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うつ病予防、イライラ防止にも有効な幸せホルモン〈セロトニン〉を消失させてしまう、あまりに身近な「2つのもの」【医師・和田秀樹氏が警告】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月22日 12時30分

うつ病予防、イライラ防止にも有効な幸せホルモン〈セロトニン〉を消失させてしまう、あまりに身近な「2つのもの」【医師・和田秀樹氏が警告】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「幸せホルモン」としても有名なセロトニン。セロトニンが増えることで、うつ病の予防や、不安の軽減、イライラ防止などの効果がありますが、日常生活のなかで、セロトニンを減らしてしまう状況がある、と精神科医である和田秀樹氏は言います。和田氏の著書『65歳からおとずれる 老人性うつの壁』(KADOKAWA)より、詳しく見ていきましょう。

セロトニンを増やす「8つの習慣」を心がける

高齢者の場合、それまでうつ病になったことのない人が、年齢を重ねてから発症することは珍しくありません。しかし、「薬で治ることが多い」という意味では、必要以上に恐れることのない病気ともいえます。とはいえ、なかには薬がよく効かない人も1〜2割はいますし、なったときの苦しさは経験した人しか分からないという話も、医師としてよく聞きます。私自身、高齢者になった際に、最もなりたくない病気の1つがうつ病です。

ということで、やはりならないに越したことがない病気ですし、認知症と違い、予防法がないわけではありません。完全に予防できる病気というわけではありませんが、動脈硬化よりは高い確率で予防できます。

予防策の1つ目は、セロトニンを減らさない、できれば増やす生活を心がけることです。

①食品でセロトニンの材料を摂るようにする

まずは、食生活です。セロトニンの材料は、トリプトファンという必須アミノ酸です。必須アミノ酸というのは、自分の身体の中で作ることができないので、体外から十分摂らないと不足してしまいます。トリプトファンは、通常のたんぱく質にも十分含まれるものですが、とりわけたくさん含まれているのが、かずのこ、鶏卵の卵白、かつお節、大豆製品、乳製品(無脂肪ヨーグルトを除く)、レバー、ナッツ類などです。

ということで、これらの食品をたくさん食べると、セロトニンが増えてうつ病の予防になるし、不安な気分も楽になる、イライラしにくくなるということになります。ただ、残念なことに、これらの食品を食べることで血液中のセロトニンは増えますが、脳には血液脳関門というものがあり、血液中のセロトニンがそのまま脳に移行するわけではありません。もちろん、血液中のセロトニンが多いほうが、脳に行き渡る可能性は高いと考えられますが、それだけでうつ病を予防するのは困難です。

一方、血液中のセロトニン濃度が低い場合は、どうしても脳内のセロトニン不足が起こりやすく、うつ病になりやすいということは確かなようです。

ということで、食べ物でセロトニンを増やす、つまりトリプトファンの多い食事を摂るのは、賢明なことだと思います。

②コレステロールは高めのほうがいい

さまざまな調査では、血中のコレステロール値が高い人のほうがうつ病になりにくいことが分かっています。また、うつ病になった際も治りやすいのです。その理由として、コレステロールが、セロトニンを脳内へと運ぶ働きをしているからではないかと考えられています。また、コレステロールは、男性ホルモンや女性ホルモンの材料になり、老化を遅らせる働きがあります。免疫細胞の細胞膜の材料でもあり、コレステロール値が高い人のほうが、免疫機能が高く、がんになりにくいことも知られています。

一方で、コレステロールが多過ぎると、動脈硬化を引き起こすリスクが高まるのも確かです。また、コレステロール値の高い人のほうが心筋梗塞になりやすいという調査結果もあり、コレステロールは何かと悪者にされがちです。しかし、欧米のように、心臓病が死因のトップクラスの国はともかくとして、日本のように、がんで死ぬ人が心筋梗塞で死ぬ人の10倍以上いる国では、コレステロール値は高いほうが望ましいと考えられます。

そう考えると、うつ病の予防のためには、むしろコレステロール値が高めのほうがいいというのも受け入れやすいと思います。セロトニンを増やすだけであれば、大豆などが健康的に思われるかもしれませんが、コレステロールも一緒に増やしたいなら、肉類や乳製品のほうが、うつ病予防に効果的な食品といえるでしょう。

食事以外の「うつ病予防法」

③午前中に太陽の光を浴びる

セロトニンを増やす上で、もう一つ大切なのが、光、特に太陽の光です。

食べ物の摂取では、前述のように血中のセロトニン濃度が上がるだけで、脳内のセロトニンが直接増えるわけではありません。しかしながら、網膜に日光のような強い光が当たると、脳内のセロトニン神経が活性化され、それによって脳内でセロトニンが分泌されます。日光を浴びる時間が十分でないと、セロトニン不足が起こりやすくなるのです。

ある程度以上、トリプトファンを摂っている人であれば、日光を浴びるのは最も効果的な脳内のセロトニン増加法、つまりうつ病の予防法といえるのです。脳内にセロトニンが十分にあると、不安を感じにくくなります。イライラするといった感情も落ち着くことでしょう。さらにセロトニンは、夜になると脳内でメラトニンという睡眠物質に変わるため、セロトニンが十分にあると、睡眠の状態も良くなるのです。

