ポイント)
【保険部門】(対象4社)
第1位:東京海上ホールディングス(729ポイント) 「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」の5ファクターで最高評価。
第2位:MS&ADインシュアランスグループホールディングス(723ポイント) 「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の2ファクターで最高評価。
第3位:第一生命ホールディングス(671ポイント)
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《J.D. パワー2024年個人株主満足度調査℠概要》
年に1回、個人株主*1を対象に、「自動車」、「銀行」、「証券」、「保険」の4部門に分け、コーポレートガバナンスを含む企業に対する満足度を聴取し明らかにする調査。今回、初めての実施となる。
*1東証プライム市場に上場している以下の条件に合致する対象企業の株式を1年以上継続して保有しており、かつその株式を調査時点で100株以上保有している個人株主。回答者が各部門で複数の株式を保有している場合、調査時点で保有金額が最も大きい株式を発行する企業についての評価を聴取している。
【自動車部門】:東証33業種区分で「輸送用機器」に該当する株式のうち、乗用車の完成車メーカーでかつ、2023年最終営業日時点で時価総額5,000億円以上の株式 【銀行部門】:東証33業種区分で「銀行業」に該当する株式のうち、2023年最終営業日時点で時価総額1兆円以上の株式 【証券部門】:東証33業種区分で「証券・商品先物取引業」に該当する株式のうち、証券関連収益構成比率が50%以上でかつ、2023年最終営業日時点で時価総額1,000億円以上の株式 【保険部門】:東証33業種区分で「保険業」に該当する株式のうち、2023年最終営業日時点で時価総額8,000億円以上の株式
■実施期間:2024年3月上旬 ■調査方法:インターネット調査 ■調査対象:該当する企業の株式を1年以上継続して保有しており、かつその株式を調査時点で100株以上保有している個人株主(20歳~69歳) ■調査回答者数:6,088人
総合的な満足度に影響を与えるファクターを設定し、各ファクターの詳細評価項目に関するユーザーの評価を基に1,000ポイント満点で総合満足度スコアを算出。
総合満足度を構成するファクターは、総合満足度に対する影響度が大きい順に「収益性/株主還元」(21%)、「事業内容と商品・サービス」(21%)、「財務安定性」(18%)、「株主の権利・平等性の確保」(10%)、「適切な情報開示と透明性の確保」(10%)、「取締役会等の責務」(10%)、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」(9%)となっている(カッコ内は影響度)。
*J.D. パワーが調査結果を公表する全ての調査は、J.D. パワーが第三者機関として自主企画し実施したものです。
本調査のポイント
収益性やコーポレートガバナンスなど、企業に対する個人株主の満足度調査を初めて実施
日本の株式持ち合い比率が過去最低水準に低下する中、非課税期間が無期限化された新NISA(少額投資非課税制度)が本年1月よりスタートし、長期安定株主の一翼を担う個人株主への注目度は金融市場において、ますます高まっている。
また、世界的なESG(環境・社会・ガバナンス)への問題意識の高まりなどから、企業のコーポレートガバナンス改善に対し、政府や機関投資家から厳しい視線が向けられている。
しかし、不正問題や取引先との不適切な取引がメディアで大きく取り上げられるなど、日本企業の課題は山積している。
J.D. パワーでは、企業に対する総合的な評価がランキング形式で示されていないことが、こうした情報の非対称性を引き起こす要因だと考えている。
これらの背景から、企業が自社の立ち位置や強み・弱みを把握し改善活動に活用するとともに、個人投資家が中長期的な投資対象を判断する上での指標となるよう、J.D. パワーとして初めて個人株主満足度調査を実施した。
本調査は、自動車、銀行、証券、保険の4業種について、収益性やコーポレートガバナンスに対する取り組みなど、企業に対する個人株主の総合的な満足度を聴取するものである。
個人株主満足度に対するコーポレートガバナンス関連の影響度は4割
個人株主の企業に対する総合的な満足度の測定にあたって、「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の7つのファクターを設定した。
このうち、「株主の権利・平等性の確保」、「適切な情報開示と透明性の確保」、「取締役会等の責務」、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の4ファクターは、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードに即している。
総合満足度に対する各ファクターの影響度を統計解析した結果、「収益性/株主還元」と「事業内容と商品・サービス」がそれぞれ21%と総合満足度に与える影響が最も大きいものの、コーポレートガバナンス・コード関連の4ファクターの合計で、総合満足度に対する影響度は4割を占めることが分かった。
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金融市場では一般的に、個人株主の関心は配当や優待などに偏り、コーポレートガバナンスなど難易度の高い項目にはあまり目が向けられないとの見方もある。
しかし、企業の不正問題や取引先との不適切な取引などを背景に「取締役会における多様性と適正規模の両立」や「独立社外取締役の機能」などに対しては相対的に厳しい目が向けられており、個人株主のコーポレートガバナンスへの関心は低くないことが確認できた。
保有株式の購入理由には世代間格差
保有している株式の購入理由を聴取したところ、「株主配当が良さそうだったから」(50%)が最も多く、続いて「今後の値上がりが期待できる」(43%)、「企業の今後の成長に期待が持てる」(32%)となった。
これらはいずれの業種でも購入理由の上位3項目となり、部門による違いは見られなかった。一方、年代別では購入理由に違いが見られた。
「株主配当が良さそうだったから」など上位3項目では大きな差が見られないものの、「企業の評判がよい」は40~50代では18%、60代では16%であるのに対して、20~30代では31%と10ポイント以上の差が見られた。
また、「個人のSNS/動画サイトで薦められていた」は40~50代では5%、60代では1%とごく僅かなのに対し、20~30代では17%とこちらも10ポイント以上の差が見られ、SNSや動画サイトの影響が若年層で特に大きいことが確認された。
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総合満足度の最高値/最低値のスコア差は部門間でギャップ大
自動車、銀行、証券、保険の各部門の総合満足度の平均スコアは671~690ポイント(1,000ポイント満点)で、いずれの部門でも600ポイント後半だった。
一方、最高値の企業と最低値の企業のスコア差を見ると、部門間で大きな違いがあることが分かった。保険、銀行、証券の3部門では最高値と最低値の差が100ポイント前後なのに対し、自動車部門では220ポイントを超えた。
自動車部門での乖離幅が大きい背景をファクター別に見ると、コーポレートガバナンス・コード関連の4ファクターよりも、「収益性/株主還元」、「事業内容と商品・サービス」、「財務安定性」といった一般的な投資評価関連のファクターでの評価の差がより顕著であることが分かった。
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J.D. パワーグローバル・ビジネス・インテリジェンス部門 常務執行役員 梅澤希一のコメント
「本調査は、個人株主が企業を中長期的な投資対象として信頼できるかの観点から満足度を評価するものであり、調査結果はコーポレートガバナンスを含む経営陣の成績表と言える。
コーポレートガバナンスについては、これまでは「取締役会における多様性」や「取引先との公正・適正な取引」など各論で取り上げられることが多く、株主による総合的な評価をデータで議論されることはあまりなかった。そのため、全体としての比較が行われにくく、各企業が切磋琢磨するインセンティブが十分に与えられる環境ではなかったと考えている。
本調査が各社の改善活動に向けた取り組みを促す一助となることを期待している。」
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