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【長生き地獄】身が滅びるまでは働き続ける…月収36万円・59歳・高卒サラリーマン「待ちに待った定年退職」を目前に一転、会社に忠誠を誓うワケ【知らないと損する年金ルール】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月8日 9時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

あなたは年金の「44年特例」をご存じですか? 年金制度が変わったことにともなう、特例措置で知らないと年金をもらい損ねることも。今回の主人公は、高卒ですぐに就職したウエノさん。定年退職を考えています。ウエノさんの例を見ながら、「44年特例」について知っていきましょう。

月収36万円・勤続41年の会社員「60歳で退職」を全力で止められた理由とは..

登場人物ゆめこさん……大正時代からタイムスリップしてきた26歳女性。なぜか、現代社会にめちゃくちゃ詳しい。太字部分

ワイ(以下、ワ)……ゆめこさんの白い飼い犬。お菓子好き。ミーハー。 ・ウエノ ケンイチ(以下、主)……59歳、既婚者、子ども2人、高卒で食品加工メーカー勤務、ヘビースモーカー、映画鑑賞が趣味、妻と2人暮らし)

主:俺の名前はウエノ ケンイチ、来年で60歳になる。(2023年動画配信当時)俺が子どもの頃は、大人の男性はみんな一様にタバコを吸っているイメージがある。おまけに吸い殻は当然のように道端にポイ捨てされていたんだ。不適切すぎるだろ?

ワ:デンジャラス!

1960年代の成人の喫煙率は80%。の成人男性の喫煙率は20%程度です。

主:俺が中学生の頃に共通一次試験が始まって、この時代に受験戦争がどんどん激しくなったといわれている。

とはいえ、全体の数で考えると大学に進学する人はまだまだ少なくてな。俺の地元では高校を卒業して大学に行く奴の方が珍しかった。

ケンイチさんが高校卒業する1980年前半の大学進学率は25%前後です。まだまだ大学進学は一般的ではありません。

主:俺は高校を卒業した後、現在勤めている、食品加工業の会社に入った。

その後、26歳で妻と結婚。俺はヘビースモーカーなんだが、世間では次第に「嫌煙」なんて言葉が出てきて、少しずつ喫煙者の肩身が狭くなっていったんだ。

ワ:ふむふむ

俺は2人の子どもに恵まれ、それなりに悪くない、楽しい人生だったなと思うよ。

そんなケンイチさんも来年60歳。老後の生活について具体的に考えなければならない時期ですね。

主:そうなんだよ、あまり具体的なことは考えられていない。現在妻と2人で住んでいる。親父から受け継いだ古い小さな家で、これまで通り暮らしていけたらな~と思っているぐらいだ。

ワ:持ち家なら家賃の心配がないならきっと大丈夫だね!

年金の受給が始まるのは原則65歳です。現在59歳のケンイチさんは、何歳までお仕事を続けるか展望を描く必要があります

主:俺は10代で社会に出からずっと働きづめだったから、60歳でスパッと仕事をやめてゆっくりしたい。来年はついに、待ちに待った定年退職だ!

年金の受給が始まるまでの5年間は無収入になってしまうが、貯金と退職金を切り崩してやっていくとするよ。

それは早計かもしれませんよ。政府の調査によると、高卒者である会社員の平均月収は36万円ほどです。仮にケンイチさんたちご夫婦が今と同じ暮らしをするとすれば、老後2,100万円以上の貯金が必要となります。

会社員の平均的な月収は36万円の場合 今と同じ暮らしを維持するのに:2,100万円以上の貯金が必要

主:ええ!? そ、そんなに必要なのか!? お、大きい声では言えないが、うちの貯金はとてもじゃないがそんなにないぞ。

もちろん、これはあくまで月収の頃と同じ暮らしをした場合です。今の貯金だけで充分に暮らせるという保証がないなか、無収入の状態を5年間続けるというのはリスクではないでしょうか。

主:そう言われると……のんきに構えてられないな。日本人男性は生涯がんになる確率が2人に1人より多いと言われているのにな。がんになったら医療費も一気に膨れ上がるだろうし…。俺はヘビースモーカーだし不安だ。

がんだけではありません。喫煙は心筋梗塞、脳卒中、狭心症など、さまざまな病気の原因になります。さらに、喫煙している本人だけでなく、周囲の方にも肺がんなどの健康被害を引き起こすことが分かっています。

主:本当か!? 2人とも大病を患ったら。お金が全然足りないぞ。

ワ:どうしよう……年金が増える裏技とかないかな?

