「50倍の大化け株」はどう見つける?元証券マンも実践した「ビッグチェンジ」な企業の見極め方
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月10日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
業績が成長しているだけでは、短期間で何倍にもなるような「大化け株」を期待するには力不足です。成長しているにもかかわらず、まだ市場からそれにふさわしい評価を受けていない「変化×評価不足」な株こそ、ビッグチェンジが狙える企業なのです。本記事では『決算書3分速読から見つける10倍株ときどき50倍株 2年で資産を17.5倍に増やした元証券マンの投資術』(KADOKAWA)から、著者の〈かぶカブキ氏〉が、彼自身の実体験を通して具体的に、いかに「大化け株」を発見し、評価・分析して、投資判断をしているのか、詳しく解説します。
「変化」×「評価不足」はどんな形で表れるのか
どんな銘柄を選べば「50倍株」になるのでしょうか。それは、「成長しているのに、その成長にふさわしい評価を受けていない企業」を見つけることです。
例えるなら、バイト月収5万円の学生だったA君が、年収2,000万円も夢ではない超一流企業に内定するようなビッグチェンジが企業の中で表れたとき。それこそが絶好の投資タイミングです。
そんなビッグチェンジは、具体的にどのような形で企業に表れるのでしょうか。企業の業績の急改善は、主に以下の4つのパターンで表れます。
パターン1:環境の変化
近年の例でいえば、新型コロナウイルスの感染拡大は大きな環境の変化でした。感染拡大期はもちろん、そこから元の生活に戻っていくことや経済回復も大きな環境の変化となり、それが大きな追い風になる企業もあれば、逆風となる企業もあります。
急激な原材料高や半導体不足、為替市場の変動なども同様に、大きな追い風を受ける企業が出てきます。
パターン2:国策・金融政策の変化
「国策に売りなし」という相場の格言があります。政府がなんらかの政策をスタートすることで、特定の産業や業種に強力な追い風が吹くことがあります。こうした恩恵を受ける企業に対しては、買い目線で攻めるのがセオリーです。
さらに、政府の政策以上に重要な変化となるのが、中央銀行による金融政策の変化です。もし、日銀がこれまで長い間継続してきた低金利政策を変える動きが見られれば、市場に与える影響は非常に大きくなります。
また、世界中の金融市場に強い影響力を持つ米中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策や姿勢の変化も、注目しておく必要があります。
パターン3:M&A、子会社化
その企業だけでは成長性がじり貧だった企業でも、特殊な技術を持つ企業や有望なスタートアップを買収して傘下入りさせることで、成長期待が大幅に高まることがあります。
既存事業と買収先のビジネスを掛け合わせることで、大きな競争力が生まれることもあります。
パターン4:新製品、新薬、新事業、新サービスの伸び
企業が画期的な新製品や新サービスをリリースしたタイミングや、新規事業が急成長をしているような局面は、業績に変化が表れ始めます。
こうした面が顕著なのは製薬会社です。特に、研究や投資が先行して赤字続きだった新興のバイオベンチャーの新薬が承認されたといったニュースは、株価に劇的な変化をもたらします。
A君の例は、パッとしない学生が大手企業に就職が決まるというビッグチェンジが生まれたにもかかわらず、まだ実際に就職していないために周囲からの「評価不足」が生じていました。
同様に、企業が稼ぐ金額が一気に増えたり、そうなることが予想されたりするときに、株価の評価が追いつかないケースが生まれます。
このタイミングで買い出動すると、その後グングンと株価がその評価不足を埋めるような値動きをすることが多いのです。この一連の動きは「株価の水準訂正」といわれます。
株価の評価不足は、決算から発見できる
こうしたビッグチェンジがもたらす企業の業績変化が可視化されるのが、決算です。四半期決算は、まずは「決算短信」という書類で公表されます。後から(同じ日の場合もある)四半期報告書、あるいは有価証券報告書という正式な書類が出てきますが、まずは速報的な決算短信を見ておけばOKです。
決算短信で最も重要な個所は1ページ目です。その期間の企業活動の実績といえる損益計算書の、「売上高」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」という各項目の数字が示されます。
特に注目すべきは、売上高と営業利益です。
