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「物忘れがひどい」「風呂に入らない」「毎日同じ服を着ている」…老親の異変に〈認知症〉より〈うつ病〉の可能性を疑ったほうがいい、これだけの理由【和田秀樹氏が助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月17日 13時0分

「物忘れがひどい」「風呂に入らない」「毎日同じ服を着ている」…老親の異変に〈認知症〉より〈うつ病〉の可能性を疑ったほうがいい、これだけの理由【和田秀樹氏が助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年を取るとだんだんと増えてくる「物忘れ」に、認知症の始まりか、と心配になる人も多いことでしょう。しかし、物忘れの症状は、「認知症」だけではなく、実は、高齢者がかかる「うつ病」にも共通しています。精神科医である和田秀樹氏の著書『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』(KADOKAWA)より、認知症かうつ病かを判断する方法を見ていきましょう。

「知っていることを思い出せない」は正常

高齢者のうつ病が見落とされやすい原因として考えられるのは、認知症と間違えられやすいことです。高齢者のうつ病で比較的目立つ症状に、「記憶障害」や「物忘れ」があります。高齢で物忘れがあると、すぐに認知症と決めつけられてしまう傾向がありますが、これは一般の人だけでなく、医者にもそういう決めつけをする人がいることは確かです。

記憶障害や物忘れには、2つの目立つパターンがあります。1つ目は、「想起障害」といって、例えば道で会った知り合いの名前が出てこないとか、テレビに出てくる人の名前が出てこないというように、一度覚えたはずのものの出力ができない状態です。言おうとしていたことが出てこなくて、「あれ」とか「それ」で代用してしまうのも、この想起障害に当たります。こういった症状が起こると、物忘れが始まったと焦る人が多いのですが、これは認知症の物忘れとはタイプの違うものです。

一般的に想起障害というのは、書き込まれた記憶に対する上書き情報が多いから起こるとされています。また、人間の脳は、普段出力していないことは、なかなか出てこないという特性もあります。ホテルマンなどがお客さんの名前を何度も口に出すのは、それによって出力をしやすくしているという事情もあるのです。

想起障害のもう一つの特色は、きちんと脳に書き込まれていることなので、その名前を聞くと「ああ、そうだった」と思い出せることです。ですから、会った人の名前が出てこなくても「山田だよ」と言われると、「そう、そう、山田さん」という風になるわけです。

例えば、何十年かぶりに長崎へ旅行したとします。昔入ったちゃんぽん屋さんの前を通ると、まだ営業していました。そうすると、「あ、この店、まだ潰れていないんだ」と、思い出すことがあります。これは、脳にちゃんぽん屋さんの画像が書き込まれていたから、見覚えがあったわけです。それまではまったく思い出したことがなくても、それは普通のことでしょう。

このように、脳には書き込まれているけれど、出力できないというのは、認知症による記憶障害とは違うものです。

認知症と誤診される「記銘力障害」

記憶障害や物忘れといわれるものの2つ目が、「記銘力障害」です。老化や認知症で起こる記憶障害は、新しいことが入力できないという、この記銘力障害といわれるものです。記銘力とは、新しく体験したことを覚えて脳に書き込む能力です。

例えば、「聞いたばかりの人の名前が覚えられない」とか「30分前に食べたものが思い出せない」「今日の日付が覚えられない」などがこれに当たります。老化でなくても、不安なことがあるなど、気がそぞろなときにもこういったことが起こります。

実は、うつ病になると、気分の落ち込みもあり、自分の具合の悪さばかりが気になり、記銘力が低下しがちです。もともとの記銘力が落ちている高齢者がうつ病を発症した場合、かなり重めの記銘力障害になることが珍しくありません。

「10分前に聞いたことも覚えていない」というのであれば、認知症と間違われても仕方ないでしょう。内科の医者でも、想起障害と記銘力障害の区別はついている人がほとんどでしょうが、教科書的には、認知症の初期症状といえば記銘力障害なので、それがひどいせいで認知症と誤診されてしまうことは十分にあり得ることです。

さて、高齢者がうつ病になると、他にも認知症と似た症状が出ます。例えば、いろいろなことがおっくうになってきます。「全然、掃除をしなくなって、部屋が荒れ放題になってしまう」「下着も含めて着替えもしないようになり、毎日、同じ服を着ている」「風呂にも入らず、においがするのに気にしていない」。こんな症状が見られたら、多くの人は、「ついにボケてしまったのだろう」「認知症になってしまった」と思っても不思議はありません。

ある日、実家に久しぶりに帰省したとしましょう。前日に確認の電話を入れたのに、親が覚えていない。家も散らかり放題になっている。着替えもしていないようで、服がかなり汚れている。その上、風呂にも入っていないようで、嫌なにおいがする。

こんな状態の親を見たら、誰もが認知症になったと思い、慌てて老人ホームを探すなどということになりかねません。でもそれは、うつ病でも十分あり得ることなのです。

認知症との見極めは経過をよく知ること

確かに、高齢者のうつ病と認知症は区別がつきにくいものです。しかしながら私なら、「前回、帰省したときにはしっかりしていた」と聞いた場合、まずはうつ病を疑います。なぜなら、認知症としては経過が急すぎるからです。

一般的に、高齢者の認知症の経過は、かなりゆっくりなことが多いものです。物忘れと関係する「火の消し忘れ」などは早期から起こるケースもありますが、日常生活に支障をきたすような状態になるまでは、5年くらいのタイムラグがあります。

多くの場合、着替えをしなくなったり、お風呂に入らなくなったりするまでには、物忘れが始まってから5年くらいはかかるでしょう。1年もしないうちに、着替えもしなくなり、お風呂にも入らなくなるということであれば、かなり進行の速い認知症ということになります。そういったケースは、若年性の認知症の場合にはあり得ますが、高齢者の認知症においては、かなり珍しいといえます。ということで、私は、認知症とうつ病の区別を経過で判断します。

和田 秀樹 精神科医 ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表

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