裏技ではありませんが、増やす方法はあります。ケンイチさんの場合、あと3年働くと、いいことがあるかもしれません。それは、厚生年金の「44年特例」です。

ワ:それな~に?

会社員が手にする老齢厚生年金には大きく分けて、60~64歳に支給されるものと、65歳以降に支給されるものの2つがあります。60~64歳に支給されるものは「特別支給の老齢厚生年金」といわれています。

会社員が手にする老齢厚生年金 1:60~64歳に支給されるもの 2:65歳以降に支給されるもの……特別支給の老齢厚生年金

ワ:あれ? 年金の支給って65歳からじゃなかったの?

実は1986年までは、年金支給開始年齢が60歳だったんです。

60歳まで年金がもらえると思っていたのに。法改正で後5年待たないと年金がもらえない、という人たちは今後の生活や計画が大幅に変わってしまいますよね。そういう人などを救済するための特別措置が、この「特別支給の老齢厚生年金」なんです。

主:ああ、確かに年金の支給年齢が引き上げられたというのは、当時ニュースで見たな。

60~64歳に支給される年金は、定額部分と報酬比例部分に分かれていて、それぞれ受給開始時期が異なります。一定の年齢以下の人は、65歳になるまで年金の一部、報酬比例部分しか受給ができません。

そこで厚生年金保険料を44年以上収めてきた人たちには報酬比例部分だけでなく、定額部分も受給できるようにしました。これが「44年特例」なんです。

60~64歳に支給される年金:定額部分と報酬比例部分(受給開始時期が異なる) 一定の年齢以下の人は、65歳になるまで報酬比例部分しか受給ができません。

「44年特例」 厚生年金保険料を44年以上収めてきた人たちには報酬比例部分だけでなく、定額部分も受給できる

主:なるほど、それじゃあ俺はあと、数年働いたら44年勤続したことになるから…報酬比例部分と定額部分の年金が両方受け取れるってことになるのか!

その通りです。たとえば中学を卒業してすぐに会社員になっていれば厚生年金加入期間は定年退職の時期で既に44年、高卒ならば定年退職の時期で41年になります。

現在、希望すれば65歳まで働き続けることができる環境が整備されつつありますので、高卒の会社員の方には一度、この「44年特例」を念頭に検討していただいた方がいいでしょう。

厚生年金加入期間 中学卒業してすぐに会社員の場合:定年退職の時期で44年 高校卒業してすぐに会社員の場合:定年退職の時期で41年 →「44年特例」を利用すると報酬比例部分と定額部分の年金が両方受け取れる

主:俺みたいな高卒の会社員は、60歳で定年を迎えたあとに3年間働けば、3年分の労働収入に加えて、年金の受け取り額も増やせる可能性があるってことか!

この「44年特例」を使った場合、俺の年金収入がどれほど変わるか、老後資金と照らし合わせて色々と考えてみることにした。その結果、俺は身体が動く限り働き続け、もしもの時には年金を受給できるよう準備をしておくことにした!

ワ:定年後はゆっくりしたいって言ってたのに…無理してない?

いや、よくよく考えてみれば俺は仕事一筋だったからこれっといった趣味もない。年齢とともに友だちも大分減ってしまったし…このままスパッと会社を辞めたら、一気に人と関わることがなくなって、案外俺みたいなのが老後うつになっちまったりするんじゃないか? と不安になったんだ。

調べたら昨今は、高齢者の環境の変化に伴う精神疾患が社会問題になってるって言うじゃないか。とても他人事とは思えないよ。

そこで考えたんだ。職場の再雇用制度を使って60歳以降も働き続ければ給与も減るかわりに、仕事の責任も減るだろ? 時間にも余裕ができるだろうよ。だから今の会社で働き続けながら新しい趣味を探すってのも悪くないと思ったんだ。

ワ:逆境をきっかけに視野が広がったんだね!

主:ああ。縁あって10代から働いている会社だ。これからも再雇用制度を出来る限り活用して、身が滅びるまで働き続けるぞ!  

