家計が火の車の年収400万円、50代・普通のサラリーマンがまさかの税務調査…「容赦ない追徴課税」に嗚咽【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月14日 11時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
親が亡くなることによって発生する相続は多くの人が経験することでしょう。「うちの親は大した資産もないから大丈夫」と油断しないほうがいいかもしれません。一般家庭であっても相続の発生後、税務調査の対象となる可能性は少なくはないのです。本記事では、52歳サラリーマンのAさんの事例とともに、税務調査の実態について木戸真智子税理士が解説します。
5人に1人は「税務調査」の対象になる
税務調査と聞くと、一般家庭にはご縁のないイメージがあるかもしれません。しかし、実態としてはそうでもないのです。
相続税の税務調査というのは、相続税の申告をした人のうち、5人に1人は税務調査の対象となっているといわれています。そして、相続でもめるということも、意外と身近にあることなのです。
令和4年12月に国税庁で発表された相続税の申告事績によると、相続税財産の金額の構成比は現預金が34.0%、土地が33.2%、家屋が5.1%になっております。この構成比はここ数年、ほとんど変わらない状態になっており、今後も続くものと考えらえます。
一方で令和3年司法統計年報によると、遺産分割で争う遺産の価額は5,000万円以下が全体の76.64%を占めています。遺産分割でもめるのは、お金持ちの家庭のイメージがある方も多くいらっしゃるかと思いますが、実際には、ごく一般的な家庭であることが多いのです。
そんな実は珍しくない税務調査について、ひとつの事例をご紹介します。
親の「負債」が申告漏れ扱いに…
会社員をしている52歳のAさんは2年前に母親が他界しました。母親は亡くなる前の数ヵ月は病院で過ごしていたため、その費用はすべてAさんが負担していました。
Aさんは、一人っ子だったため、5年前に父親が亡くなってからは、母親の世話をずっとしてきました。
そんなAさん自身も、妻と息子の3人家族で、子供も進学を控えているため、生活が余裕というわけではありません。むしろ昨今の物価高もあり、非常に苦しい状態です。幸い妻が働いてくれているので、なんとかぎりぎりやってこれていました。
母親が亡くなってからは、ぽっかり空いたさみしさは埋めることはできず、ただ数年、日々を過ごしていたという状況でした。
税務調査で指摘されたのは…
そんなときにAさんにも税務調査が来ることになりました。なんと申告漏れがあるというのです。調査官の説明は下記のような内容でした。
Aさんの父親は商店をしていましたが、高齢になってからは、付き合い程度の商売のみ。本当にごくわずかな売上のやり取りしかありませんでした。父親が他界してからは、母親が父親の財産をほとんど引き継いでいただめ、商店をしている会社の株式も相続していました。
そして今回、母親が亡くなって、これらを相続したのがAさんなのですが、その会社において、もともと父親が会社に貸し付けていた会社にとっては役員借入金の申告が漏れているというものでした。
Aさんにとっては、なんのことかわかりませんでした。会社にとっては負債で、しかも父親の借入金がなぜ?と状況がつかめないので、調査官に確認をしました。
告げられた追徴課税額
実は、相続で引き継いだ会社において、亡くなった方の借入金があった場合にはそれも申告すべき相続財産になるということでした。
当初は父親の借入金でしたが、その後、母親が相続して、母親名義の借入金になり、それが今回Aさんが相続することになったということでした。ほとんど、取引も一部だった会社ですが、長年経営を続けてきたため、その借入金は1,300万円にもなっていました。
Aさんは、学生のときから、父親の商売の大変さを見てきて、自分には向かないから会社勤めをしようと考え、会社を継ごうとは思っていませんでした。
しかし、父親が長年守ってきた事業だったため、古くからのお付き合いだけは大事にと、母親もそこだけは細々と続けていたのでした。
Aさんが相続をしてからは、それもできなくなり、会社をそのままにしておくのもどうかと思いながらも、商店の整理をしながら、最低限の申告のみをしていただけで2年過ごしていました。そろそろ清算をしようということも考えていたところでもあったのです。
そのため、Aさんにとってこの会社は、どういう状況なのかもよくわからないまま、引き継いだという状態でした。母親も突然、体調を崩してしまったので、いろいろと聞けないままだったのです。
そして、この借入金も当然、会社が借りているといっても、返せるお金もありません。これに対して財産の申告漏れとなり、追徴課税は195万円となりました。
故人の借入金は「相続財産」
中小企業に多くあるこの役員借入金は、いざ相続となると思ってもいない、相続財産となることがあります。そして、それは、なにも知らない相続人である子供に引き継がれ、予想外の税金になることもあります。
実は珍しくない、この役員借入金ですが、もし心当たりがある方は、金額をよく確認してみてください。その額と日々の資金繰りをみて、それは返せる金額なのか、見通しを立ててみてください。
見通しを立てたところ、実は返せる金額を超えているということもあります。その分の預金があればいいのですが、実は返せない、貸付金となると、とても厄介です。
預金がそのままあれば、相続財産として申告をして税金が発生しても、その預金から払えます。しかし貸付金、しかも返済の目途が立たない貸付金の財産に対して、相続税が発生したとなると、その税金は持ち出しとなります。
Aさんも自分の貯金から納税をすることになりました。会社員をしているAさんにとって、突然の納税は当然痛い出費です。「あんまりだよ。いきなり195万円なんて、どうやって払えば……」Aさんは嗚咽が止まりません。
自分は会社員だし、実家のことは関係ないと思っていても、思ってもいないところで影響してくることがあります。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
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