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年金暮らしの80歳父が“終の棲家”探し開始→「とてもじゃないが老人ホームの費用を手助けする余裕は…」不安しかない息子が一転、心の底から感謝したワケ【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月30日 7時15分

年金暮らしの80歳父が“終の棲家”探し開始→「とてもじゃないが老人ホームの費用を手助けする余裕は…」不安しかない息子が一転、心の底から感謝したワケ【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

親が高齢になると、「急に倒れたりしたらどうしよう」「生活に不便があるのではないか」など、1人にしておくのが心配になるものです。そこで選択肢となるのが、老人ホームなどの施設で余生を過ごすことです。今回は誰もが迎える高齢期の住まい探しのポイントとして、入所できる施設はどんな種類があるのか?予算の決め方はどうするか?施設を選ぶ際の注意点は?といった点を、80歳になる父の施設探しをすることになったAさんを例に、CFP®・社労士の井戸美枝氏が解説します。

妻亡き後、一人暮らしをする80歳父親の「終の棲家」を探す

Aさん(男性・50歳)の父親は今年で80歳になります。昨年妻を病気で亡くし、現在は築45年の一軒家で暮らしています。しかし、1人で住むには広過ぎて、徐々に管理も大変になってきたそうです。

Aさん自身は仕事の関係で遠方に暮らしており、一緒に暮らすことは難しいという事情があります。年齢なりに衰えはあるものの、まだ元気なうちに引っ越しておきたいという父の意向もあり、Aさんは父と共に転居先を探し始めました。

とはいえ、狭い家に移ってまた1人暮らしをするというのも、父の年齢を考えれば心配です。そのため、万が一のときにも安心な「施設」への入居がいいのではという話になりました。

健康に不安がある高齢者が入居できる施設は、大きく分けて2種類あります。介護を必要とする人が暮らす施設と、日常生活の一部を補助してもらう比較的元気な人も入居できる施設です[図表1]。

また、施設ごとにかかる費用も大きく違います。いくら「この施設を利用したい」と思っても、その資金がなければ入居することはできません。そのため、施設入居にいくら捻出できるのかを考えることが必要になります。

Aさんは、施設探しの話が出たところで内心不安になりました。「父の安全はもちろん大切だけど、施設にかかる費用を父はどれだけ出せるのだろうか…」

施設入居にまつわる費用は親の収入や資産の中から捻出する

Aさん自身には子どもが2人いて、下の子は来年大学に入学する予定です。父のことを心配する気持ちはありますが、施設入居の資金を手助けする余裕はないというのが実情でした。

ここで気をつけたいのは、入居にまつわる諸々の費用は、親の収入や資産の範囲内で行うということです。もちろん、子の家計に余裕があればその限りではありませんが、基本的には親自身が支払える金額の中から入居先を検討するようにしましょう。

冷たいようですが、親が介護を必要とするタイミングは、子どもの世帯でも出費が重なる時期にあたるケースが多いのです。子どもがいれば教育費が必要であったり、住宅ローンを支払っていることもあるでしょう。

いずれ子ども自身も介護を必要とする時期がやってきます。子の世帯の家計のバランスが崩れてしまうと、そもそも親の介護を手伝えなくなったり、悪循環に陥ってしまう可能性があります。

施設の予算を決める際は「親の資産+毎月の収入×入居する見込み年数」から、もしもの時の費用を差し引いた金額を目安にすると良いでしょう。

Aさんの父親の年金は約18万円/月。また、毎月の収入として株式の配当約2万円/月もありました。そのほかに預貯金が約2,500万円、株などの有価証券が約1,000万円、持ち家の一軒家(売却の見込み価格は約3,000万円)という資産状況でした。

Aさんは父の年金の額は大まかに聞いていたものの、資産全体でいくらあるのかといった話をきちんとしたことはありませんでした。親子とはいえ、気を使ってなかなか聞けなかったのです。しかし、今回の施設探しをきっかけに真正面から話をすることができました。

蓋を開けてみると、資産をしっかり確保してくれていたことに一安心。「散財することなくお金を貯めておいてくれて、本当にありがとう」と心の負担も軽くなり、施設探しの手伝いを前向きに行う気持ちになりました。

また、Aさんの父はまだ元気で、介護を必要とする状態ではありません。とはいえ、過去に脳梗塞で倒れたことがあり、年齢を重ねるごとに体力も落ちてきています。

そこでAさんは、[図表1]の施設のうち、日常生活の補助がある「介護付き有料老人ホーム」を中心に探すことにしました。ここではスタッフが常駐しているので簡単な頼み事や相談ができ、3度の食事の提供や安否確認をしてくれます。