日光を浴びるのは、頭をスッキリさせるためにも、夜に眠りやすくするためにも、午前中が効果的です。なぜなら、セロトニンが脳内で増えてくると、スッキリと覚醒できますし、夜になるとメラトニンが増えてきて、自然に眠ることができるからです。

④運動はのんびり歩く散歩で十分

適度な運動も、セロトニンを増やすことに役立ちます。特に、リズミカルな運動が、セロトニンの分泌を促すとされています。ウォーキングやジョギングなどが望ましいということになっていますが、私としては、ひたすら歩くウォーキングよりものんびり歩く「散歩」で十分だと考えています。これも比較的歩くリズムが一定になりやすく、セロトニンの分泌を促す効果があります。

街の景色や変化を楽しみながら歩く散歩は、視覚刺激がセロトニンの分泌を高めてくれる上に、脳の前頭葉に刺激も与えてくれます。そして何より、無理なく続けられるのがメリットです。まずは3,000歩ぐらいを目指して、楽しみながら歩かれたらいいと思います。

⑤映画や読書で感情を動かす

セロトニン神経の活性化には、感情を大きく動かすこともいいとされています。ただし、あまりに落ち込むのは逆効果です。

日常で感情が揺さぶられるような行為をするというのは難しいかもしれませんが、話のネタが豊富な人との会話を楽しんだり、ドラマチックな映画を観たり、展開が激しいストーリーの本を読むというのは、セロトニン分泌に有効です。

テレビは万人受けのものを作りがちで、あまり感情を揺すぶってくれないことが多いので、DVDを借りてきて映画を観たり、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどで評判のいい作品を選んで観るのがおすすめです。

⑥十分な睡眠で脳の疲れを取る

セロトニン分泌に大きな影響を与えるとされるのが、睡眠です。十分な睡眠が取れて脳の疲労が解消されれば、セロトニン神経は活性化するとされています。逆に、睡眠不足はセロトニンの枯渇につながるとされています。先に触れた通り、午前中に日光を浴びると、夕方以降にメラトニンの分泌が盛んになり、眠りやすくなります。

メラトニンは、セロトニンと同様に、年齢とともにその量が減っていきます。そのため、高齢になると、どうしても睡眠時間は短くなりがちです。ですから、歳を取るほど、午前中に日の光を浴びて眠りにつきやすいリズムを作ることが、なおさら大事になってくるのです。

セロトニンを枯渇させる…極力避けるべき「2つのもの」

⑦一人酒や寝酒は避ける

アルコールはセロトニンを枯渇させる作用があるとされています。お酒を飲むことによって、ストレス解消になったり、仲間と飲んで感情がわき立ったり、よく眠れたりするというのであれば、アルコールによるセロトニンの減少を上回るセロトニンの増加が生じることもあります。そうでない場合は、飲酒によって、セロトニンを減らしてしまうことになります。

一人酒や眠れないからといっての深酒は、うつになるリスクを高めてしまいます。できるだけ避けたほうがいいでしょう。

⑧ストレスをためない

もう一つ、セロトニンの分泌に悪影響があると考えられているのがストレスです。

「ストレス」という言葉ですが、我々が専門家として使う用語と、一般にいわれるストレスにはちょっと違いがあります。

例えば、上司がパワハラまがいのことをしてくるという場合、「上司がストレスだ」というような言い方が一般的にはなされます。この場合、専門用語では、上司は「ストレッサー(ストレスを与えるもの)」ということになります。そしてストレッサーに対する相手の人の反応を「ストレス」というのです。だから同じように嫌な上司でも、ストレスを感じる人と感じない人がいるわけです。ということでストレスを減らしたり、なくしたりするには3つの方法があります。

1.ストレッサーから逃げる 2.ストレッサーに対するものの見方や受け止め方を変える 3.ストレスがたまってきたら解消する

例えば、上司や近所のうるさい人がストレッサーになっている場合。1の「ストレッサーから逃げる」とは、「会社を辞める」「異動させてもらう」、近所の人が嫌なら「転居する」という対応をすることです。それでストレスがなくなるなら、決して悪いことをしているわけではありません。ただ、現実にはそうはうまくいかないことも事実です。

昔と比べて転職がしやすくなったとはいえ、いまの会社より条件のいい会社がなかなか見つからないという現実もあります。長く勤めている人ならば、なおさらそうでしょう。

高齢者の場合は、会社で嫌な思いをすることは少なくなりますが、近所に住んでいる人が気の合わない人だったり、嫌な人だったりすることは珍しくありません。会社で働いていた頃は、そんなに顔を合わせたり話したりすることがなかったものが、そうでなくなると自然と会う機会も増えます。相手が嫌な人だった際のストレスがそのために大きくなることは結構ある話です。ところが、そのために転居するというのも高齢になるほど難しいでしょう。

その際に大切なのが、2の「ストレッサーに対するものの見方や受け止め方を変える」ことです。「嫌な人でもいい点もあるはずだ」とか、「悪気はなさそうだ」とか、「どうせ会うのは1日30分程度で残りの時間は会わないで済む」といったように見方を変えると、以前ほどはストレスを感じなくなることでしょう。  

和田 秀樹 精神科医 ヒデキ・ワダ・インスティテュート 代表

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