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「64歳11ヵ月が一番得なんだぜ」ドヤ顔で退職した年収800万円の同期だったが…1年後に大後悔「お前のほうが正しかった」意気消沈のワケ【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月25日 11時30分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

定年退職のタイミングによって受け取れる金額が変わる、そんな話を耳にしたことのある人は多いでしょう。しかしなかには、安易な決断により、のちに後悔してしまう人もいるため要注意です。本記事では、定年退職したAさんと、64歳11ヵ月で退職したBさんの事例とともに、退職のタイミングにおける注意点について社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。

雇用保険の給付は65歳を境に大きく変わる

失業手当は65歳前後で給付される日数が大きく変わります。65歳前に自己都合で退職すると、働きだしてからの期間(算定基礎期間)によって、90日、120日、150日分、受け取ることができます。さらに、会社都合等で退職した場合は、受給できる日数は長くなります。

65歳を過ぎると、働いた期間が1年以上であれば50日分、6ヵ月以上1年未満であれば30日分の一時金として高年齢者求職者給付金を受け取ることができます。

※今回は雇用保険に加入し、そのほかの要件をみたしている条件でのお話です。

AさんとBさんは同期です。Bさんは雇用保険のお得な受け取り方をインターネットで調べ、「64歳11ヵ月で退職すると一番得なんだぜ!」とAさんにドヤ顔で退職し、150日の失業手当を受給しました。そんなBさんの姿を目にしたこともありAさんは悩みましたが、お世話になった会社に最後の最後まで尽くそうと65歳定年まで働くことにしました。65歳以降は日数を減らして同じ会社で働く予定です。

では、本当に65歳前に退職するほうがお得なのでしょうか?

65歳前に退職するメリット・デメリット

Aさん、Bさんを例に考えてみましょう。

1.受給期間が異なる  Aさんは一時金として50日分、Bさんは給付制限2ヵ月の後、150日分となります 2.賃金日額・基本手当日額の上限額が異なる(2024年5月現在) ・60歳~64歳未満の賃金日額上限は16,210円、基本手当日額上限は7,294円 ・65歳以降の賃金日額上限は13,890円、基本手当日額上限は6,945円 2人の賃金日額は上限なので、Bさんがより多く受け取れます 3.給付制限期間の有無 自己都合退職は手当受給までに給付制限2ヵ月がありますが、定年退職にはありません 4.公的年金との調整 65歳未満で求職の申し込みをすると、年金は失業給付を受けたかどうかに関わらず一定の間、老齢厚生年金の全額が支給停止されます Bさんは、65歳前に退職しますが、65歳以降に求職の申し込みをすると、年金は支給停止されず、併給できます

上記からBさんは給付制限期間があってもお得!と考えたのも納得がいきます。

Bさんが大後悔することになった「退職金」

2人の年収は同じ800万円、同じ会社に勤めた同期で、65歳定年時の退職金見込み額は1,500万円となっていました。Aさんは定年退職し、再雇用で週2,3回の働き方をする予定です。

一方、Bさんは定年退職1ヵ月前に退職し、失業手当を受給しながら年金を受給。受給後はアルバイト程度に働こうとしています。

2人の年金はほぼ同じ金額で、老齢基礎年金81万6,000円(2024年度満額)と老齢厚生年金129万8,340円(平均標準報酬月額47万円、504月で計算)です(差額加算除く)。年額では約211万円、月額換算すると約18万円となっています。

「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」の厚生年金保険(第1号) 老齢年金受給権者状況の推移(男子)によると、65歳以上の平均年金月額は16万7,388円。また、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)消費支出は14万5,430円(家計調査報告 家計収支編2023年(令和5年)平均結果の概要)となっています。

2人とも平均以上額が受け取れる予定であり、日々の生活は年金でどうにかやりくりできそうです。ただし、ゆとりある生活をするには、少し貯蓄を取り崩すようになるでしょう。老後の資金として退職金が多いと不安が軽減されます。

退職金は会社の就業規則、退職金規程などで決められていますが、定年退職と自己都合退職とでは金額が異なるケースが多いのです。

厚生労働省の「退職給付(一時金・年金)の支給実態(2023年度)」から、定年退職と自己都合退職では、自己都合退職は約84%となります。つまり、多くのケースで自己都合退職を選んだ場合、退職金を満額受け取れるわけではないようです。

2人の会社でも退職金の規程により、自己都合退職は定年退職の80%と定められていたため、Aさんは1,500万円ですが、Bさんは1,200万円にとどまることになりました。300万円という大きな差が出てしまったのです。

受取金額に300万円の差が…

1年後に再会した2人。定年後に受け取った金額を確認すると……

Aさん 失業給付6,945円×50日分=34万7,250円と退職金1,500万円 Bさん 失業給付7,294円×150日分=109万4,100円と退職金1,200万円

確かにBさんは失業給付を多く受け取りましたが、退職金が減額していたことに気が付き、200万円以上の差が! Bさんは落ち込みが隠せません。会社への義理で65歳まで退職しないことを選んだAさん。「つまらない義理で」とBさんはからかったことを大きく後悔することに。さらに、アルバイトも見つからないBさんは、「お前(Aさん)のほうが正しかったのか」と嘆きます。

定年退職前後にまつわるお金は非常に複雑です。ネットでみたひとつの情報を鵜呑みにして、あとあと後悔することのないよう、しっかりと熟考しましょう。場合によっては専門家へ相談することも一案です。

参考

4 退職給付(一時金・年金)の支給実態 第22表 退職者1人平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の退職者) https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/23/dl/gaiyou04.pdf

雇用保険の基本手当日額が変更になります https://www.mhlw.go.jp/content/001125522.pdf

三藤 桂子 社会保険労務士法人エニシアFP 代表

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