食事する姿を鏡でチェック!? 元気な100歳女性が毎日続ける「老化防止の習慣」とは【医師が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月27日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「人生100年時代」の現代において、老化は避けられない問題となっています。今日から実践できる「身体と脳を若返らせるトレーニング」を見ていきましょう。『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)の著者で医師の霜田里絵氏が、詳しく解説します。
今日からすぐできる…“不老脳”をつくるトレーニング
余裕があれば“不老脳”をつくるトレーニングにチャレンジしてみてください。特別な道具は必要ないため、今日からでもできるようなものがほとんどです。100歳まで自分の脳とつきあっていくために、体形だけでなく脳のメンテナンスも心がけましょう。
「太もも上げ」運動で大きい筋肉を鍛えよう
長くウォーキングを続けるために大きな筋肉を鍛えることにもぜひトライしてみてください。
まず、右足の太ももが床と平行になる高さまで上げます。最初はふらつくかもしれませんが、そのときは転倒しないよう、必ずどこかにつかまった状態でやってみてください。
次に、足を上げた状態で10秒間、そのままの姿勢を保ちます。10秒経ったら足を床に下ろします。
この「太もも上げ」運動を右足20回、左足20回、毎日朝と夜にしてみましょう。この運動では、姿勢や歩き方に重要な役割を果たす「腸腰筋」を鍛えることができます。腸腰筋は「大腰筋」と「腸骨筋」を合わせた呼び名です。大腰筋は背骨と大腿骨をつなぐ筋肉、腸骨筋は骨盤と大腿骨をつなぐ筋肉で、大きな筋肉です。
腸腰筋が衰えると骨盤が傾くため、よい姿勢を保つことができず、猫背になります。速く歩くのが難しくなったり、つまずきやすくなったりして、歩くのが億劫になります。腸腰筋を鍛えておくとウォーキングの距離を延ばしたり、スピードアップしたりすることができます。それが脳のトレーニングにもつながります。筋肉から成長ホルモンのマイオカインが出ることも期待できます。
「太もも上げ」運動に慣れてきたら、可能な人は次の動きも取り入れてみましょう。片足を上げているときに、もう一方の軸足でつま先立ちするのです。ただし、くれぐれも無理はしないでください。ふらつきそうなら、どこかにつかまって行ってみましょう。
「太もも上げ」運動+「つま先立ち」運動は、腸腰筋を鍛えつつ、ふくらはぎの筋肉を鍛えることができます。ふくらはぎの筋肉が鍛えられると、一層リズミカルに歩けるようになります。バランス感覚を鍛えるためのトレーニングとしても効果があります。
背筋を伸ばして“ナルシスト”的に鏡を見よう
毎日の「背筋伸ばし」も不老脳をつくるのに役立ちます。脳は視覚、聴覚、触覚などを通して外部からの情報を受け取り、それらを総合的に判断して筋肉に指令を送り、全身のコントロールをしています。脳は司令塔として、指令の実行役である筋肉と連携し、たくさんの情報をやりとりしているのです。
この情報のやりとりは脳から筋肉だけでなく、筋肉から脳に向けても行われています。背筋をスッと伸ばすことで、腰部を構成する筋肉群が刺激を受け、脳にいい影響を与えるのです。
姿勢は、認知症の予防においても重要です。70代以上であっても、背筋が伸びて姿勢のよい方は、その後の長い期間、認知症の心配が少ない印象です。私の担当する100歳の患者さん(女性)は、毎日、背中の下に枕を入れて背筋を伸ばしたり、食事のときに横に鏡を置いて自分の姿勢を確認したりしています。100歳ですから少々の不調はありますが、認知症はなくとてもお元気です。
人間は背筋を伸ばすより、丸めているほうがずっと楽にできています。意識しないとすぐに体が丸まってしまい、猫背になりがちです。日常生活ではどんなときも背筋をすっと伸ばし、よい姿勢を保つことを心がけましょう。人と話しているとき、食事のとき、テレビを見ているとき、机に向かっているとき、本を読んでリラックスしているとき――。ナルシストと思われても気にする必要はありません。鏡を置いて確認するくらいでちょうどいいのです。
背筋を伸ばすのは、私たちが思う以上に筋力が要ります。下腹部や椅子に面している骨盤底部の部分に力を入れることを意識すると、さらにいい筋力トレーニングになります。余力のある人は次のトレーニングもしてみましょう。
壁に向かって立ち、両手を上げて壁につけ、背筋を伸ばしてみてください。この状態を10〜15秒保ちます。背中と腰の力を緩め、再度スッと背筋を伸ばしてみてください。これを朝・昼・夜と5〜10回ずつ行います。
1日に赤ワインをグラス1、2杯飲もう
欧米では、食事で動物性脂肪(飽和脂肪酸)をたくさん摂取する傾向があります。その結果、コレステロールが増え、血管の動脈硬化が起こりやすくなり、心筋梗塞による死亡率が高まります。
ところがフランスでは、血管障害による死亡率が他の国々より断然低いのです。その理由として赤ワインの消費量が多いからと言われています。
ワインには、脳の神経細胞に蓄積したアルツハイマー型認知症を引き起こすアミロイドβタンパクの凝集を抑制するポリフェノールがたくさん含まれています。実際、ワインを飲むとアルツハイマー型認知症が0.49倍にほぼ半減するという驚くべき報告まであるのです。
ワインに血管の動脈硬化を遠ざける効果があるということは、脳血管性認知症のリスクを下げることも意味しています。また、ワインには記憶に関係する海馬を活性化する効果もあります。ポリフェノールは白ワインより赤ワインに多く含まれています。ポリフェノールがたくさん含まれるぶどうの皮ごと発酵処理するためです。お酒を飲みたいなら、1日にグラス1、2杯の赤ワインにしましょう。
アルコール飲料を飲めない方も残念に思う必要はありません。ポリフェノールはぶどうの皮に含まれていますから、ぶどうを皮ごと食べればいいのです。近年は皮ごとたべるぶどうの品種もあります。「ナガノパープル」は皮ごと食べやすく、ポリフェノールが豊富です。
ぶどうジュースやカシスジュースもおすすめです。成分表示を見てポリフェノールの含有量が多いものを選んで、カロリーに気をつけながら適量を飲みましょう。
ワインでもジュースでも、お気に入りのワイングラスを準備して飲んでみてはいかがでしょうか。このとき、グラス磨きの布もいっしょに購入しておいて、時間に余裕があるときはグラスを丁寧に磨く時間を持ちましょう。薄く繊細なつくりのワイングラスを磨くときは力の入れ加減が重要になります。手先の感覚に神経を集中させ、手指を繊細に動かす作業は脳によって非常によいトレーニングになります。
霜田 里絵 医師・医学博士
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