遺産相続でモメがちな「熟年再婚」だが…回避するために必ず知っておきたい、〈前妻の子〉と〈後妻〉の関係がうまくいく「秘訣」【相続専門税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月3日 11時15分
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配偶者と離別、または死別してしまった場合、再婚を考える人も少なくありません。再婚をした場合は、いずれ発生する「相続」のためにも、前妻と後妻だけでなく、それぞれの「子ども」への対応が重要になる、と「税理士法人レガシィ」代表税理士の天野大輔氏は言います。天野氏の著書『相続でモメる人、モメない人』(日刊現代)より、再婚後の注意点について、詳しくみていきましょう。
「遺言を書いてくれ」と迫られることも……
60代以降で再婚する場合、前妻の子どもとのコミュニケーションが特に大事になります。多くの場合子どもたちはすでに独立していて、再婚相手と一緒に暮らすことはないでしょうから、つい疎遠になりがちです。
前妻の子どもたちからすれば、父親が後妻に肩入れしてしまい、自分たちのことなど忘れてしまったと感じます。財産もすべて奪われてしまうのではないかと考えて、「遺言を書いてくれ」と迫ることもあるでしょう。
だからこそ、子どもたちの心配が募る前に遺言書を書いて、親の意思をしっかりと示しておくのがいいと思います。再婚した場合の相続人は配偶者と前妻の子どもです。後妻との間に子どもが生まれたときには、その子どもも相続人になりますが、後妻の連れ子は相続人ではありません。後妻の連れ子にも相続させたい場合には、養子縁組することで相続人にできます。
こんな事例がありました。先妻を亡くした後、再婚していたBさんが亡くなりました。相続人は長男、次男、長女。そして後妻とBさんの養子となっている後妻の長女の5人です。
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前妻の子どもたちにしてみれば、「お母さんがかわいそう」との気持ちになりがちです。実際に前妻の長女の口からは、そうした言葉がしばしば出てきました。おそらく「おかあさんはあれだけ苦労したのに、いきなり出てきた後妻に半分の相続権があるなんて、冗談じゃない」との気持ちだったのでしょう。
その気持ちはわかりますが、母親が亡くなったことを変えることはできません。であれば、「変えられること」に目を向けてプラス思考で考えることも大事です。妻を亡くした父親がひとりのままでいるべきというのは、かわいそうです。
プラス思考で後妻を見れば、晩年の父親の面倒をよく見てくれたとの感謝の気持ちが生まれるかもしれません。
このケースの場合、法定相続分をベースにすると、後妻が2分の1、前妻の子どもと後妻の子どもの計4人が残り2分の1を等分することになります。
ここで前妻の子どもからは「婚姻期間は私たちのお母さんのほうが長いのだから後妻はもっと少なくていいはず」との声が出てくることもあります。
「前妻の子」と「後妻」の関係がうまくいく秘訣
一方で、後妻と前妻の子どもが仲良くしているケースも多く、「母親が違うのにずいぶん仲がいいんだな」と驚くほどです。ドラマでは後妻と前妻の子どもがかなり争っている状況が描かれることがありますが、それはむしろ少数派です。
相続でモメないためには、やはりコミュニケーションが重要なのです。実は、前妻の子どもと後妻の関係は、後妻次第です。後妻のほうから働きかけをすれば、前妻の子どもといい関係が築けます。たとえば、再婚後は定例行事を頻繁に開催して、前妻の子どもたちと会う機会を増やすのも有効です。とくに重要なのは、前妻の命日、クリスマス、正月、誕生日です。
「前妻の子」と「後妻の子」は、、特別受益でモメやすい
前妻の子どもと後妻の子どもが相続でモメるパターンとして特別受益が原因になるケースがあります。特別受益とは、一部の相続人が高額な贈与など、被相続人から受け取った特別な利益のことです。これは、民法上のテーマで税務上にはない考え方です。
たとえば、ひとりだけ留学費用を負担してもらっていた場合には、金額が大きいだけに特別受益になる可能性があります。前妻の子ども同士であれば、それほど問題にならないかもしれませんが、前妻の子どもと後妻の子どもがいる場合には、起こりやすいトラブルです。
仮に留学費用が特別受益と認められた場合には、その費用は過去に贈与を受けたものとして、相続財産に上乗せして計算します。贈与を受けた時期も問題になります。2019年の民法の改正があり、遺留分の計算上は10年以内に限定することになりました。10年以上前のものまで対象とするときりがないので、限度を設けることにしたのです。
天野 大輔 税理士
税理士法人レガシィ
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