ワ:くれぐれも無理はしないでね

ゆ:無理がたたって健康を損なえば、医療費が膨れ上がります。身体は何よりの財産です。

ワ:ケンイチさん、これから新しい趣味探すの楽しみだね!

主:それがな、実は今ちょっと編み物に興味があって、最近「ニットカフェ」っていうカフェで定期的に開かれている編み物教室に通い始めたんだ。インスタで色んな人の作品をたくさん観てたら自分でもやってみたくなってね。今、犬用のニット帽を編んでるところだ。うちの犬は俺と同じく高齢で、冬場の散歩中は洋服を着せても寒そうだからな。

素敵です。

ワ:ワイも一緒にやりたい! ワイも一緒にやりたい!

ケンイチさんにはこれからもぜひ豊かな人生を歩んで欲しいですね。

44年特例を受給するべきか、働き続けるべきか。対象者は収入を比べて慎重な判断を!

昭和61年4月、厚生年金を受け取る年齢は男性60歳から65歳へ、女性は55歳から65歳へ引き上げになりました。少子化と長寿化が予想を上回る速度で進行したからです。

もうすぐ年金をもらえると思っていた人々にとっては大きな衝撃です。収入に空白期間ができてしまい、人生設計に大きな影響を及ぼします。そこで影響を少しでも和らげるため、ゆっくりと時間をかけて段階的に年金の支給開始年齢を引き上げていくことにしました。

それがこの表です。

今回のテーマの厚生年金の「44年特例」とは、44年以上厚生年金に加入した人が条件を満たした場合に、特別支給の老齢厚生年金の支給期間に、通常の報酬比例部分に加えて、定額部分を上乗せで受け取ることができる優遇措置です。

ワ:ふむふむ

44年特例には、3つの条件があります。

①特別支給の老齢厚生年の受給者であること  

昭和36年4月2日生まれ以降の人は特別支給の老齢厚生年金が廃止されていますので、対象者は昭和36年4月1日までに生まれた人で、かつ65歳になっていない人です。

②厚生年金の加入期間が44年以上あること 中卒が16歳から60歳まで厚生年金の被保険者だと44年になります。同じく高卒だと41年。大卒の場合は22歳から44年後には65歳を超えているので対象になりません。 ③厚生年金の被保険者ではないこと 60歳で定年退職し、その後雇用延長によって非正規雇用となった場合、注意が必要です。非正規雇用でも厚生年金の保険者である場合があるからです。この場合は対象になりません。

ワ:44年特例って、どのくらい支給されるの?

該当者の定額部分の年金額は、老齢基礎年金の満額である79万5,000円とほぼ同額です。報酬比例部分が120万円の人は、定額部分を加えて約200万円の年金を受け取れます。

さらに扶養している配偶者や子どもがいる場合は加給年金も加算されます。配偶者でおよそ397,500円、1人目、2人目の子どもは228,700円。3人目以降は76,200円です。

44年特例で支給される定額部分の年金:老齢基礎年金の満額である79万5,000円とほぼ同額 例:報酬比例部分が120万円の人→定額部分に加えて約200万円の年金 さらに、 加給年金(扶養している配偶者や子どもがいる場合) 配偶者:およそ397,500円 1人目、2人目の子ども:228,700円 子ども3人目以降:76,200円

ワ:もらえるものはもらわないと損しちゃうね!

そうとは限りません。注意しなければならない点があります。

「44年特例」の上乗せ年金を受給するには、厚生年金を抜けなくてはなりません。ということは退職しないといけなくなりますので、働いていた方が収入が高いことが多いのです。

退職すると、子どもなど自分が家族の扶養に入らない場合は、健康保険料が全額自己負担となります。配偶者や扶養している子どもがいればその分も負担が発生します。

これらを考えると、「44年特例」の上乗せのために退職するほうがいいのかどうかは、慎重に考えた方がいいですね。

ワ:なるほどね! どっちが得かは人それぞれ違うから、しっかりシミュレーションすることが大切なんだね。

ねぇねぇ、ゆめこさん。そのうち年金開始が70歳になったりする?

絶対ないとは言い切れません。そうなるとまた段階的な引き上げ策で、ややこしくなりそうですね。

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