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東京の街は〈多様化〉が進むけれど、住まいは〈分断〉が進む…東京23区にパワーカップルが集中するワケ【専門家の助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月31日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

社会的には「多様性(ダイバーシティ)」が非常に重視されるようになった一方で「住まい」のダイバーシティ化は進まず、むしろ分断が進んでいると麗澤大学工学部で教授を務める宗健氏は指摘します。宗氏の著書『持ち家が正解!』(日経BP)より、所得の高い世帯が一部地域に集中している理由について見ていきましょう。

東京23区にパワーカップルが集中しているワケ

東京23区の新築マンションの平均価格がバブル期を超えた理由の一つとして、東京23区には世帯年収が1,000万円を超え、夫婦両方が大卒以上で正社員のパワーカップルと呼ばれる共働き夫婦が多いことがある。

東京23区だけではなく首都圏には大企業が多く高い年収が得られる仕事も多いが、なぜ23区にそうしたパワーカップルが集中しているのだろうか。

そこには、「人は似たもの同士が集まるようになっている」という社会的習性がある。居住者の属性は地域によってどのように違い、それが不動産価格等にどのように影響しているかを見てみよう。

企業組織を中心として、世の中では多様性(ダイバーシティー)が非常に重視されるようになっている。経営学の分野でも人材の多様性は業績を向上させる、といった研究成果が見られ、女性管理職比率、女性役員比率が経営指標として提示されることもある。また、街づくりでも多様な人々が暮らし、新しい価値を生み出す活力のある街が理想とされていることが多い。

しかし、こうしたダイバーシティーには、新しい「あるべき社会規範」というある種の理想論的な思想の傾向があるように思う。

東京を中心とする首都圏は、多様な人々が暮らす、間違いなくダイバーシティーな街であり、コロナ禍においても、現在も人が集まり続けている。大手町のオフィス街には多様な人種の様々な職種の人たちが働き、新宿周辺は多国籍なにぎわいのある繁華街を形成し、男女の違いやLBGTなどの性的少数者に関する寛容性・受容性も格段に高まっている。

しかし、そうした人たちがどこに住んでいるのか、ということを注意深く見ていくと、実は住まいの観点ではダイバーシティーは進んでいないことがわかる。多様な人々が交ざり合って暮らしているというわけではなく、むしろ分断が進んでいるのだ。

世の中全体でのダイバーシティーへの意識は高まっているとしても、身近な生活の範囲では様相が異なる。心理学で類似性の法則と呼ばれる、自分と似た人に好感を持ちやすいという心理効果が働き、意識的ではないとしても、人は、自分と同じような人が住んでいる場所を選択する傾向があるのだ。

所得の違いが居住地を分断し始めている

街にはその街ごとの雰囲気というものがある。いつもと違う場所に行くと自分の住んでいる場所との違いを感じることがあるだろう。

街の雰囲気は、住んでいる人たちによって決まってくる。そこには個々人の学歴や職業、年収といった様々な要素が関係している。ただ、日本は欧米と比べて属性の違いを実感することが難しいかもしれない。欧米の場合は人種が多様で、富裕層はクルマを利用するのに対して低所得者層は地下鉄やバスなどの公共交通機関を利用することが多い傾向があるなど、差が顕著に表れる。しかし日本は欧米よりも人種の多様性が比較的低く、治安も良いことから所得によって利用する交通機関が大きく違うといったことはない。

そうした見えにくい地域の居住者属性の違いを可視化しようと試みたのが、筆者の2018年の論文「富裕層および団地の集積が家賃に与える影響」だ。1都3県の中心部で所得の高い世帯が居住している地域をグレーで表したのが、[図表1][図表2]のマップである。

東京都心3区と23区南西部および中央線沿線、川崎市・横浜市の北部と横浜市山手地区および鎌倉市周辺、さいたま市南部、千葉県では浦安市と千葉市美浜区、印西市といった地域に、「所得区分9」と示した所得の高い世帯が集積していることが分かる。

こうした地域に住んでいる人たちは、意識してのことか、無意識かは分からないが、結果的に似たもの同士が集まって住んでおり、それが地域の雰囲気を形成している。

類似性の法則は同類性とも呼ばれ、顕著に働く例として結婚がある。前述の通り、東京23区には夫婦の両方が大卒で正社員という組み合わせが非常に多い。

この同類性は昔より強まっており、筆者が企画設計分析を行った「いい部屋ネット 街の住みここちランキング」の個票データを集計してみると、全国の既婚者で夫婦両方が大卒である比率は24%だが、回答者が40歳未満の場合には31.5%に高まる。

これは、若年層の大卒率が高いという影響もあるが、東京都では50.8%と半数を超えている場所もある。東京の一部地域は、全国でも飛び抜けて同類性の高い街になっているということでありその同類性の高さがまた同じような属性の人たちを惹きつけているようだ。

宗 健

麗澤大学工学部教授/AI・ビジネス研究センター長

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