Aさんの父は、自宅を売却する必要があり、加えてある程度時間をかけて施設を検討したいため、2年後の82歳を目処に入居して、95歳までの13年間を施設で過ごすと仮定しました。また、株式は子どもに相続したいとの意向でした。

よって、預貯金2,500万円+自宅を売却したお金3,000万円+年金・配当の20万円×12カ月×13年間=8,600万円。ここからもしもの時の入院費用やお葬式の費用として600万円を差し引き、施設探しの予算は上限8,000万円とすることにしました。

経営が安定している施設の探し方

親の資産・収入がわかったところで、Aさんは「介護付き有料老人ホーム」をいくつかピックアップし、父と見学に行くことにしました。ここで役立ったのが、各自治体が公表している介護施設の情報です。

たとえば、東京都では、福祉保健局のウェブサイト(※)で15のチェック項目を記した適合表を施設ごとに公表しており、都の指針に合わない項目には「不適合」のチェックが入っています。介護施設によっては、介護士不足から入居可能人数が減り、経営難に陥るケースもあります。

(※)東京都福祉保健局のウェブサイト

https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shisetsu/gaiyo/osagashi.html

上のウェブサイトでは、財務状況や入居一時金の返還ルールのほか、「前年度1年間の職員の退職者数」や「職員の勤務経験年数」も記載されています。Aさんはこれらの条件を参照しながら、経営が安定している施設をピックアップしていきました。

施設選びでチェックしたい3つのポイント

①「重要事項説明書」で経営状態、自治体への届出、一時金のルールなどを確認

無届けで運営した後、経営破綻したホームもあります。介護士不足から入居可能人数が減り、経営難に陥るケースもありました。「重要事項説明書」には、財務状況や入居一時金の返還ルールが記載されていますので、しっかり確認しておきましょう。

②スタッフの対応・施設内の雰囲気

施設を見学する際、疑問点や不安に思うことは必ず確認しましょう。その時の対応や職員の話し方、入居者の様子などを見ると、雰囲気がつかめると思います。居室などの生活空間が快適かどうかも大切ですが、食事の内容、行事、サークル活動、レクリエーションなどを親自身が気にいるかどうかもポイントです。

③入居・退去の条件

入居すると最期までいられると考えがちですが、実は退去することも考えられます。経営母体が倒産したとき、入居者の暴力行為などが常態化したとき、入居者が病気やケガなどで入院したとき、などが挙げられます。施設によっては、居室を開けた時期が3カ月以上続いたら退去するという「3カ月ルール」を設けている場合があります。

​後回しにせず、早めに親と話し合っておくことが大切

現在もAさんは週末を利用して父と施設の見学をしています。施設の見学には1カ所あたり約90分かかり、加えて重要事項の説明をしっかり聞いておく必要があります。それなりに体力も時間も必要なことから「父が元気なうちに探し始めて良かった」とAさんは感じています。

また、見学して良かった時間帯はランチタイムでした。食事の内容、介助の様子だけでなく、職員と入居者の会話の様子など、パンフレットには載っていない多くの情報を得ることができました。

居室などの生活空間が快適かどうかも大切ですが、食事の内容、行事、サークル活動、レクリエーションなどを親自身が気にいるかどうかもポイントです。

Aさんの場合は、親の資産や希望する施設が共有されており、スムーズに施設探しが行えているケースの1つですが、それでもある程度の時間や手間はかかります。話し合いのない状態から施設を探す際は、さらに時間がかかってしまうこともあるでしょう。

また、万が一、親が病気になったり、あるいは認知症が進んだりすると、どの銀行にお金を預けてあるのか、保険には加入しているのか……など、分からなくなる可能性もあります。

Aさんの場合も、結果的にかなり恵まれた収入・資産状況だったことは幸運でした。だからこそ介護付き有料老人ホームを探すという選択もできたのです。しかし、親の年金がそれほど多くなかった、資産も少なかったとなれば、こうはいかなかったかもしれません。本来であれば、もっと早くから話し合いをしておく必要があったといえます。

元気な親に、介護や資産のことを尋ねるのは、なかなかハードルが高いことと思います。とはいえ、話し合っておいた方が良いのもまた事実。本稿のような記事をきっかけにして、話を始めてみてはいかがでしょうか。

執筆/瀧 健 ファイナンシャル・ライター

監修/井戸 美枝 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)

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