「売上高」は、その企業が商品やサービスを売って得た金額です。ただし、この売上高を受け取るまでには、商品を仕入れたり人を雇ったりオフィスの家賃を払ったりと、さまざまな費用がかかっているので、最終的に残る利益はこれらの費用を順に差し引いて計算していきます。
材料の仕入れなどにかかる費用が「売上原価」で、それを差し引いたのが「売上総利益」です。そこから、従業員の給料やオフィスの家賃などの経費である「販管費」を差し引いたのが「営業利益」です。営業利益は本業での活動で得られた利益なので、投資家はこの数字に注目します。
この営業利益から、為替損益や利子など本業とは直接関係しない費用や利益を差し引いたのが「経常利益」です。さらに、子会社や不動産を売却した際の利益や損失など特別損益を除き税金を払って最後に会社に残ったお金が「当期純利益」になります。株主への配当はこの当期純利益から支払われます。
決算短信では、まずは売上高と営業利益に注目します。その期間の実績数値に加えて、前年同期と比べてどのぐらい増減したかも記載されています。
純利益に注目する人もいますが、企業の成長を占うには本業の利益が重要です。たまたま土地を売ったとか株で儲かったという利益は本業の利益ではないので、将来も同じように期待できる利益ではないからです。あくまで本業で得た利益である営業利益がグッと増えているかどうかに注目します。
ただし、売上が伸びていないのに、営業利益が伸びているケースもあるので要注意です。この場合は、リストラや経費削減で残る営業利益を増やしているケースがほとんどです。コスト削減が悪いわけではないのですが、株価が数倍になる企業は成長の源泉である売上がしっかり伸びている必要があります。あくまで売上増と営業利益増が両立している企業を見るようにしてください。
売上が増えているのは増収、営業利益が増えているのは増益といわれ、カギはまさにこの増収増益なのです。
3分速読でビッグチェンジを判断する3STEP
STEP1:決算短信を見て、増収増益を確認する
決算短信の1ページ目に載っている「売上高」と「営業利益」の「前年同期比」をチェックし、増収増益を確認します。5%増といった1ケタの増収増益は安定成長株としての魅力はあっても、株価の急成長は期待できません。企業規模にもよるので一概にはいえないのですが、最低でも15%以上の2ケタ増収と2ケタ増益になっているかをチェックします。
STEP2:決算短信のコメント欄で、増収増益の理由や背景を確認する
売上高と営業利益が大きく伸びている場合は、決算短信の4ページ目に「経営成績に関する説明」の欄に四半期の業績について解説やその背景に関するコメントが記載されているので、ここで増収増益の背景を確認します。背景がよくわからない場合は、決算説明資料などほかの情報源にもあたってみましょう。
環境の変化や国策による追い風、M&Aや新製品・サービスの好調など、前述したビッグチェンジのパターンになにかしらあてはまっていたら注目です。
STEP3:前四半期比(QonQ)での推移を確認する
第1四半期(1Q、四半期はクオーターと英訳されるので、以下Qと表記)決算であればシンプルに期の初め3か月間の成績ですが、2Q以降の決算は3か月ではなく期初からの累計で発表されます。
つまり、2Qであれば6か月、3Qであれば9か月、本決算である4Qは1年間の成績になります。このため、四半期が進むほどに直近3か月単体での成績がわかりにくくなります。
たとえば3Q決算が前年の3Q決算と比べて大きく伸びていたとしても、それは2Qまでの伸びが大きくて、直近の3か月では減速している可能性もあります。いくら3Qまでの累計の数字が良くても、QonQで鈍化しているようなら好業績が継続しそうだとは思えません。
こうした点を確認するためには、最新の決算の数字から前の決算の数字を引き算して、期初からの累計ではなく直近の3か月の成績を確認する必要があります。これが地味に面倒なのですが、マネックス証券が提供している日本株分析ツール「銘柄スカウター」ならその数字が一発で確認できます。
この作業で、直近の四半期の売上高の棒グラフが頭一つ抜き出てきたり、営業利益の折れ線グラフが急角度で上昇しているような勢いづいた様子があるかどうかを確認しましょう。
かぶカブキ
元証券マンの個人投資家
※本記事は『決算書3分速読から見つける10倍株ときどき50倍株 2年で資産を17.5倍に増やした元証券マンの投資術』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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