見栄えだけ綺麗、虚偽演出…オフィスビル投資で選んではいけない「要注意物件」の見分け方【不動産売買のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月21日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
オフィスビル投資をする際、物件選びはとても重要です。しかし、初めて物件選びをする人は、見た目だけで選んだり、物件情報に潜む落とし穴に気づかず、間違った選択をしてしまう人も少なくありません。ここでは『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術/著者:青木龍氏』(ビジネス教育出版社)より一部抜粋し、物件を選ぶときの注意点を解説します。
一見ハイセンスなハイグレードビルを買ってはいけない
「オフィスビル投資」においてもっとも大事なのは物件を見つけることですが、初めての方の場合、どうしても「買ってはいけない物件」に手を出してしまいがちです。そこで、ここではオフィスビルを購入するときの「やってはいけない」をお伝えしていきます。
最初に気をつけたいのは「見栄えだけ綺麗な物件」に手を出さないということです。これはオフィスビル購入の経験がある人でも引っかかりがちなので要注意です。[図表1]の図をご覧ください。
これは私のクライアントに他社の営業から寄せられた物件情報です。クライアントからは「こんな物件を紹介されているのですが、大丈夫そうですか?」と相談がありました。概要は、六本木駅から徒歩1分、8階建ての一棟ビル、築2年、面積62坪、利回り4.5%、価格は10億円です。
あなたならこの物件、買いますか?東京の中心地の1つである六本木の駅から徒歩1分圏内で、しかも築2年。かなり築浅(ほぼ新築)で、利回りが4.5%ですから、つい「長く営業外収益を得られそうな良い物件」だと思うかもしれません。
しかし、この物件にはたくさんの落とし穴があります。まず、坪数が62坪しかありません。これは1フロアではなく総面積です。これで10億円ということは、売買坪単価を割り戻すと坪1,600万円ほどになります。売買単価が坪1,600万円なら、一昔前の銀座SIXが買えるレベルの価格です。
次に、1階の店舗は約5坪で月の家賃が約64万円です。ということは1坪で約14万円。空中階は約11坪で約56万円なので1坪で約5万円です。現実の話をすれば、名のある不動産会社が運営しているようなビルでも、六本木周辺だと坪賃料は3~4万円です。つまり、この物件の坪賃料はとても割高であることがわかります。
他にも、この物件には言いたいことがまだありますが、ここでは割愛します。少なくとも、六本木で築浅……という聞こえのよいい言葉で物件選びをすると失敗する典型例と言えます。
賃貸面積が10坪以下で、このグレードで、今の坪賃料が継続することはまず考えにくいです。事業として計画を組んだときに「売上が下がり続けるビジネス」ということがわかります。
このように、一見して見栄えが綺麗な物件こそ慎重に。安易に手を出すことは控えましょう。
〝ほぼ満室〟に見せる虚偽演出の物件に手を出してはいけない
引き続き前ページの[図表1]をご覧ください。この物件は利回りを高く見せるための〝演出〟がほどこされていることが推測できます。というのも、一番右の項目に特記事項として「2年内解約ペナあり」「中途解約ペナあり」とあるからです。
ペナとは「ペナルティ」のことです。このような記述がある場合、ほぼ確実に何かしらのサービスが現在のテナントにつけられていることがわかります。「レントホリデー(※)」や、フリーレントを長期間設定しているようなものです。
※賃料無料期間を分割させる制度のこと。賃貸契約期間中のどこかで無料期間をつくることで、テナントの年間の賃料支出の総額を抑えることができる。
このような物件は、仮に利回り4.5%となっていても実質はそれに満たないことがよくあります。ただでさえ割高なので、今のテナントが抜けたあと、同じ賃料では次の客付けがうまくいかないことが多いでしょう。
結果として賃料を下げざるを得なくなり、当初の利回りを達成できないことがあるのです。賃貸借契約書をよく確認すれば見抜けますが、パッと見の数字のよさで直感的に決めてしまう人は少なくありません。そのような人はほとんどの場合、残念ながら運用がうまくいっていないのが現実です。
ここで1つ、質問です。物件が2つ提示されたとします。物件そのものの条件は同じです。物件Aは、不動産会社所有の物件で、先月テナントが入りました。物件Bは、個人オーナー所有の物件で、6年間継続しているテナントがいます。あなたならどちらを購入したいですか?
この質問をすると、物件Aを選択する人が少なからずいます。理由を聞いてみると「テナントが入りたてで、これから長く賃料を取れそうだから」という答えが多いです。逆に「物件Bはすでに6年間も入っているので、そろそろ退去されそうな気がする」という答えもありました。
しかし、実際は真逆です。手を出すべきは「物件B」なのです。なぜなら、物件Aには不動産会社による「演出」が見え隠れしているからです。
言うまでもなく、不動産会社は不動産のプロです。そのプロが所有している物件で、しかもテナントが先月入っているのです。先述のレントホリデー(フリーレントも含む)や仲介手数料無料(仲介業者に払うインセンティブの上乗せ)が成された可能性があります。
さらに、そこには不動産会社の〝焦り〟のようなものも感じられます。そもそもビルは空室の状態で売れることはほぼありません。「自社で使う」というケースよりも「すでにテナントの入っている収益モノ」としてのニーズのほうが高いからです。
そのため、不動産会社が売却するために無理やりテナントをつけている可能性があるのです。無料期間をつけて「とりあえず入ってもらっている状態」にして、とにかく売り抜けようと焦っているのです。実際、先月入ったテナントと6年間入っているテナントの退去の可能性についてはどちらも同レベル。出るか出ないかは同じ確率です。
けれど、経験の少ない人の場合、新規テナントにプレミアム感を覚えることがあるでしょう。しかし、その背景には実は売り手による何かしらの演出が入っていることは大いにあるのです。
青木 龍
株式会社Agnostri(アグノストリ)代表取締役社長
※本記事は『御社の新しい収益基盤を構築する 区分オフィスビル投資術』(ビジネス教育出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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