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年金が最大2倍に!甘い言葉にのった〈年金月12万円〉70歳の元サラリーマン、意気揚々と「繰下げ受給」も〈200万円もらい損ね〉に撃沈

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月10日 9時45分

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複雑な年金制度。一見お得にみえるものも、しっかりと理解していないと、思わぬ損をするケースも。そのひとつが「年金の繰下げ受給」。年金受給を遅らせる分、年金が増えるというものですが、いくつもの落とし穴が……みていきましょう。

下位10%の元サラリーマン「年金を増やすこと、できませんか?」

多くが公的年金に依存する老後。だからこそ、どれくらい年金がもらえるのか、切実な問題です。厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、老齢厚生年金受給者の平均年金受給額は、併給の老齢基礎年金と合わせて、平均月14万3,973円。65歳以上の男性に限ると16万3,875円、女性に限ると10万4,878円です。

元サラリーマンについて年金受給額の分布をみていくと、年金月17万~18万円あたりが中央値、年金月11万~12万円あたりが下位10%、年金月23万~24万円あたりが上位10%となります。

【老齢厚生年金受給者の受給額の分布】

月11万円未満:8.3%

月12万円未満:12.4%

月14万円未満:23.2%

月15万円未満:30.1%

月16万円未満:38.0%

月17万円未満:46.7%

月18万円未満:56.0%

月20万円未満:73.3%

月22万円未満:85.4%

月23万円未満:89.0%

月24万円未満:91.3%

たとえば65歳から受け取る年金が月12万円という元サラリーマン。令和6年度、老齢基礎年金が満額月6万8,000円なので、厚生年金は月5万2,000万円。ただこれは額面。実際の手取りは、額面の85~90%とされています。

ライフスタイルにもよりますが、できればもう少しもらうことできれば、生活は楽なのに……誰もが思うに違いありません。

それであれば……と推奨されることが多いのが、年金の繰下受給。これは老齢年金を65歳で受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて、増額となった年金を受け取れるというもの。その加算額は、1ヵ月遅らせるごとに8.4%。つまり70歳まで繰り下げることができれば42.0%増、75歳まで繰り下げることができれば84%増と約2倍。しかも増額率は一生変わりません。

繰下げ受給「年金増額」の甘い言葉に隠された落とし穴

年金の受給を遅らせる代わりに、増額した年金が受け取れる繰下げ受給。

――なんてお得な制度なんだ!

また老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げすることができるという点も見逃せません。65歳以降の生活費、足りない分を片方の年金でカバーし、もらわなくてもやっていける分に関してはもらわずに増額を狙う……そんな年金のもらい方もできるわけです。

ただし、繰下げ受給を活用には注意が必要です。

たとえば65歳で国民年金月6万8,000円、厚生年金月5万2,000万円という元サラリーマン。年金をもらいながら、繰下げ受給も利用して、年金増額を狙います。そして70歳になったある日、自慢気にこんな会話。

――年金を繰り下げると年金が増えると聞いて……いま年金を繰り下げているんですよ

――なるほど

――10歳年下の妻がいるので、すべて繰下げると厳しいから、片方の年金だけ繰り下げています

――えっ、どちらを繰り下げているんですか?

――老齢厚生年金ですね

――……手遅れですね

――えっ⁉

年金の繰下げ受給で注意したいひとつが「加給年金の停止」。加給年金は、本人が厚生年金に20年以上加入し、65歳未満の配偶者や18歳到達年度の末日までの子どもがいる場合にもらえる年金。妻の年収が850万円未満という条件もありますが、数年以内に退職をし年収が850円以下に減ることが確実という場合は、加給年金が受け取れる場合も。

ではいくらもらえるのか、というと、23万4,800円に、特別加算額17万3,300円(特別加算の金額は夫の年齢によって異なる)。つまり年40万円ほどがもらえるということになります。さらに加給年金は、夫の年金に上乗せされるものですが、妻が65歳になると、今度は振替加算が妻の年金に上乗せされます。

老齢厚生年金を繰り下げる場合、繰下げ期間中は加給年金は支給されません。また老齢基礎年金を繰り下げる場合は、振替加算は支給されません。さらに加給年金額と振替加算額は、繰下げによる増額の対象にはなりません。

10歳年下の妻がいるという70歳の元サラリーマンの場合、年40万円あまりの加給年金がもらえず、それが5年あまり続いていたということなので、本来もらえるはずだった加給年金200万円を、老齢厚生年金を繰下げたばかりにもらい損ねた、ということになるのです。

――えっ、そんな! いまから変更できませんか?

そんな願いも、一度、もらい損ねたものを、あとでもらうことはできません。複雑な年金制度。細かなところもきちんと把握しうまく活用しないと、知らず知らずに損をしている、ということも珍しくないのです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況』

日本年金機構『年金の繰下げ受給』

日本年金機構『加給年金額と振替加算』

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