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“買収するだけ”では企業価値は上がらない…経営コンサルが教える〈成果を出すM&A〉の定石【チェックリスト付き】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月19日 19時0分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

今やM&Aは、上場企業のみならず中堅・中小企業も活用している経営手法ですが、実行前に想定していたシナリオと異なる結果になる事例が少なくありません。100件以上のM&Aコンサルに携わってきた丹尾渉氏は、「戦略なきM&Aは失敗する」と断言します。同氏の著書『M&A成長戦略』(監修:株式会社タナベコンサルティング 戦略総合研究所、ダイヤモンド社)より一部を抜粋し、企業価値を高めるためのM&Aの手順を見ていきましょう。

企業価値を高める「戦略×成長M&A」

「戦略×成長M&A」とは、「戦略なきM&Aは失敗する」ことを表現するため、筆者らが創り出した用語である。中長期ビジョンの策定だけで企業価値を高めることはできない。一方で、やみくもにM&Aを実行してしまうと失敗につながる。戦略と成長M&Aのどちらか一方が欠ければ、成果は「ゼロ」である。M&Aを実行する上での指針となる戦略と、それに基づく「成長M&A」をシームレスにつなぐことが求められる。

「戦略×成長M&A」は、自社の中長期ビジョン実現のために、企業買収の目的と具体的な候補企業を明確化し、積極的に仕掛け(提案)を行うとともに、それに基づいたM&Aの実行策を組み合わせた一連の流れを指す。譲受側は、この「戦略×成長M&A」を軸にM&Aを展開することで、さまざまな変化をマネジメントし、企業価値を高めていくことにつながる。次に、そのステップを示す。

【ステップ①】M&Aの成長戦略を策定

自社の現状の経営資源を前提に戦略を組み立てようとすると、現在の事業の延長線上で何ができるかという思考になりがちである。だが、M&Aでは「現状の経営資源という制約条件を外し、中長期的に自社はどういう姿になりたいか」という思考で戦略を立てるべきである。中長期ビジョンを明確化すれば、そのビジョンの実現のためにどのような経営資源が必要で、そのうち外部から「何を調達するか」(M&Aの目的)が、M&Aの戦略策定では重要な検討事項となる。ここがはっきりしないと、自社のM&Aが成功したかどうかさえわからなくなる。

【ステップ②】M&A候補企業の選定

自社の中長期ビジョンとM&Aの目的(どの不足を補うか)を明確にした後、買収候補先の企業を具体化する。まず、候補先の大まかな基準を設定したロングリスト(絞り込む前段階の買収候補先)を作成する。“大まかな基準”とは、事業(取り扱い商材・サービス)、地域、売上規模などで、この時点では買収の実現可能性を考慮せず、対象範囲内に入る企業を広く列挙していく。

作成したロングリストから、事業内容、販売チャネル、地域シェア、製品ブランド力、技術力、株主構成、財務状況などを基準にスクリーニングし、候補先を絞り込んでいく(ショートリストの作成)。その際、マトリクスで分類し、カテゴリーごとに整理することも効果的である。

【ステップ③】M&Aの仕掛け(提案)

具体的な候補先を選出した後、買収を仕掛けていく。“仕掛け”と書くと物騒に思われるかもしれないが、敵対的買収というニュアンスではなく、自社と相手先の成長発展を戦略的に提案するという意味合いである。では、どのように買収を提案するのか。これは、相手先の状況によって接触、提案の仕方が異なる。

例えば、後継者が不在で事業存続と従業員の雇用維持などオーナーが安心して引退できることを求める「後継者不在型」、財務状況が芳しくない企業が経営の安定化を図る「企業再生型」、また地域・業界で生き残るための「再編型」や、経営統合や合併によってトップシェアを握れるなど明確なメリットがある「戦略型」が挙げられる。こうした買収候補先の状況に応じて、自社との提携シナジーと相手先のメリットを的確に伝え、提案を行う。

提案方法は、自社による直接的な提案も本気度を示す意味で有効だが、自社の素性を知られずに相手先にアプローチをしたい場合もあるだろう。特に“狭い”業界であればM&Aの動きを察知されやすい傾向がある。水面下で動いていたとしても、「どこどこの企業が同業に声をかけている」という情報が広がることがある。その際は、相手先の取引金融機関や仲介会社、コンサルティング会社など外部の専門家を活用し、ノンネーム(匿名かつ大まかな企業概要)での打診から行うとよい。

【ステップ④】M&Aの実行

そして、M&A戦略が固まったら実行である。リストを作成して終了ではなく、M&Aは行動に移さなければ意味がない。相手先へのアプローチを繰り返すことで、最初は断られていても道が開ける場合がある。M&Aは長期戦でもある。タイミングよく成約すれば御の字であるが、そう思い通りにはいかない。だからこそ、M&Aの動きを継続し、途中で目的を見失わないように、戦略から実行まで一貫性を持った動きが必要だ。

成長M&Aは、自社のビジョンを高い確率で実現させるための手段となる。現在のM&Aマーケットは譲渡側に有利な“売り手市場”となっており、譲受側は数少ないチャンスをうかがう形となる。しかし、外部の「持ち込み案件待ち」だけでは、自社のビジョン実現の確度は高まらない。しっかりとした中長期のM&A戦略を立て、買収の候補企業をアウトプットすることで、持ち込み案件への適切な検討が可能となる。

M&Aのポイントを整理したチェックリスト(図表)を活用して、自社の現在位置を確認し、今後の準備に必要なアクションを今一度、整理していただきたい。

【著者】丹尾 渉

株式会社タナベコンサルティング執行役員

M&Aコンサルティング事業部長

【監修】株式会社タナベコンサルティング 戦略総合研究所

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