「若さと幼稚を勘違いしている」…現役住職が現代人に説く、若さの正体
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月7日 13時0分
(※画像はイメージです/PIXTA)
現役住職で著者累計100万部を超えるベストセラー作家の名取芳彦氏は「若さと幼稚さを勘違い」しない、「年相応な生き方をしていますか」と現代人に問いかけます。“心まで老けない”生き方について、仏教の教えを用いて詳しく教えてくれました。
「自然の法則に逆らうことはできない」…それならいっそ、それを「楽しむ」
「諸法実相」という世界観
仏教には「私たちの周りにあるすべての存在や現象は素晴らしいものである(諸法実相)」という世界観があります。言いかえれば、噓や偽りがないもの(否定できないもの)は素晴らしい、ということです。
噓や偽りがないものに対しては疑いを持つ必要がありません。山、川、海、空、星、木々、空気などの自然には噓や偽りはありません。私たちが生まれ、成長し、年を取り、病気になって死んでいくという命の流れにもまた噓や偽りはありません。
ここから、噓や偽りのない人生を、噓や偽りのない自然に囲まれて生きているのだから、些細なことやつまらないことを気にしなくていいという教えに展開します。
噓、偽りがないものは存在だけではありません。さまざまな縁が集まって結果になるという縁起の法則、縁が次々に入れ代わるために同じ状態を保てない諸行無常の法則、同じ状態を保てないので「これはこういうもの」という不変の実体はないという空の法則にも、噓や偽りはありません。そして、これらの法則には何者も逆らえません。いっそ、それを楽しむ方法を探したほうが、ずっと楽に生きていけます。
「『年相応』に生きるのが基本」…若さと幼稚さは違います
年齢を重ねることで、わかることもある
小中学校では、学年によって習得すべき課題があります。同じように、人生にもそれぞれの年代でクリアしたほうがいいことがあります。残念ながら、クリアすべき課題はその年代を通過してみないとわかりません。
そこで、渦中の世代は『〇十代でしておきたいこと』という本を読んで参考にします。この種の本に書いてあることは、年相応に生きている先輩を見ればわかりそうですが、近くに手本になる人がいない場合は有効かもしれません。
人生経験を経て学ぶことは多くあります。成功や失敗を数多く体験し、見聞きしているので他人の失敗にも「それって、ついやってしまうんだよね」と寛容になっていきます。直面する課題には、放っておく、撤退するなどの対処法があるのも知っているので、「あまり自分を責めなくてもいい。必要なときに人が責めてくれるから」と、どっしりしていられるようになります。
あなたは、年相応な生き方をしていますか。「幼稚と若さを勘違いしている」「動くより理屈が多くなるのを老いぼれって言うんだ」と笑われないよう気をつけましょう。
「『若々しくいる』のはとても大事」…“心”まで老けさせていませんか
「感動」が元気のもと
人は年相応に生きたいものですが、老いを感じたからといって、年寄り染みた言動をするには及びません。
若い僧侶に法話のデモンストレーションをしてもらうと、二十代、三十代なのに七十歳過ぎの老僧のような低く落ち着いたトーンで話す人がいます。ある僧侶は、物事がわかっているようなしゃべり方をしたほうがいいと思っているようでした。私は「そんなこと、誰も決めてないよ。あなたはその若さがいいんだ。その若さを発揮しないで、老僧の真似をするなんてもったいないよ」とアドバイスしました。
年を取ると総じて声が低くなります。多くの人は声帯が衰えたのが原因だと思っていますが、違います。感動する心がなくなっているのです。その証拠に、お年寄りでもきれいな虹を見れば、高い声で「わっ、きれいな虹だ」と言います。ビックリするようなことに遭遇すると「へぇ、こんなことが起こるのか!」と張りのある声が出るのです。
この条件反射を逆手に取って、高い声で話すと心に張りが戻ります。老いを感じたら、体も心も若さと元気を保ちたいと、少し意識したいものですね。
「『無常』がわかると、無理をしなくなる」…「どうにかなる」という生き方
心配の“先取り”をやめよう
人生は変化の連続です。常ではない“無常の現場”と言ってもいいでしょう。
変化してしまう状況に自分が対応できるかどうか不安な人は、「~だったらどうしよう」と多くのことが心配になります。今までの人生で経験したことがないような、伴侶が死んでしまったら、自分が不治の病にかかったら、自己破産してしまったらなどの状況にも考えが及んでしまうかもしれません。
心配性の人は、心配の種をたくさん持っています。そのうち一つでも現実になれば、他の心配ごとも起こるのではないかとますます心配になります。
しかし、考えてみれば、心配ごとのほとんどは実際には起こりませんし、たとえ現実になることがあっても、たいていの場合どうにか対応できているはずです。この先もどんな変化が起ころうと、どうにかなります。死は避けられませんが、親しい人との別れに遺族はどうにか折り合いをつけて暮らしていきます。どうにかなるとわかれば、先を見越した過度の心配はしなくてすみます。
否でも応でも変化してしまう状況と、それに対応する自分を楽しみにできるようにもなります。
名取 芳彦 住職
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